第76話 素材採集

「まずは、薬草を1本で良い。一人で見つけるのだ。一緒に探すのはそれからだ。お主が、1本目の薬草を見つけた時から始めるぞ。一人で頑張ってみよ。」


「わかった。薬草は、ロジャーが何本も採集してきてくれたから知ってるよ。この階層にあるんだよね。」


「うむ。この辺りにも生えておる。まずは、探し出すのだぞ。」


「分かった。薬草を見つければいいんだよね。」


「うむ。そうだ。ただ1本目を見つければ良いのだ。」


 ロジャーは、僕との打ち合わせを終えると同時に、皆にげきを飛ばした。


「良いか。それぞれのチームで薬草採集の競争だぞ。大切なのは、警護担当だ。魔物を発見したら、できるだけ速やかにしかも、魔物に気づかれぬように皆に知らせるのだぞ。競争と言っても他のチームも味方であることを忘れるな。そうだな。シモンたちがこの階層に降りてくるまでを制限時間とする。」


『はい。』


「では、始める。皆、散れ。」


 ロジャーの合図で僕たちは薬草探しに散らばった。ロジャーが警護をしてくれるなら安心して薬草を探すことができる。


「ロジャー、見つけた。これでしょう。」


「いているが違う。葉の付き方を確認するのだ。薬草は、らせん状に葉が付いているであろう。お主が見つけたのは、葉が交互についている。その違いが植物の違いなのだ。形や色だけを見るのではない。」


「葉の付き方だね。」


 僕はまた探し始めた。葉の付き方。葉の形。葉の色。違いを見つけるためのデータは沢山ある。全てが一致するものを探し出せばいい。


「凛。全て一致する植物を探していたらいつまでたっても薬草は見つからないぞ。違いと共通点の中から違って良いことと違ってはいけないことを整理するのだ。」


「どう言うこと?」


「そうだな。葉の形が一致する植物を探せ。その中から葉の付き方が違うのもを外してみよ。」


「やってみる。」


 僕は、アイテムぽっくの口を草原に広げて、葉の形に注目してサーチした。沢山の植物が反応している。


「ロジャー、見つけた物を片っ端たらロジャーに見せたら良いの。」


「自分で鑑定してみろ。お主は、薬草を知っているであろう。名前を憶えていればよい。その名前で検索すれば分かる。お主のアイテムボックスの中に収納すれば検索で出てくるのが薬草だ。」


「やってみる。」


 僕は、葉の形のサーチで反応した植物を片っ端から収納した。本当によく似た植物がたくさんあると思ったんだけど、ようやくロジャーに確認してらってその植物と一致するものを見つけた。次は、その薬草と一致する植物をサーチした。


「ロジャー、一致する植物を見つけたよ。」


「では、その植物の所に向かうのだ。儂が護衛する。心配するな。」


「分かった。手始めにあっちにいくよ。」


「おう。任せよ。お主も分かっていると思うが、薬草の場所をサーチしている間は、魔物のサーチはできないからな。切り替えながら魔物の位置とサーチする薬草の位置を確認するのだぞ。薬草なら一度サーチすれば場所は移動しないからな。」


「大丈夫。魔物のサーチと薬草のサーチを交互にすればいいんだよね。ロジャーに魔物のサーチは任せていても大丈夫だと思うけど、薬草なら動かないから僕がサーチを切り替えるよ。」


「そうしてくれ。では、薬草のサーチだ。一番近くに群生している場所を見つけるのだぞ。」


「分かった。サーチ・薬草。」


「見つけたか?」


「うん。あっちだよ。サーチを切り替えてあっちに向かうね。」


 僕が見つけた群生地に向かう。間に魔物は居ない。ロジャーが確認してくれているから安心して薬草の群生地に向かうことができた。


「魔物から薬草にサーチの対象を変えるから護衛をお願い。近くに魔物は居ないようだからね。」


「心得た。儂のも近くに魔物の気配を確認していないから安心して良いぞ。」


 最初の群生地でサーチで確認した薬草を採集し終えると次の場所をサーチで見つけた。


「次に行くよ。場所は確認したからね。あの辺だよ。」


「よし。行くぞ」


「うん。」


 その後も群生地を見つけては採集することを繰り返した。10回程採集地を変えた時、大きな魔物の気配が近づいていることが分かった。


「ロジャー。魔物が近づいてくるよ。」


「任せておけ。しかし、近づいてくる魔物は少々魔力がお大きいようだ。ボアではないな。」


「うん。ボアでも、ホーンラビットでもないよ。かなり大きな魔力を持った魔物だと思う。」


「シモンたちは、まだ降りてきていないが、採集競争は終わりにする。皆集まってくれ。」


 良く響くロジャーの声が2階層に響き渡った。みんなが採集を終えて集まってきた。


「さて、競争を終わりにした理由が分かるのはいるか。」


「近くに、大きな魔力を持った魔物が近づいている。」


「テラ、気付いたか?階層ボスとして現れたサーペントが現れたようだ。この階層には少々クラスが高すぎると思うのだがな。もしかしたらこの階層には多すぎる魔力が吸収させたのかもしれぬな。」


「多すぎる魔力?」


「まあ、よい。では、サーペント退治に行くとしよう。」


 ロジャーの後をついて行くと大きな魔力が渦巻く場所が目の前に現れた。


「間もなく実体化するであろうな。見ておけ。ダンジョンではこうして魔物が実体化するのだぞ。」


「魔力が先に現われるんだね。実態はその後に現れる。面白い?ね。魔力って物を作ることができる力なんだ。」


「この世界では、魔力は、物だけではないぞ。全てを作る力なのだ。そして、魔力によってできた命を魔物と言うのだ。」


 目の前でサーペントが実体化していった。


「まず、動きを止めてみろ。ビスコサムスクロールでやってみるのだ。」


「アイテムボックス・ビスコサムスクロール。」


 僕は、アイテムボックスを開いてスクロールを手に取り、魔力を流し込んだ。大量の粘着液が魔物を包み込んでいく。


 うまくいったようだ。実体化したサーペントは、動くことができなくってもがいている。


「実体化が終わる前に固めることができたみたいだぞ。」


「テラ、止めを頼む。アイスジャベリンと弓でとどめができるのではないか。」


 テラにアイスジャベリンでとどめを刺してもらった。サーペントは動くことができないまま魔石に変わっていった。


サーペントの討伐が終了したすぐ後。


「ロジャー様。降りてまいりました。」


 シモンさんたちが2階層に降りてきた。


「うむ。連携はうまくいくようになったか。」


「はい。どの組み合わせでも1階層なら安定して討伐することができます。」


「よし。2階層では、採集だ。ボアの魔石と薬草を…。魔石を5個。薬草は500本。50束採集してみるのだ。テラ、凛を含めて二人一組の採集チームを編成してみろ。」


「えっ。あっ。はい。私とリンジー。リニとフロル、サラと凛で良い?」


「「「「「了解。」」」だぞ。」ですわ。」




「サラ、宜しくね。」


「はいですわ。頑張りますわよ。」


「じゃあ、作戦会議だよ。僕が、サーチで群生地を見つける。その後は…。どうしたら良いんだろう。」


「準備は良いか?時間を測っておくからできるだけ早くな。お前たちも採集活動を再開だ。散れ!」


『はい。』

「へい。」


 全員が、薬草採集に散っていく。


 「サーチ。」


 薬草の群生地が何ヶ所がある。でも、薬草をサーチすると魔物の居場所は分からなくなる。


「サラ。群生地を見つけた。場所は、あちら。あの辺りだ。覚えた?」


「えっ?私が覚えるのですか。」


「そう。そして、僕は魔物のサーチに切り替える。」


「分かりましたわ。移動しますわよ。」


「サーチ。」


群生地の近くに魔物は居ない。群生地に着いたら、一番近くにいる魔物の方向をサラに伝えて、薬草にサーチを切り替える。


「サラ、警護宜しく。僕は今から採集に集中するからね。」


「分かりましたわ。凜は、頑張って採集するのですわ。」


魔物への警戒をサラに任せて、サーチにかかった薬草を片っ端から採集していく。あっと言う間に500本の薬草を採集し終えた。根を残しておくこと。これは、ロジャーに教わった薬草採集の基本だ。ちゃんと守って丁寧に採集した。ダンジョン内でも同じなのかどうかは知らない。


「サラ、薬草の採集は終ったよ。次は、ボアの魔石だよ。」


「ボアなら、さっき凜が言っていた一番近くにいる魔物のようですわ。ちらりと影が見えましたもの。」


「確かにそうだったと思う。ホーンラビットよりも大きな魔力を持った魔物だったからね。」


「うん。では、行きますわよ。」


 僕とサラは身をかがめてボアに近づいて行った。使うスクロールは粘着スクロールだ。いつでも撃ち出せるように準備をしておく。


「距離、よし。ボアはまだこちらに気が付いていない。」


 魔力をスクロールに流し込む。魔力の量に気を付けてボアの周辺3m四方。本当ならもう少し範囲を狭めても良いのだろうが、不安だ。だから、少し広げて撃ち出す。粘液の投網がボアをからめとった。


「サラ、止めのファィヤーボールだ。はずんじゃないぞ。」


「動けない魔物にこの距離から外すはずないですわ。任せて下さいですわ。」


 ボアの魔石は、直ぐに5個集めることができた。薬草と魔石、一番早く集め終ったと思ったけど、フロルとリニの方が少し早かった。ただ、フロルのやり方は少しズルいと思う。群生しているあたりを土ごと、収納したんだから。

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