第43話 パーティハウス契約
「ロジャー、家ってどうやって探すの?」
「まず、冒険者ギルドで聞くことからだろうな。」
そう言うと、ギルドの受付の方に歩いて行って担当のミラさんに声をかけた。
「俺たちは、そろそろパーティーハウスを構えようかと思っておるのだが、7部屋か6部屋で広間と食堂がって使用人用の予備部屋などもあるような物件を紹介してもらえぬか。」
「この町の不動産ギルドから預かっている物件がいくつかありますが、それを紹介いたしましょうか?」
「それらの物件には何か制限があるか?」
「ランクを持った冒険者しか借主になれませんが、ロジャー様なら問題ありません。私たちがお預かりしている物件は、全てランク制限が付いております。」
「では、家賃はどの位なのだ。一番高い物から教えてくれぬか。」
「条件に即した一番高い物件は、これですね。個室8部屋。1階に使用人用の部屋が2部屋あります。水回りは豪華です。お風呂もある物件です。ただ、給湯の魔道具は、魔石を準備して頂かないと使用できません。ここがなんと契約時に金貨6枚。毎月の家賃が金貨1枚と銀貨5枚という格安料金になっております。ただし、1年分の家賃を先払いして頂かないといけません。以後も1年ごとの更新で家賃先払い方式です。ですから、契約時には金貨24枚が必要になります。」
「おや?契約時の金貨6枚に初月の家賃は含まれておらぬのか?」
「はい。一年分の家賃とは別に金貨6枚が契約時に必要だということになっております。2年目から1年分の家賃金貨18枚だけで結構でございます。」
「その家は、今から見に行くことができるか?」
「はい。大丈夫でございます。担当者もおりますから今から見学することは可能でございますよ。」
「では、その次に家賃が高い物件はどのような物なのだ?」
「ええっとですね。これですね。部屋数は8つで食堂、広間はあります。使用人用の部屋はありませんが、母屋の外に4部屋の使用人用の家屋が設置してあります。水浴び用の部屋は作ってありますがお風呂はありません。この部屋の家賃ですが契約時に金貨5枚と銀貨1枚。毎月の家賃は金貨1枚と銀貨1枚となっております。1年分の家賃を先払いしてい叩くと、契約時に支払う金額がすべてで金貨16枚になります。次の年からは1年分の先払いであれば、金貨12枚の家賃になります。」
「その水浴び用の部屋と言うのは、こちらで風呂に改築しても大丈夫なのか?」
「それは、確認は取れておりませんが、必要であれば今すぐ確認に参りましょうか?」
「そうだな。そうしてもらえるか?念のためその次に高い物件も教えてもらえぬか?」
「はい。次の物件は、個室の数が6部屋ですからロジャー様の希望には足りておりませんが、屋外に使用人の部屋とその向かいにゲストハウスがございます。お風呂はついておりませんが、湯あみや水浴び用の排水設備が整った部屋がございます。ご自分で給湯の魔道具屋湯舟を付けるのはかまわないという確認が取れています。ただ、この家は少々古く、痛みもございますので、住むとなれば少々手直しが必要でございます。家賃は、契約時に金貨3枚。次の月から金貨1枚になっております。年払いにして契約時に金貨14枚で割引等はございません。」
「ほうほう。ゲストハウスがあるのか。それも気になるな。少々古いということだが自分たちで風呂を付けられるのも良いではないか。その物件から見せてもらおうか。その物件があまりにひどかったら、次は、一番高い物件に回ろうかのう。風呂が付けられるなら2番目の物件も見て見たいのだが、風呂については何時わかる?」
「2~3日かかるかと存じます。では、風呂のことが分かるまで結論を出さないかもしれないということで今回提案させていただいた物件をご覧になってはいかがですか?もしも、次の方がいらしても、風呂の件がはっきりするまで保留でお待ちいたしますよ。」
「そう言うことなら、3軒とも見せてもらおうかな。今から直ぐに出ることが可能か?」
「はい。可能でございます。ロベルトさん、ご案内お願いします。」
ロベルトさんに案内されて、ゾロゾロと町中を歩いてついて行った。
「こちらが、一番家賃が安い物件でございます。ご覧のように築年数がたっておりますから少々見てくれも古びております。ただし、屋根や壁の補修は済んでおりますから、隙間風や雨漏りの心配はありません。母屋の右側にありますのが使用人用の家屋になっております。そして、母屋の左側のゲストハウスは、母屋よりもかなり後に建てられたものですからまだまだきれいに保たれております。では、中をご案内しいます。」
「古いって孤児院に比べたら十分きれいだし豪華だ。なんか、こんな所に住むなんて夢みたいだぞ。」
テラは少し浮かれ気味だ。
「うむ。中々良いではないか。古いといっても趣があるとも言えるからな。儂は、このような建物は好きだぞ。」
「では、中へどうぞ。」
中に入ると壁の色やガラスの曇り具合に古さを感じるが、黴臭さなどもなく清潔な感じだった。確かに、外も含めて壁紙の張替えや塗装のし直しなどはした方が良いだろうが、特に修理が必要だとは感じなかった。トイレもきれいだし、話に聞いていた湯あみ用の部屋も割と広くて、脱衣場も整っていた。バスタブと給湯の魔道具さえ準備すれば、お風呂として十分に使うことができる部屋だ。
それぞれの個室も広さや向きに多少良し悪しはあるが、どの部屋もきれいに整えられており、体を休めるスペースとしては問題はないように思えた。
台所は、一般的なつくりで6人から7人分の食事を準備するには十分な広さと設備だった。勿論道具は何一つないのだけど、ロジャーがストレージの中にかなり持っているって言ってたから心配いらないと思う。フライパンと鍋なら僕が錬金術で作ることができる。
「ロジャー様。」
「どうした、テラ?儂に様付けなど、急に変だぞ。」
「あの、こんなに家を借りるなんて思ってもなかったですし、ロジャー様が居なければ絶対借りることができない家ですから、私たちは使用人として置いていただければ、十分ですから…、あの、本当に、このような豪華な家をお借りになるのでしょうか?」
「儂一人なら、このような家は、借りはしないぞ。そもそも、町になぞ住んでもおらん。町にもとどまらず、村にもとどまらない。自由気ままな旅をしておったのだからな。ただ、凜がもう少し大きくなって独り立ちするまでは、少し腰を落ち着けようと思ってな。お主たちは、凜の仲間なのであろう。なれば、ここは、お主たちの家になる。冒険者として自信を持って暮らしていくことができるような力をつけるための拠点となるのだよ。儂も一介の冒険者なのだ。様付けなどするのではない。暫くは、お前たちを弟子として鍛えようと思っておるのだが、迷惑か?」
「とんでもございません。いいえ、とんでもないです。有り難いです。私たちを弟子にして頂けるなんて。頑張ってロジャーさんの弟子として恥ずかしくない力を点けます。」
「うむ。しかし、自分たちで使用人を置けるくらい力をつけるまでは、家事は分担制じゃ。料理や洗濯、掃除。できることを増やしながら、できることをやっていくのじゃぞ。儂も、料理や掃除は得意じゃが、儂は、町の外にできることも多いからな。お主らが中心に家事を分担することになると思う。宜しく頼むぞ。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「お願いします。」
テラとリニが深々と頭を下げている。ええっと、この家に決めたのかな…。
「あの…、ロジャー様、次の物件の見学はいかがいたしましょう。」
「さて、どうしようかうの。お主ら、次の家も見に行くか?」
「私は、この家で十分だと思うのですが。凜はどう?」
「僕も、この家は気に入ったな。何しろお風呂場になりそうなあの部屋が良いよ。暫くは、僕たち二人とテラとリニだけでしょう。部屋は余り過ぎだからね。ここにしようよ。」
「うむ。では、この部屋で契約しようかのう。」
契約は、その日のうちに終わって、明日からならいつでも引っ越して良いことになった。先に、僕とロジャーだけ引っ越しても食事の準備から全てしないといけないのは大変すぎるということで、少しずつ家具や台所用品を整備して、引っ越しはテラが孤児院を出る日にしようということになった。それまでは、今まで通りだ。だけど、落ち着く先が決まっているのは少し安心できる。
その後、僕のギルドカードからロジャーに家賃と契約金の半分の金貨7枚を支払って、残りをテラのギルドカードに入金してもらった。テラのカードには金貨25枚と銅貨2枚が入金された。これで、僕は一安心だ。だって人のお金を持っておくのって何か心配なんだよね。パーティー登録が済めばパーティー用のギルドカードを持つことができるようになるそうだ。それまでは、テラがパーティーのお金を預かることになる。
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