第60話 調査4日目
下水道の調査4日目。汚泥の乾燥と薪型燃料作りは順調だ。今日も午前中で乾燥用の穴5杯分の汚泥を除去して、下水道の調査は、この4日間で500m程進めることができた。
僕の錬金術で薪型燃料を錬金するのはまだうまくいかないのだけど、リニとクーンのクリエイトのスキルは順調に上がって、リニが一日に8000束以上、クーンは3000束以上の燃料を作ることができるようになっている。質は二人ともほぼ同じで毎日クーンが金貨30枚リニが金貨80枚分の燃料を道具屋とギルドに卸している。
そのお金は、それぞれのパーティーで均等割りだ。つまり、僕たちとロジャーで金貨80枚。シモンさんたちが金貨30枚を分けていることになる。その為、初日の最初だけはスクロールは提供する形をとったが、その後は、スクロール1本銅貨2枚で購入してもらっている。一日の使う量は、それぞれのパーティーで30本ほどだから、銀貨6枚を僕に支払ってくれている。それぞれのパーティー費から出す形をとっているそうだ。だから、僕が一番報酬を貰う形になるのだけど、そうしないとダメだといって銀貨を押し付けるように支払われている。そう、僕は毎日銀貨12枚ずつを貰っている。
パーティー資金もこの4日間で、僕たちが金貨250枚以上でロジャーが45枚程、シモンさんのパーティーでも金貨110枚程を貯めたことになる。シモンさんたちは、この依頼が終わったら、まずパーティーの装備をしっかりをそろえたいと言っていた。僕たちは装備は持っているから今の所特に差し迫って必要な物はない。これから本格的に冒険者ギルドから依頼を受けることになれば、必要な装備が色々と出てくるだろうと話し合っている。
今日もいつものように汚泥を乾燥まで運んでいると、下水道にツンと鼻をつく臭いと生臭いにおいの両方が充満してきた。
「ロジャー、凄い臭いになっているね。」
「うむ。この先、あちらの奥の方に魔物の気配がある。フロルと凜は、儂の後ろに下がっておれ。儂が、魔物に気づかれぬように少しずつこの汚泥を取り除いて言ってみるでな。」
ロジャーはそう言うと、汚泥の方に手を伸ばして汚泥を少しずつ収納して行った。フロルみたいに直接触れているように見えるけど、ロジャーの手は汚れていない。なんか絶妙な距離で収納が始まっているのだろう。
「フロル、凛、儂の真後ろに回れ。前に物理・魔法結界を張るからな。」
懐から魔道具を取り出すと、魔石の部分に手をかざして起動した。そのまま少しずつ前に進んでいっている。汚泥の壁が薄くなり、うすぼんやりとした灯りがあるのが分かった。下水道の奥の方が少し明るくなっているようだ。
「ここから見てみろ。この汚泥の原因が分かるぞ。」
ロジャーに言われて汚泥の壁の穴から中を覗いてみた。
「何あれ!」
中では、数匹の魔物が争っていた。一方は、僕たちがよく知っている魔物。スライムだ。そして、そのスライムを攻撃しているのが、金魚の餌のミジンコを大きくしたような魔物だった。
スライムは、ミジンコに向かって酸攻撃をするが、ミジンコはその酸に向かって粘液のような物を出して対抗している。粘液と酸がぶつかり合った時、白い煙のような湯気のようなものが出ている。その二つ、粘液と酸が混じりあったものがこの壁の正体だった。
「スライムとミジンコはどうして戦ってるの?」
「もうしばらく見ておけば分かるのではないか。」
「もうしばらく…。」
「フロル、外にいる連中を連れて来い。ただし、気取られぬように気配を消してこいと言うのだぞ。シモンたちも来るように言ってくれ。」
「はい。分かりました。行ってきます。」
フロルがみんなを呼びに行っている間には魔物の争いは終らなかった。ロジャーは、待っている間にもう一つ結界の魔道具を出していた。
「何?その魔道具。」
「念のためにもう一つ気配を隠す結界を張っておこうと思ってな。」
ロジャーが魔力を流しむと仄かな光が魔道具から溢れてきた。
「ロジャー様、何が起こったのでしょうか?」
「魔物が現れた。この先だ。見てみろ。一応、気配を消す結界は張っているが、あまり大きな音は立てないようにな。」
「はい。」
テラから、順番に魔物の戦いの様子を見ている。
「ロジャーさん、スライムが全部負けたよ。あの魔物がサラたちの方に向かってくる?」
サラがロジャーの陰に隠れるように回り込んで報告してきた。
「まだ、大丈夫だと思うぞ。よく見るのだ。」
次は、リニが覗いていた。
「ゲゲッ…。あの魔物がスライムを食べています。」
「やはりな。」
森の中でも魔物同士の戦いはある。魔物でも実在化すれば、餌が必要になるからだ。弱肉強食は、この世界でも同様だ。
「では、魔物退治と行こうか。よく見ておくのだぞ。見たところ、あの魔物はCランクにも届いておらぬだろう。」
「ロジャー、一人であの数の魔物を討伐できるの?」
「よく見ておくのだ。これが、儂の戦い方だ。」
結界から出たロジャーは、鉄球の投擲で自分の方に注目を集めた。
「縮地」
縮地を蹴りながらジグザグ移動し投げ槍で半透明な体の中に見える魔石を貫いている。
「一体目、討伐終了。」
次の魔物は、投げ斧で頭を落とした。
「二体目、そして、三体目。」
更に、縮地を蹴ると天井まで跳び上がると、天井を蹴って三体目の後方に移動し、投げ斧で首を落とした。
「残り三体、魔石は壊したくないな。売れるとしたら魔石くらいだろうからな。」
そんなことを言いながら、縮地を蹴ると四体目の後方から手元に戻した投げ斧で首を落とす。巨大ミジンコは、ようやくロジャーを認識し、粘液を撃ち出してきた。
残り二体だ。
「シモン。結界から出て来て、攻撃魔術を撃ってみよ。」
「えっ?俺がですか?は、はい。分かりやした。やってみます。」
シモンさんが結界の外に出て、ファイヤーボールを撃つ。2発、3発、なかなか当たらないが、諦めないでさらに狙いを定めて撃とうとする。」
「シモン、慌てて撃つのではない。それから、その場に留まるな。良いな。自分が当てやすい場所まで移動して撃つのだぞ。」
「はい。留まらない。当たる場所まで移動する。」
ロジャーに言われたことを繰り返し、移動しファイヤーボールを撃っている。巨大ミジンコにぎりぎりまで近づいてファイヤーボールを撃ちこんだ。
「当たりました。」
ミジンコは、少し体を焦がしたが、まだ動くことができるようだ。
「シモン、同じ場所を狙え。回復の時間を与えるな。」
ロジャーは、最後の一体を自分の方に誘導しながら、シモンに戦いの指示を与えている。
「はい。」
2発、3発、…、5発目でミジンコが倒れた。
「良し。最後の一体は、リニ、討伐してみろ。」
「はい。」
リニが結界から飛び出してきた。
ロジャーがミジンコから距離を取り、間にリニが入った。
「移動しながら、当たりやすい距離を測る。」
リニは、さっきシモンが言われていたことを繰り返していた。
「ロックバレット。」
「続けて撃て!」
「ロックバレット、ロックバレット!」
三発のロックバレットが命中し、ミジンコは倒れた。
「よし。全ての魔物を倒した。この先の調査を済ませて一旦ギルドに戻るぞ。」
『はい!』
戦闘が終わって、まだ汚泥で埋まっていない下水道を奥まで入って行った。その先は、元の下水道につながっていると思ったんだけど下水の臭いがしない。
「ロジャー、下水がないみたいだけど、どうしてなんだろう。」
「うむ。もう少し先まで入って行けば分かるやもしれぬ。まあ、大体予想はつくがな。」
20分程進むと、洞窟の口が開いている場所に到着した。その後ろは、岩で完全に塞がっている。
「やはりな。ダンジョンが発生している。
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