第78話 3階層-森の階層
一階層降りただけなのに雰囲気が全く変わった。森だ。深い森。階層入り口を降りていったら目の前に大きな木が立っていた。暗い森が行く手を阻んでいる。道はあるのだけど暗くて細い。どこに魔物が潜んでいるのか分からない程暗い森だ。
「ロジャー、この階層ってずっとこんな細い道だけなの?」
「広くなってい場所はあった。沼地などもあるようだが、あまり近づいていない。魔物の種類が変わりそうだからな。」
「それなら、この階層のことはあまり分かっていないの?」
「次の階層入り口を探さないといけないからな。そこそこは探索しているぞ。しかし、この階層の特徴が分かって、次階層入り口が確認出来たら良かったからな。詳しい調査が済んでいるわけではない。」
「そうなんだ。ドロップ品なんかも分かっていないの?」
「そうだな。今からだ。さて、シモン、テラ。パーティーに分かれて探索をしてみようか。儂は、ここで待機しておるからな。まずい敵に遭遇したらここに来るのだ。一緒に対応してやるからな。」
「俺たちのパーティーは索敵能力が今一つなんでさあ。だから、フォーメーションは1階層で確認した通りで行きますぜ。みんな、慎重にそして、勇敢にですぜ。」
「おう。凜さんに貰ったスクロールと回復ポーションがあるからな。討伐と調査を頑張るぞ。」
気合いを入れてシモンさんたちは次階層入り口がある方の反対側に向かった。前回も調査に参加しているからある程度この階層の様子は分かっているようだ。攻撃スクロールを見つけたような隠し部屋や宝が見つかると嬉しい。
「私たちは、シモンさんたちの反対方向を担当する。前衛はリニとリンジー。中衛にフロル。後衛が凜とサラ。殿は私だ。出発する。」
「了解。凛、魔物のサーチと指示を頼む。お前のサーチは信じられる。」
ぶっきらぼうなリニの言葉に応えて、探索を始める。
「任せて。サーチ。…、もうしばらくは魔物は居ない。道なりに進んで良い。」
「分かった。出発だ。」
20mも進まないうちに魔物にサーチが反応した。
「左前方の森の方から魔物が近づいてきいる。」
「リンジー、粘着スクロールを構えておくのよ。」
テラがそれぞれに指示を出して行く。
「リニ、盾をしっかり構えておいて。」
「見えたぞ。木の上、フォレストゴブリンだぞ。」
フロルの声に反応してリンジーが粘着液の網を撃ち出した。木の枝に引っかかって中々命中しないけど、ゴブリンの進路もふさいでいる。木から木へと飛び移っているゴブリンは急には方向を変えることができず、木の枝に引っかかっている粘着網にからめとられて動きが取れなくなってしまった。
「リンジー、上手いですわ。」
「私が止めを刺す。アイスジャベリン!」
テラの魔術が命中してゴブリンはダンジョンに吸収されて魔石がドロップした。
「テラ、同じ魔力が5つ近づいてきている。リンジー準備頼む。」
「凛。あなたはバックアップよ。リンジーが止めそこなった魔物をからめとって。」
「了解です。」
直ぐにフォレストゴブリンの群れが現れた。ほぼ同じ方向からやってく。
「リンジー、多めに魔力を注いで連発してみて。」
「分かった。多めにだな。」
僕は、リンジーのバックアップの為にスクロールを出した。
「見えた!」
「引き付けて。むやみに撃つんじゃないわよ。」
「任せとけ。癖も掴んだ。」
一体目、命中、落ちてくる途中にテラのアイスジャベリンで魔石に変わった。2体目と3体目は一つの粘液網で固められて木の上から落ちてくるところをファイヤーボールで仕留められた。
森の中なのに火事になったらどうするつもりなんだ。確かに、枯れ木一本なく青々とした森の中だからめったなことじゃあ火が燃え広がることはないと思うけど、危なすぎる。
4体目にも粘液網は命中。5体目は僕が絡めた。動けなくなって下に落ちたゴブリンには、リニが駆け寄って止めを刺した。
「サラ、ファイヤーボールは止めなさい。火事になったらどうするつもり。」
「ごめんなさいですわ。ファイヤーボールは間違いでしたわ。でも、ウィンドガッターの威力に自信がなかったのですわ。」
「近くの魔物は居なくなったみたいだ。今のうちにドロップ品を回収して。」
ドロップ品と言ってもEランクの魔物の魔石はくず魔石とあまり大きさは変わらない。それに、魔石以外のドロップ品もなかった。
「奥に向かう。フォーメーションは継続するわ。」
「はい。」
「リニ、凛、頼んだわよ。」
「うん。」
「はい。」
道なりに進んでいく途中に、数体のゴブリンに会敵したけど、樹上を移動していないゴブリンなんてあっと言う間に討伐できた。フロルの投擲で一撃だ。
「リニ、この先、左側にさっきよりも大きめの魔力をもった魔物がいるみたいだ。こちらに気づいてるかどうかは分からない。」
「わかった。何なのかは分からないよな。」
「ゴブリンじゃないのは確実だよ。」
風向きを確認すると、こちらが風上になっている。臭いに敏感な魔物なら僕たちが近づいていることに気が付いているはずだ。
「サーチにかかっている魔物が移動し始めた。僕たちに気づいていると思う。」
「この距離で気付くということはフォレストウルフの可能性が高いと思う。このパーティーで初めて戦う魔物だから慎重に行くように。曲がり角の手前で待ち伏せるわよ。」
僕たちは、足を速めて魔物を待ち構えるために開けた場所に移動した。
「リンジー、土壁を作って。折角来てくれるのだから、防御を万全にして待たせてもらいましょう。」
「了解。任せといてくれ。」
リンジーが作った土壁の後ろにフォーメーションを組む。後方にも壁を作ってもらった。あっと言う間に作ることができるからだけど、後ろに回られたら危ない。
「リンジーは、粘液網で攻撃ね。サラは、酸スクロールを使ってみて。でも、粘液網がかかっている魔物には効果がないかもしれないわ。」
「分りましたわ。スクロールの効果を確認しますわ。」
「僕も粘液網のスクロールかな?」
「凜は、酸でやってみて。でも、魔力の注ぎ方に気を付けてよ。この辺りが酸で焼けただれたりしないようにね。」
「わかった。気を付けるよ。」
「リンジーとリニは、フォレストウルフが接近してきたらロックバレットで応戦して。それまでは、二人とも粘液網よ。私とフロルは鉄球投擲と弓で応戦するわ。」
『了解。』
全員担当を堪忍してフォレストウルフが近づいてくるのを待った。
「来たぞ。」
リニが狼の接近を確認した。粘着網で接近息ぞを落とす。
「何であんなに数が多いんだ。」
こちらに向かってくるフォレストウルフの数は10体を越えている。
「一番先頭の狼を40m位まで引き付けて粘着網を撃ち始めて。」
ギリギリまで魔物を引き付けてテラの合図を待っている。
「フロル、私たちは攻撃を始めるわよ。」
フロルの投擲とテラの弓の攻撃で数体の狼が魔石に変わった。でも、後ろから押し出されるように10体以上の狼の群れが押し寄せてくる。
「粘着網。できるだけたくさん魔力を込めて。」
リンジーとリニの粘着網がたくさんの狼のをまとめて固めた。粘着網で固められた狼たちを踏みつけるように次の群れがこちらに向かってくる。
ねばねばした丈夫な粘液に足を取られることなく次々に狼が押し寄せてくる。
「サラ、凛、撃ちなさい。」
『ブュビーッザザザーッ』
後ろに固められている狼の群れの粘着網にも酸液が掛かって網を溶かした。固められている狼にはダメージが入らないようだ。それに臭い。
粘着網から抜け出してこちらに向かってくる狼に酸を吹きかける。
「ギャウン。」・「ギャウン。」
「ギャウン。」
「アイスジャベリン!」
「ロックバレット!」「ロックバレット!」
フロルは、連続してクナイを投擲している。
「ドッドフッドコッ。」
フォレストウルフは素早くクナイを避けることもあるが連射されたクナイは確実に狼の数を削って行った。
「もう少しよ。頑張って。」
「何か、初めよりもかなり増えている気がするけど、前線を崩さないように。攻撃のペースを落とさないように!」
15分位の戦闘だったのかもしれなけど、とっても長く感じた。
「みんな怪我はない。」
「大丈夫。」
「じゃあ、ドロップ品の回収するわよ。」
今回の討伐では、魔石と皮が手に入った。魔石が25個フォレストウルフの毛皮は10枚だ。
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