第52話 装備調達とパーティー訓練
武具の調整を終わってギルドに戻ると直ぐに素振りから始めた。武器を体になじませるように丁寧に型をしっかりと意識する。足先、指先、体の隅々まで意識を張り巡らせて丁寧に素振りをする。
次に、武具に魔力を流してみる。それぞれ魔力受けを調整してもらっているから思った以上にスムーズに魔力を流し込むことができる。
フロルは、投擲武器とナイフ。体の一部のようにナイフを使っている。動きながら攻撃するスタイルだ。
リニは片手剣だ。左手には盾を持っている。その盾には剣の鞘が付いていて、盾で体を守って魔術で攻撃する攻撃パターンも身に着けている。守りながら攻撃もするシールドバッシュは、リニの得意な魔術になっている。
リンジーも前衛。両手剣。ロックバレット。両手剣を引きずりながらロックバレットを撃ちまくる。小柄だが、身体強化により、スピード特化の前衛の戦い方をできるようになることが目標だそうだ。
フロルは中衛。敵と距離を取り投擲。背後から忍び寄り、ナイフで切り裂く。スピード特化の暗器使い。ロジャーを師匠として尊敬しており、ロジャーの戦い方を理想としている。
後衛は、弓を獲物にしているテラ。後衛からの攻撃は、魔物によっては魔術ウォーターボールを使う。回復薬でもある。
後衛魔術特化のサラ。攻撃の威力を増すため杖を使用する。火・風の両方の属性を持つ。
後衛支援の僕。錬金術の使用方法を研究中。攻撃用のスクロールとして使えそうなのは勢いを増した洗浄のスクロール。他にも何かないか調べている。錬金術で作ったポーションで回復薬に徹するという戦い方も視野に入れている。身体強化は、発現しているけど、上手く使えていない。獲物は片手剣と盾。その内、攻撃用のスクロールか銃を装備する予定。どちらかと言うと希望に近い予定。
暫く素振りを続けているギルマスが訓練場に来てくれた。今回は、魔物に対応する為の戦い方の指導だ。かなり実践に近いフォーメンションを指導してくれるということだった。
「基本的なフォーメーションは、決まっているか?」
「いや、まだ魔物との戦いをしたことがない為、試行錯誤中だ。」
「では、それぞの職業は…、分かるはずないな。うむ、それぞれの武器と防具からフォーメーションを決めるか。」
「リニ、お前は、勿論前衛な。お前の役目は、前線の維持だ。敵に中に攻め込まれないように守る。後衛は基本的に撃たれ弱いからな。お前は2~3発食らっても怪我をすることは無いかもしれないが、後衛は命に係わる怪我をすると思っておけ。もう一人、前衛はリンジーだな。しかし、お前は前線の維持よりも相手を押し込むタイプの前衛だ。自分より後ろに下げないことより、前線を押し上げることを意識して動き回るんだ。そして、押しこめ。フロル、中衛のお前は、前衛が崩れそうになったら、その敵に押しとどめて、
「「「はい。」」」
「後衛は、死ぬな。そして、できるだけ効率よく魔物を倒していくんだ。お前たちが手間取ったら前衛が危なくなる。そして、お前たち自身もな。それから、回復もできるだけ効率よくだ。頻繁に回復しすぎると魔力や回復薬が無くなってしまうぞ。良いな。効率を考えて戦え。いいな。」
「「「はい。」」」
「では、今から、シミュレーション訓練を行う。今から的にを置くからな。それぞれが魔物だと思って攻撃するんだぞ。魔物からの攻撃は俺がシミュレートして行う。俺に殺されるんじゃないぞ。」
「はじめ!」
「リニ、左の魔物から攻撃だ。受け流して切り返せ。」
左側に移動したギルマスがリニに向かって切りかかってくる。リニは、シールドバッシュで攻撃を受け流し、ギルマスにダメージを与えようとするけど全く通じない。
「リンジー、右から魔物が攻め込んでくるぞ。まず、的に向かってロックバレット。」
「ほら、攻め込んできた。フロル、援護だ。鉄球を撃ちまくれ。リンジーも動いているからな。相打ちにならないようにリンジーの動きの癖を覚えるんだ。」
「後ろ!的に向かって攻撃をせんか!何をボーっと見ている」
テラは、まず弓を射る的にはなかなか当たらないが、味方に当たらないように気を遣わないといけないから尚更だ。サラが、高威力のファイヤーボールを的に向かって放った。
ファイヤーボールの炎が飛び散っていく。その飛び散った炎を気にしたリニにギルマスの攻撃が入った。
「後衛!味方の気を散らさせるんじゃない。これでリニは負傷退場だ。戦力が減ったぞ。」
「回復役は、直ぐに動かないとリニが死ぬぞ。」
僕が、リンジーの陰からリニを引っ張り自陣に引きずり込んで回復薬を使った。リニが復帰する。
「凛、今の動きは良かった。そうだ。無理して敵陣の側で回復する必要はないからな。自陣に引っ張り込め。」
そう言いながらもギルマスの攻撃は止まらない。
リニが前線を戻すために前に出た。それを支援するようにすぐ後ろからフロルが援護する。リンジーは、反対側を押し戻そうと的に向かって攻撃している。サラは、さっきみたいに仲間を蒔きこまないようにファイヤーボールは奥の敵に撃ちこみ、近くの敵にはエアカッターで攻撃することにしたようだ。
ギルマスの攻撃がリンジーの方に移った。リニは、前には出ずにリンジーとの距離を縮める。後ろからフロルが援護してリンジーへの攻撃は失敗に終わらせることができた。
「今の連携だ。いいな。押し込むべき時なのか守るべき時なのか。それをいつも考えて戦うんだ。テラ、攻撃が散漫になっているぞ。効率よくだ。」
「は、はい。」
その指摘でテラは、弓での攻撃と高威力のウォーターボールを交互に使って攻撃するようになった。弓を避ける方向にウォーターボールを放ち的が集まっている所にも矢とウォーターボールの攻撃を集中させて効率よく敵を倒そうとし始めた。僕は、洗浄のスクロールに大量の魔力を流し込んで的をなぎ倒していった。
全ての的を壊し、なぎ倒したところで訓練は終了した。その間の時間は、とっても長く感じたけど、多分5分程度だったのだろう。それでもとっても長く感じたし、とってもとっても疲れていた。
「ちょっと待ってろ。的を立て直してくる。」
「ええ。また、直ぐにやるんですか?」
「当たり前だ。訓練だろう。繰り返しが基本だ。」
この後、ギルマスとの訓練は10回も行われた。
「よし。ご苦労だった。合格だ。」
「「「「「えっ?」」」」」
「あの…、試験は明日なんじゃ。」
「そんなに何度もしなくていい。お前たちの実力が分かれば良いのだからな。試験官は俺だ。明日やってもおんなじことを繰り返すだけだ。だから、合格な。明日からお前たちはEランクパーティーだ。期待しているぞ。それから、凛。俺が紹介状を書いてやるから、錬金術師ギルドに登録して攻撃のスクロールの資料を探してこい。この後、紹介状を書いておくから、明日受付で受け取れ。いいな。良し。解散だ。」
『はい。』
「ねえ、どうするの。明日から私たちEランクパーティーだってよ。」
「また、テラ姉になってる。」
「そんなことどうでも良いの。だってランク持ちのパーティーって一人前ってことなのよ。Eランクって言うことは、Dランクの依頼を受けられるってことなの。その意味わかる?」
「成人月の初日にランク持ちパーティーになれるなんて凄いなテラ姉は。」
「リンジー!そんなこと言ってるけど、あんたも含めてEランクなのよ。そして、あんたも含めて、Dランクまでの依頼を受けるってことなの。分かってないでしょう。怖いことだし、凄いことなのよ。」
その多くがルーキーランクで怪我をしたり死んでしまったりして冒険者を続けることができない。そんな過酷な世界。ランク持ちの冒険者は全体の半数もいない。増してやEランクともなれば、その数はさらに半数になる。その位少なく、そこに行きつくのは大変なことなのだ。
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