冒険者パーティー結成編

第47話 パーティー登録

 朝の勉強後、シモンさんたちには先にギルドに行ってもらった。5人とも簡単な文字はすらすら読めるようになったから依頼書を選ぶことに問題はない。今は、依頼をこなしてポイントを貯めながら装備を買うためのお金を貯めている所だ。装備もなく町の外に出るのは危なすぎるということで、ギルドの職員にも止められたそうだ。もうすぐ全員がFランクに上がるためのポイントが溜まるといっていた。


 ロジャーに頑張りが認められて、古いマジックバッグを貸してもらってからは、荷物運びの依頼を中心にコツコツとポイントと資金を貯めることができているそうだ。もう少しで金貨4枚になると言っていた。金貨が5枚貯まったところで、全員分の装備をそろえて、町の外の依頼を受けるそうだ。そうなったら、薬草の素材集めを頼めるようになるかな。


「それで、私たちのパーティー名はどうしたら良いかしら。」


「テラ姉がリーダーなんだから、考えてよ。」


 リンジーからの丸投げ発言。キッとにらまれてすごすごと後ずさりをしている。そんな時のテラの顔はとっても怖い。僕もやっぱりテラ姉って呼んだ方が良いのかな…。


「私たちみんなのパーティー名よ。みんなが納得して、誰に伝えても恥ずかしくない名前にしたい。それに、もしかしたら大活躍してこの町でも有名になるかもしれないでしょう。そんな時に変な名前って思われたくないじゃない。出来たら、カッコいい名前が良いと思わない。」


「それなら、どんなパーティーになりたいかって考えてから名前を決めたらどうかしら。私は、やっぱりお金持ちの冒険者パーティーですわ。」


「俺は、そうだな。英雄になりたい。誰からも尊敬されるような英雄だな。だから強そうな名前が良いかな。最強パーティーとかストロンガーとかどうだ?」


「リンジーらしいけど、ちょっと恥ずかしいかな。俺は、そうだな。誰も死なないで、最後まで輝き続けていたいかな。俺たちは別に何も持っていない孤児だけど、この孤児院で巡り合えて、凜にも巡り合った。特別な才能もないけど、それぞれが何かしら得意なことを頑張って絶対最後まで生き残っていたい。冒険者って死がすぐそばにあるけど、それでも、誰も死なないで最後には幸せだったなって言えるようになりたい。そんなパーティーが良いな。」


「いいわ。私もリニの考えに賛成。それで、最後まで生き残っているぞって言う名前って何が良いかしら?」


「ダウンスター。夜明けの星。明るくなるまで生き残っている星のことだよ。しぶとく輝いて最後まで生き残って夜明けを迎えることができるようにって言う意味で俺たちのパーティー名はダウンスターって言うのはどうだい?」


「落っこちた星って思われない?それに、何かお金持ちにはなれそうにないですわ。」


「落ちるためには登らないといけないのよ。良いじゃないダウンスター。最後まで生き残りましょう。私はフロルの案に賛成。」


「俺も賛成だ。リンジーはどうだ?」


「ダウンって言うのは少し気になるけど、意味は分かったから賛成だ。」


「凜はどう?」


「僕は、それで良いと思うよ。生き残るってのは一番大事たと思う。」


「じゃあ、決まりね。」


「ええっ!私は良いって言ってないよ。」


「えっ?サラは絶対反対なの?それなら仕方ないわね。他の名前を考えましょう。」


「違うの。絶対反対じゃないけど、お金持ちにもなりたい。金貨を山ほど手にして贅沢な暮らしをしたいわけじゃないけど、銀貨位は持っていたい。毎日ちゃんと美味しい食事を食べたいの。そんな願いは持ったらダメなの?」


「そうだよね。最近は、現金を手にできるからって孤児院に一番たくさんお肉やお野菜なんかを買ってあげてるのってサラだもんね。笑顔で暮らしていくにはお金も必要だわ。じゃあ、シルバーって言うのを付けない。ささやかな贅沢をしてみたいって言う願いを込めて。シルバーダウンスターって言う名前はどう。」


「それなら良い。シルバーダウンスター。何か少しだけ高級な感じがしてきたわ。それに賛成。」


「シルバーダウンスター…。ちょっとカッコよくなった気がする。願いも賛成だ。俺は、それで良いと思う。」


 リンジーも気に入ったみたい。僕も賛成だ。全員がその名前に頷いている。みんなの顔を見回してテラが言った。


「私たちのパーティー名は、シルバーダウンスター。最後まで生き残るそして、少しだけ贅沢できるように頑張りましょう。」


 そう言えば、シモンさんたちは全員冒険者登録したって言ってたけどパーティー名は何にしたんだろう。後で聞いてみよう。


 パーティー名を決めて冒険者ギルドに向かった。テラとリニの二人の冒険者と僕たち4人の見習い冒険者。6人パーティーの結成だ。今までは、全員が見習い冒険者だったからハーティー登録はできなかったから、今日から正式にパーティー活動が始まるって言うことになる。やることは今までとは何も変わらないのだけれど、結果がパーティーギルドポイントに反映される。そして、これからは、そのポイントで僕たちのパーティーランクが上がったり下がったりすることになる。


「お早うございます。ミラさん、今日はパーティー登録に来ました。」


「はい。お待ちしていましたよ。では、登録用紙をお渡ししますから必要事項を記入してください。その間に、冒険者パーティーのギルドカードを作成してきます。メンバー全員に魔力登録をお願いします。全員来ていらっしゃいますよね。あら?ロジャー様は、既に依頼で町の外に出ていらっしゃいますけど、パーティーメンバーに登録なさらないのですか?」


「はい。その予定はありませんし、ロジャーさんとは実力が離れすぎていてパーティーに入っていただいたら私たちが足手まといになってしまいます。」


「それはそうですね。では、この用紙の記入をしていてくださいね。パーティー名はここに記入していただくのですが、既に登録済みの名前だったら同名での登録はできませんので、記入前に確認をします。もうパーティー名は決めていらっしゃいましたか?」


「はい。シルバーダウンスターと言う名前にしようと思う。」


「シルバーダウンスターですね。登録がないか確認してまいります。パーティー名以外は記入できますから、書いていてくださいね。」


「はい。でも、まだ、読み書きにあんまり自信がないのだ。凜にお願いしても良いか?」


「はい。パーティーメンバーの方ならどなたでも大丈夫ですよ。」


 用紙を渡してもらって確認しながら記入していった。メンバーの名前、誕生月と年齢。居住場所。


「ミラさん、居住場所はどう書いたらいいですか?」


「皆さんはパーティーハウスで生活するようになるのでしたらそちらを記入していただいて結構です。住所はお渡ししていましたよね。」


「ええっと。はい。頂いています。ここに書いてある住所を記入すればいいのですね。」


 良かった。ロジャーに言われてパーティーハウスの住所を書き写していた。そのメモを見ながら書類に記入していった。必要事項を記入し終わって書き込んでいない場所がパーティー名だけになった。


「あっ。それから、テラさんとリニさんは、冒険者登録もしてもらわないといけないのでした。こちらの手続きは終了していますし、お二人ともギルドカードを持っていらっしゃいますから、それを提出していただくだけで結構です。最後にこちらに魔力を流してもらいます。これは、本人に間違いないかを確認する魔道具になっています。テラさんからお願いしますね。」


「はい。ここに流すのですね。」


「あら?テラさん。見習い冒険者登録の時よりもずいぶんと魔力量が上がっているようですね。もう、成人の儀はお済みになったのですか?」


「いや、まだだ。成人の儀が済むと魔力量が上がるのか?」


「そういう訳ではないようですが、魔術回路が活性化するので、総魔力量が上がったような反応が出るのだそうです。実際には安定化して固定されると言われていますがその辺りは教会が管理しているので私共には分かりません。」


「そうですか。私は、もうすぐ成人の儀を受けることになるのだが、どのようなことが行われるのか少し心配だな。」


「では、リニさん。登録お願いします。」


「うむ。」


 二人の魔力登録が終わるとミラさんは奥の方に入って行った。書類への書き込みも終わったから僕たちは、それぞれ依頼を見に行った。下水処理場に関する依頼は貼りだされていない。魔物の討伐依頼がいくつか貼りだされていたけど、殆ど町の外の依頼だ。町中の討伐依頼は、前テラたちとやったカエルもどきの討伐依頼。1匹鉄貨1枚で依頼が出ていた。討伐証明は皮らしいから、討伐依頼というより素材集めの依頼と言った方が良いのかもしれない。


「テラさん、リニさん、皆さんパーティー登録の準備が終わりました。こちらにどうぞ。」


 ミラさんに呼ばれてカウンターの方に集まって行った。


「パーティー名の登録確認が終了しました。申請されたパーティー名は使用可能です。シルバーダウンスターで登録なさいますか。」


「はい。お願いします。」


「では、ここにパーティー名をご記入ください。固有名詞記号を一番前に記入することを忘れない様にして下さいね…。…はい。そうです。これで皆さんのパーティーは、シルバーダウンスターになりました。これからのご活躍をお祈りしております。」


「はい。ありがとうございます。では、今から下水処理場の清掃に行ってきます。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る