第81話 レミへの手紙

 1回目のダンジョンでの訓練は無事に終えることができた。手に入れた素材は殆どギルドに買い取ってもらった。ホーンラビットの皮は、1枚銅貨2枚だったけど、ドロップした皮は全部で50枚だから、それだけで金貨1枚分の稼ぎだ。


 フォレストウルフの皮はダンジョン産ということで銀貨1枚。これも10枚手に入れていたから金貨1枚だった。ボアの魔石と薬草は僕が全部引き取ったから、一人銀貨1枚ずつになっている。


 ギルドで引き取ってもらった素材の代金は、シモンさんたちと金貨1枚ずつに分けた。ダンジョンで採集した魔石と伐採した木で作った風刃のスクロール200枚もシモンさんたちと折半した。100枚ずつ持っていたら、戦い方の幅が広がる。スクロールを錬金してもシロッコの魔石は少ししか小さくなっていない。でも、小さくはなっているからたくさん作ったらいずれは無くなるのだろう。


 粘着網と酸攻撃のスクロールも200枚ずつ作って分けている。錬金術式を冒険者ギルドに見せたけど、買い取ってもらえなかった。本物かどうかを確かめられないからだそうだ。


 ギルドで素材を処分した後は、パーティーハウスに戻って反省会をした。シモンさんたちも一緒だ。フロルとサラが今日ドロップしたホーンラビットの肉とボアの肉を孤児院に持って行ったけど、肉は、まだたくさん残っている。


 シモンさんたちが手に入れた肉もあるからギルドからの帰りに野菜や肉以外の料理の材料を買ってパーティーハウスに持ち込んだ。反省会が終わった頃に、それを使った豪華な夕食が始まった。ダンジョンでの戦い方や魔術の使い方、スクロールの使い方についても確認したから、次からはもう少し余裕をもって戦えると思う。


「今日のお主たちの戦い方や魔物の現れ方は、ギルマスに報告している。領主の判断によるところが大きいだろうが、冒険者に開放してもらって素材が流通するようになるとこの町も豊かになると思うのだがな。」


「ダンジョンが、冒険者に解放されないこともあるの?」


「町や国によっては、ダンジョンを領兵や軍が管理していることもある。冒険者に開放している所の方が多いと思うがな。」


 今日一日は、ギルマスの計らいでダンジョンでの訓練ができた。ダンジョン前の下水道の清掃検査は済んでいる。後は、ダンジョンを領主様に確認してもらうだけらしい。


 6日後には、王都に薪型燃料を届ける商隊の護衛に当たる。僕とフロルのアイテムボックスとストレージにもできるだけ多くの燃料を積み込んでいく予定だ。


 ロジャーはソロで護衛任務に就く、勿論かなりの量の燃料も運ぶそうだ。輸送と護衛で金貨数十枚の依頼になると言っていた。僕たちは、同様に護衛と輸送だけど多くて金貨10枚程の依頼だ。シモンさんたちの依頼料はもっと安い。マジックバッグでの輸送も行うけど、金貨3枚の依頼だと言っていた。


 護衛中の食糧費は別途支給されるけど、僕たちは自分たちで準備する予定だ。僕のアイテムボックスなら食材が悪くなることがないから色々持って行くことができる。領主様のダンジョンの確認が終わったら、王都への護衛任務のための準備を本格的に始めないといけない。


 まず初めに行うことは、野営訓練だ。明日の午後から、町の近くの草原で野営訓練を行う。それがうまくいったら、森の中での訓練を行うそうだ。森の中での野営は、この季節かなりきついと思う。冬が近づいてきたが、森の魔物は頻繁に出てくる。行く前から心配してもしょうがないとは思うけど、野営用の魔道具が欲しいからギルマスかロジャーに相談してみよう。


 明日は、領主様のダンジョン確認にはロジャーだけが出席する。僕たちは、燃料作りをして野営用の魔道具の買い入れに道具屋を回るつもりだ。それと、ダンジョンに吸収させるための小さなマジックポーチも探したい。明日が楽しみだ。





 寝る前に、紙を出して、手紙を書くことにした。それをアイテムボックスに収納してページコピーを行えば、向こうのアイテムボックスの情報にも反映するはずだ。


『レミ様

 僕が覚えていることを知らせておきます。

 僕がこちらの世界で目覚めた時、目の前にいたのがロジャーでした。ロジャーは、森でたくさんのフォレストウルフと人が争っている気配を感じて駆け付けてくれたのだそうです。そのロジャーにフォレストウルフから助けてもらったと聞いています。


 でも、フォレストウルフから僕を守ってくれていたのは、一人の老騎士だったそうです。ロジャーは、その老騎士を今でもストレージの中で眠ってもらっていると言っていました。


 その騎士の墓を作ろうかと聞かれましたが、僕にはその騎士の記憶がありませんでした。その騎士の名前もはっきりとは憶えていません。もしも、レミが、騎士の名前とその騎士にふさわしいお墓の場所が分かれば、そこにお墓を作って弔おうと思います。


 今、僕は錬金術師の冒険者としてこちらの世界で生きています。レミも僕と同じ力があるはずだからこちらの世界では、冒険者の錬金術師として生活できると思います。


 こちらの世界では、ロジャーの他にも仲間ができました。冒険者パーティーのメンバーの子たちは僕以外に5人。色々なことで一緒に活動してくれているお兄さんたちが5名です。


 つい最近、同じパーティーの仲間とロジャーと一緒にパーティーハウスを借りました。かなり大きな家だから、こっちの世界に戻って来たらびっくりするかもしれません。


 まずは、現状だけ知らせます。僕は、そちらでは病気ばかりであまり楽しいことや冒険はできなかったけど、僕の代りとは少し違うかなとは思いますが、レミには、色々な楽しい思い出を作ってもらえると嬉しいです。その内、こちらの世界でも楽しく生活ができるようになると良ですね。


 どうしたら、レミがこっちの世界で楽しく生活できるようになるのかを探してみます。レミもこっちのことで何か思い出したら教えて下さい。


 父さんと母さんにも後で手紙を書きます。この文章を読むことができたら返事して下さい。紙に文章を書いた後、ページコピーの後、錬金すればこちらの世界で読むことができる手紙になります。


                        佐伯 凛 』

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