第75話 スクロール使用訓練
2階層。今日はここでダンジョン攻略の訓練と素材集めをする。一足先にやってきたけど、シモンさんたちもその内やってくるはずだ。一緒に行こうかって誘ったんだけど、自分たちだけのパーティー連携の練習もしたいと言うことだったから、2階層で落ち合うことになった。
「シモンたちは1階層で連携練習をしてから降りてくると言っていたからもうしばらくかかるだろう。儂たちは、ここで戦闘訓練を行うぞ。まず、アシッドスクロールとビスコサムスクロールの性能実験を行う必要があるな。」
「凛。そうだな。ホーンラビットが近くに居らぬか探ってみてくれ。」
「はい。」
僕は、さっきよりも魔力の膜を薄くして周りに広げてみた。これだけ薄くすると膜と言うよりもとっても細い糸の網に近いイメージだ。
小さめの魔力反応と少し大きめの魔力反応さらに大きい魔力反応…。この辺りには3種類の魔力反応が感知できた。一番近くにいるのは中くらいの魔力反応の魔物。反対側に小さい魔力反応の魔物がいる。僕は小さい魔力反応を感知した方向を指さした。
「あっちに小さい魔力反応が感じられるよ。反対側には中くらいの魔力反応。他にもかなりたくさんの魔力反応が完治できたけど、全部言った方がいい?」
「いや、では、テラとフロルで粘着網スクロールの性能実験をしてもらおうかのフロル。気配は感じることができるか?」
「方向だけじゃなくて場所までわかっているから分かるぞ。ばっちり確認していますだぞ。」
「では、ビスコサムスクロールで動きを止めてみよ。その後、テラの弓で
「「了解だ。」ぞ。」
身をかがめてフロルとテラが魔物に近づいて行った。40m程の距離からフロルが粘着網を放った。かなり大量の粘着網がホーンラビットに向かって飛んで行く。10m四方が粘着液だらけだ。その真ん中に動けなくなった魔物が居た。
テラが、狙いを定めて矢を放つ。一発で命中し、ホーンラビットは、魔石をドロップして消えて行った。どうした訳か、ホーンラビットと一緒に粘着液も消えていく。粘着液がホーンラビットの一部みたいな消え方だった。残ったのは、テラが放った矢と魔石だけだ。
「ダンジョンでは、倒れた魔物と一緒に粘着網が消えていくのが良いな。共に魔力で構成されているからなのか…、訳は分からぬが使いやすくなる。次は、アシッドスクロールだが、どのくらいの威力なのであろうかな。」
「次は、俺が試して良いか?」
「リンジーか。かまわぬが、どのくらい魔力が必要なのかも分からぬのだぞ。お主は、ロックバレットをメインに戦うのだから、バックアップの戦力は剣術にした方が良いと思うぞ。」
「俺の戦い方は、そのつもりなんだけど、ロックバレットは、物理攻撃に近いからな。それが効かない時の予備戦力としてスクロール魔法が使えたら心強いと思ってな。」
「うむ。確かに、お主の攻撃は物理寄りだな。ではやってみろ。お主が使えるなら、リニも使えるだろう。バックアップは、サラで行ってみるかな。」
「さっきの場所から左奥に同じ魔力反応があるよ。後ろ側にはもっと大きな反応だからボアかな。少し大きな反応がある。」
「俺は、ボアを討伐してみたい。サラ、良いよな。」
「大丈夫ですわ。サラに任せておけばリンジーがいくら失敗しても心配いらないですわよ。」
「では、行ってこい。凛。魔物の移動はないか?」
「少し移動しているけど、ほぼ同じところ。身を潜めている感じかな。」
「リンジー、行きますわよ。」
「お、おう。」
前がリンジー。手にはアシッドスクロールを持って、ボアが潜んでいる方向に向けている。
粘着スクロールと同じくらいの距離、40m程でスクロールを構えている。
『ビューッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、…。』
リンジーが、酸を発出しながら走り出した。
『ビュッ』
『ジュッ・ジューッ』
スクロールから出た酸がリンジーが狙ったボアが潜んでいるあたりの草原を焼いてボアに命中し、サラの出る幕なく魔石へと変えていった。
「凛、このスクロールほとんど魔力を消費しないぞ。魔物は選ぶかもしれないけど、役に立つ。」
リンジーが、手に入れた魔石をもって笑顔で戻ってきた。
「リンジー、調子に乗るんじゃありませんわよ。油断は、あなただけじゃなくてパーティーメンバー全員を危険にさらすことがあるのですわ。」
「俺は、油断なんてしてないよ。ただ、このスクロールの威力と魔力消費の報告をしていただけだよ。油断してないぜ。なあ、凛。」
「うん…。そうだね。次は、僕とリニでやってみようかな。僕がアシッドスクロールを使ってみて良い?」
「凜が前衛をやるのか?失敗した時、回避は大丈夫なのか?」
「次は、ホーンラビットでやってみる。ホーンラビットにアシッドスクロールは過剰攻撃かもしれないけど、ダンジョンの中だから大丈夫だよね。」
「まあ、やってみようか。魔物の場所は把握しているんだよな。」
ホーンラビットの場所は、把握している。へっぴり腰ではない。身をかがめて気配を消して近づいて行った。
「凛。もう少し近づいた方がいいと思うぞ。こんなところで止まらないでくれ。」
斜め後ろからリニが囁いてくる。分かっている。もう少しだよ。でも…。分かっているから、押さないでよ。
僕は、リニに押し出されるようにホーンラビットとの距離を縮めて行った。
「この辺りからで大丈夫。凛、行け!」
「う、うん。撃つよ。」
『ドビュジューッ』
凄い勢いで酸が発出され、間の草原を焼きながら酸がホーンラビットに命中した。ホーンラビットは、何も残さぬほど溶かされてしまった。残されたのは、小さな魔石だけ。
「凛、魔力の込め過ぎだ。草原が荒れてしまったではないか。ダンジョンだから何とかなるが、外でそんな使い方をしたら大変なことになるぞ。」
「う、うん。ごめんなさい。でも…、そうだね。怖がっていたら、正しい判断が出来なくなる。」
「恐れず、ちゃんと見て判断する。戦いの基本だ。サラが言ったように、油断は危険だ。しかし、恐れて正しい判断が出来ぬのはもっと危険だ。良いな。凛。自分の力を信じるのだ。仲間の力もな。戦いを始めるのはそれからだ。凜は、十分に強くなっておる。心配するな。己の身は己で守れるほどにはな。」
「凜は、大丈夫だぞ。一緒に訓練したから分かる。俺は信じているぞ。俺の後ろは凜が守ってくれるって。」
「フロル、ありがとう。頑張るよ。」
「うむ。では、次の訓練だ。誰と誰が組んでもこの階層の魔物に後れを取ることはないであろう。次は、採集訓練をしようかのう。ボアの魔石は、手に入った。次は、薬草だ。自分たちでチームを組んでみろ。」
「テラ、お主に任せる。二人か三人で採集チームを組んでみよ。採集するのは、薬草だ。採集役と警護役をしっかりと決めるのだぞ。凜は、儂と組め。後で、メンバーは変えるがな。」
「リンジー、あなたは警護を担当して。採集役はフロル。私とサラが採集をしてリニが警護を担当して。この分担でやってみるわよ。」
「「「「了解。」」だぞ。」ですわ。」
「時間制限を決める。終了は、シモンたちが降りてくるまでだ。儂たち以外は、ボアの魔石は、薬草100本分。その他の魔物の魔石は10体分に換算するぞ。競争だ。真剣にやるのだぞ。」
『はい!』
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