第92話 アナライズ
「あれ?ここって…。車の中?」
「どうしたの?」
「あっ、母さん…。只今?」
「えっ?あなたレミ?」
「うん。そう。只今、戻りました。」
「ちょうど良かった?いま、凜はあっちに戻るために魔力切れにならないといけないって言って海に向かっていた所なの。」
「どうして海なの?あっ、広い範囲で砂を収納するためでしょう。」
「そう。そして、その後、シリコンゴムって言うのを錬金するって言っていたわ。自転車のタイヤにしたいんだって。」
「それをしたら、魔力切れになるかもしれないんだよね。それなら、止めた方がいいかな。」
「そうね。それなら、せっかく車で出たかけているからどこかに行きましょうか。」
「よし。じゃあ、どこにしようか。」
「蘭ちゃんは、温泉が良い。」
「流石に今から温泉は無理だな…。近くでみんなで行って楽しい所は…。良し、遊園地に行ってみようか。レミは行ったことないだろう。蘭は、幼稚園の遠足で行ったかな。」
「でも、寒いんじゃない?もう11月だよ。天気もそんなに良くないし。」
「うーん。それじゃあ、どこがいい?」
「寒くても楽しくて…、皆で行けるところ…。博物館にしよう。」
「博物館って何?蘭も行けるの?」
「行けるぞ。昔の物や今の物色々な道具がある場所だ。」
「父さん、そこには武器なんかもある?」
「さあ、どうかな…。それにあっても直接触ることはできないからな…、アナライズできないんじゃないか?」
「離れた場所からでも収納できるからさ。一瞬だけ収納させてもらってアナライズできないかな。」
「一瞬でもその場からなくなったら大事になると思うんだが…。見た目だけでも同じものを作れば、それとすり替えている間にアナライズできるかもしれないな。」
それから、僕たちは博物館に向かった。
歴史的な物がたくさんあるらしいけど、よく分からなかった。武器として展示してあったのは、槍と日本刀だった。日本刀の形は知っている刀剣とは違った。
まずアイテムボックスの入り口を広げる要領で薄く展示されている日本刀を包んでみる。その後は、その形を探る。問題は、アイテムボックスの中に収納しないでモールディングができるかどうかだ。
ふんわりとした魔力の光がモールディングを掛けた日本刀の周りを包んだ。
「父さん、モールディングはできたけど、材料がないから模造品も作ることはできないみたい。」
「でも、収納しなくても形のデータだけは手に入れることができるんだな。それはそれで凄いぞ。この世界の道具は、色々な素材でできた部品を組み合わせて作られている。その部品の形を正確に分析できるのなら、様々なものを作ることができるようになる。」
「そうなのかな。でも、そうなったらいいね。」
僕はその後も槍や土器、農機具なんかの展示品もモールディングしてみた。沢山の展示品をモールディングした。この次来た時には、見た目だけは同じものを作って展示している間にアナライズできるように。農機具は、鉄と木しか使用していない物が多いようで、殆どの部品がモールディングできた。このくらいだったら収納しなくてもアナライズも可能かもしれない。
その後、アナライズも試してみた。農機具だけじゃなくて、日本刀もできた。部品の少なさがアナライズできた要因かもしれないが、収納しなくてもアナライズできたのは進歩だ。もしかしたら、収納しないまま、農具なんかを片っ端からモールディングしたせいかもしれない。熟練度が上がったのかな…。
「レミ、どうしたの。ボーっとして。」
「収納しなくても槍や日本刀がアナライズできたんだ。もしかしたら部品が少ない物は、収納しなくてもアナライズできるのかもしれないよ。」
「そうなの。いくつ位部品がある物までアナライズできるのかしらね。」
「試してみないと分からないから、今からやってみようかな。」
「ん?どうしたんだ?」
僕と母さんが話していると蘭と展示品を見ていた父さんがやってきて聞いた来た。
「あのね。部品が少ない道具だけかもしれないけど、アイテムボックスの中に入れなくてもアナライズできるようになったんだ。」
「そうなのか!それなら、マウンテンバイクを販売している量販店に行ってみようか?」
「えっ?まうんてんばいく…。それって何?」
「レミは、自転車は見たことあるだろう。車の中からだけど。」
「自転車…。」
僕は、凜の記憶の中から自転車を探ってみた。車の中から自転車に乗っている人は見たことがある。確かにあったと思う。その時は意識してなかったけど。
「凜は、自転車に乗れるの?」
「そう言われれば、凜は自転車の練習していないかも…。」
「それなら、量販店に行って自転車を買ってあげようか。折角元気になったんだから自転車も乗ってみたいだろう?」
「でも、僕一人で自転車に乗っても、どこに行ったら良いのか分からないよ。」
「どこに行っても良いんだよ。行きたい場所を見つけて自分で行けるって言うのが良いんだ。それに、色々なことを勉強したら行きたい場所が出てくると思うよ。」
「そこに行くのに自転車があったら便利なの?」
「自転車で行ける場所ばかりっていう訳じゃないけど、徒歩よりもレミが一人で行くことができる場所が広がると思うよ。」
「でもね。自転車は練習しないと乗れるようにならないし、交通ルールも覚えないといけないからね。」
「交通ルールって何なの。」
「それを勉強して覚えないと自転車に乗れないってことなの。こっちの世界で、道を安全に移動するためのルールよ。」
「まあ、自転車の練習の時にも交通ルールは必要だからな。練習しながら覚えないとな。父さんも交通ルールを守って自動車を運転しているんだぞ。」
「レミ兄ちゃんと一緒に蘭も練習する。蘭も自転車欲しい。」
「蘭には…。少し早いかな。」
「蘭はお母さんと一緒に自転車に乗れるからね。お兄ちゃんと自転車でお出かけする時は、お母さんが連れて行ってあげる。だから、お兄ちゃんと一緒に交通ルールの勉強しようね。」
「こうちゅうルール?わかった。一緒に勉強する。」
「良し、今から自転車を買いに行ってみよう。行くだろう。」
「うん。まうんてんばいくだね。」
僕たちは、いつものショッピングモールに車で行って自転車を探してみた。一杯カッコいい自転車があったけど、オフロード用のマウンテンパイクって言うのが凜のリクエストだったらしい。
「オレンジ色の26インチマウンテンバイクにしようかな。ちょっとカッコいいかも。」
ショッピングモールで購入したらそのまま持ち帰ることはできんるんだけど、車の中に入れることができなかった。
「車に入らないから、車の陰でアイテムボックスの中に入れてくれるか?」
「うん。わかった。ついでにアナライズしてみるね。部品ごとにアナライズ出来たら良いんだけどどうかな…。」
「そうだな。いざとなったらバラバラにして部品ごとにアナライズしてみても良いかもしれないな。」
「そうだね。色々試してみるね。家にある素材で蘭ちゃん用のマウンテンバイクを作ることができたら良いんだけどね。」
「えっ…?何?おにいたんが蘭ちゃんの自転車作ってくれるの。」
「作ってあげたいなって思ったんだけど、練習しないと難しいみたい。でも、作ってあげられるように練習するからね。」
「わーい。お願いしましゅ。」
「お家に帰って、公園に言ってみようか。日が暮れるまでまだ時間があるからね。」
公園に行って自転車の練習をした。蘭もついてきたけど、応援しているだけだった。自転車は、基本的に車道を走るけど許可された場所は歩道を走ることができる。人を怪我させないようにすることが一番大切。歩行者優先と思いやりの心が大切。でも、思いやりってルール?
一日では自転車に乗れるようにはならなかったけど…。もう少しだって言ってもらえた。時間はあるから、練習さえすれば何とかなる。
夕方、自転車の練習を止めて家に帰る時、眠気が襲ってきた。いつもよりも早く起きたみたいになっているからとにかく一日が長かった。ロジャーとの出会いとマティアスとのお別れ、パーティーメンバーとの出会い。こっちの世界に戻って来てから博物館やショッピングモールにも行って…。
色々ありすぎて少し疲れた…。
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