第77話 2階層探索終了

 今回のダンジョン訓練で手に入れた薬草が50束の5チーム分で、250束。魔石が5個の5チーム分の25個だ。


 これだけの素材でポーションを作れば、上級万能回復ポーション200本は軽く作ることができる。ポーション瓶の材料に必要なクズ魔石。これはホーンラビットやスライムの魔石で事足りる。既に持っている粘土を使ってポーション瓶を作ればいい。


「ロジャー。今回の素材で回復ポーションを作ればかなりの資金になるよ。それって、皆に還元して良いのかな?」


「その資金は、大きすぎるな。今回の素材はお主がすべて買い取ってやれ。その位の現金は持っているであろう。売り上げの1万分の1の値段で買い取ってやれば、皆喜ぶであろうよ。千分の1なら多すぎるだろうがな。」


「全部ポーションにして調剤ギルドに販売したら金貨2000枚くらいになるかな。1万分の1なら銀貨2枚。千分の1で買い取っても金貨2枚か…。」


「凛、薬草採集で金貨の報酬は多すぎるぞ。全部買い取ったとしても、銀貨5枚でも多すぎる位だからな。」


 う…、見透かされている。


「そ、そうかな。薬草一束金貨1枚。ボアの魔石も金貨1枚とか言ったらダメだよね。」


「ダメだな。特別な素材ではないからな。相場での買い取りが基本だ。パーティー資金として共有するなら、他の物にした方が良い。そうだな。報酬として分けやすいように全部を銀貨10枚で買い取ったらどうだ。それならかなり高めだが相場から大きく外れてはいないぞ。」


「分かった。」


 そう言うとみんなには声をかけた。


「みんな、今日の素材は全部僕が書いとるよ。報酬は、銀貨1枚ずつで良いかな?安すぎる?」


「そんなに高く買い取ってくれるんですか。助かりますぜ。今日は、ダンジョンでの訓練のつもりだったから、報酬なんて貰えるとは思ってませんでしたぜ。」


 シモンさんたちは喜んでくれている。


「私たちは報酬などいらないぞ。ダンジョンの訓練なのだ。訓練で採集した物に報酬など受け取れるはずはない。」


「うーん。でも、今回の素材を使ってポーションを作ったらかなりのお金が入ってくるんだよね。それなのにタダで受け取る訳にはいかないよ。」


「うむ。テラたちも報酬として受け取っておくが良い。採集訓練と言ってもお主たちが手に入れた素材だ。それから、凛そこまで言うのなら、作ったポーションを何本か渡しておけ。保険として持っておくも良し、道具屋に販売するも良しだ。」


「現物支給だね。それなら、テラたちも受け取ってくれるよね。」


「うっ…、凛が作ったポーションの効果は知っている。保険として持たせてもらえれば心強い。」


「それなら、素材を回収します。そして、まず、素材代金を配るよ。はい。銀貨1枚。」


「えっ?一人銀貨1枚…。多すぎますぜっ。」


「シモン、受け取っておいてくれ。そして、これからも協力を頼む。」


 ロジャーに言われ、シモンさんたちは、報酬を受け取ってくれた。テラたちも何とか受け取ってくれた。これで心置きなくポーションを作ることができる。


「では、ダンジョンでの訓練の続きをしようかのう。皆、難なく採集訓練はこなしたようだが、下の階層に移るか?」


「しかし、俺たちはサーペント退治もしてやせんし、下の階層になると少々てこずる魔物が多いんですが…。」


「そのことだが、今日、凜が攻撃用のスクロールを二つ作ることができるようになったのだ。お前たちもそのスクロールを使用してみないか?攻撃力は上がると思うぞ。」


「あの…、どのようなスクロール何でしょうか?」


「俺たちは使ってみたぜ。酸攻撃と粘液攻撃のスクロールだ。酸攻撃は少しえぐい効果だけど、粘液攻撃は相手の動きを止めるのに役に立つぜ。」


「リンジーたちは使ってみたのか。それなら必要な魔力はどうだった?」


「消費魔力は少ないよ。ドライスクロールや洗浄のスクロールに必要な魔力よりも少なくていいくらいだよ。」


「分かりやした。でも、一度でいいんで、この階層で使わせてもらえやせんか。一度確認すれば、安心して使用できると思うんで。」


「凛、シモンに粘着スクロールと酸スクロールをそうだな。5本ずつ渡してくれないか。」


「ありがとうございます。この階層で攻撃スクロールを使えるようになったら、安心して下に行くことができます。」


 スクロールを渡すとフースさんがお礼を言ってきた。偶然このダンジョンで拾ったスクロールだけど、安全にダンジョン攻略ができるようなれば嬉しい。このスクロールを作るために必要な素材は少ない。木材とクズ魔石、それに水だけだ。


「凛。魔物のサーチをやってみてくれ。シモン、大体の方向が分かれば自分たちで見つけ出すことができるな。」


「はい。大丈夫です。凛さん、宜しくお願いします。」


「サーチ。あちらにボアがいるようです。粘着スクロールで動きを止めて魔術か投擲武器で止めを刺してみて下さい。」


「はい。やってみやす。リンジーは、魔力をあんまり沢山込めたらいけないって言ってやしたけど、少なすぎたらボアの動きを止められないですからね。少し多めになるのは仕方ないと思って下さいよ。」


「それから、40m位の射程距離は十分ありますから、その距離になったら撃ってみて下さい。」


「了解です。」


 シモンさんがスクロールを構えてボアに近づいて行った。後ろには、同じくスクロールを構えたフースさんがバックアップに入っている。


『バシュッ。』


 シモンさんが撃ち出した粘液の網は5m四方に広がってボアの動きを止めた。


「ルカス、とどめは、エアカッターだ。できやすか?」


「うん。」


 ギリギリまで近づいたルカスがボアに向かってエアカッターを放った。鋭い音を発してエアカッターがボアの体を引き裂く。ボアは、粘液の網と一緒にダンジョンに吸収されて魔石が残った。


「凄いでやすね。このスクロールがあれば、下の階層に行っても、怪我をしないで済むかもしれないでやす。」


「そうであろう。では、皆で下の階層に行くぞ。気を引き締めるのだぞ。」

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