第39話 燃料販売
ギルドの倉庫で魔石炭もどきを出そうとして問題が発生した。今日持って来た分だけで倉庫が満杯になってしまったんだ。
「今日までの分の引き取りは、大丈夫だ。しかし、明日からの分を収納するスペースがない。ギルマスに相談して、どこかにスペースを確保するが、可燃物だから、どこにでも置いておく訳にはいかないからな。兎に角、明日までには、保管場所を確保する。もしも、場所の確保に時間がかかるようだったら連絡するから、必ず明日はギルドに寄ってから下水処理場にい行くようにしてくれ。良いな。」
「分かった。必ず、顔を出す。」
「それから、今回の代金だ。午前中の1.5倍近くの量があったぞ。早い所、燃料にして販売しないと収納スペースが何ともならんな。この分なら、今年の冬のこの町の燃料は、心配ないな。まだ、沢山持ってこれるのだろう?」
「はい。多分、今までの数十倍の量があると思う。その汚泥を取らないと私たちの依頼は終了しないからな。頑張るしかない。」
「まあ、汚泥を取ることが利益につながっているから良いではないか。あの依頼が塩付けになった理由は、その旨味のなさだからな。お前たちは、そこから利益を得る方法を考え出したのだ。見習い冒険者だというのに、全く恐れ入る。さあ、受付に行って今日のもうけを入金してもらえ。それとも、パーティーハウスの契約にでも行くか?もう、一年分の家賃くらい稼いだだろう。」
「ねえ、おじさん。10人位で住めるパーティーハウスの家賃ってどの位かな?」
「10人位で住むって言うことは、10部屋以上はないといけないってことだな。それにリビングと食堂。地下倉庫は、パーティーハウスには必須だな。そうなると庭付きで、一月金貨3枚は軽く必要だろう。一年で36枚。契約時に金貨40枚も持っていれば良いんじゃないか。それなら、もう少しかかるな。頑張って稼ぐんだぜ。」
受付に納品見積書を持って行ってミラさんに入金してもらった。午後の入金額は金貨7枚と銀貨7枚。拡大型の穴一杯で金貨2枚と銀貨2枚の計算になる。端数は切り捨てか、切り上げしてるんだろうけど、切り上げしてくれてるんなら嬉しいな。
次は、道具屋に寄ってみる。昼間に薪型燃料を卸したばかりだけど、家で試してみるって言ってたから、もっと仕入れるか仕入れないかは決めているかもしれない。
「これから、道具屋に行ってみようと思うけどみんなも着いて来る?」
「薪型燃料のことを話しに行くのか?それなら着いて行きたいな。大きさや形についても意見を聞きたいしな。」
リニは、自分で作っているから気になるのだろう。
「じゃあ、リニと僕とで行ってくるね。テラたちは先に帰ってて。」
「うむ。分かった。では、私たちは先に失礼する。明日は、いつも位の時間に孤児院に来てくれ。まず、勉強して清掃依頼を始めるからな。」
「了解。じゃあ、明日。」
リニと二人で道具屋に歩いて行った。リニは、クリエートがかなり分かってきたらしい。大きさや形も自分が思ったように形作れるようになってきたそうだ。僕は、相変わらず、術式は描けない。自分で思った通りの物を錬金できるようになったら色々作ってみたい物はあるのだけれど。
お互いの魔術の話をしながら歩くとあっと言う間に道具屋に到着した。まだ、話し足りない気分だけど、用事を先に済ませないといけない。
「今日は。おじさんいますか?」
「はーい。何でしょうか?」
「あっ。おばさん。おじさんいますか。さっき、薪型の燃料をおじさんに売ってもらうようにお願いしたんですけど、その後どうかなって思って一応、追加分の燃料を持って来たんです。」
「ちょっと待っててね。
そう言うと、おばさんは、店の奥の方に入って行った。
「良かった。お前たち、あの燃料は家とだけの契約にしてくれるか?冒険者ギルドに卸しているのは石型なんだろう。昼に持って来たあの薪型の燃料のことだ。あれは、いい。使いやすいし、火持ちもいい。何より煙が出なくて火力が強い。鉄貨2枚とは言わんぞ。そうだな。20本で銅貨1枚でどうだ?それなら独占契約をしてくれるか?」
「20本一束で銅貨1枚もくれるの?でも、そんなに出して大丈夫なの普通の薪だったら質が良い物でも20本で鉄貨3枚で売っているよ。」
「うむ。でも、お前たちが持って来た燃料は、2本の燃料で、薪20本分以上の火力があるのだよ。火持ちも含めてな。20本なら薪200本を越える位だからな。損をするような提案はしない。お主たちが独占契約をしてくれれば、儂としては本当に助かるのだ頼む。」
「分かりました。良いですよ。契約書か何か書かないといけませんか?」
「そうだな。ちょっと待ってくれ。独占販売契約をかわそうじゃないか。値段は前回入れてもらったものと同等の燃料ということで20本1束で銅貨1枚だ。この書面で間違いないな。」
「おじさん。一つだけ確認したいんだけど、リニがおじさんの意見を聞いて改良したいんだって。おじさんと一緒に改良するのは、大丈夫なんだよね。改良して、今よりも良くなったら、値段は、その時にもう一度確認するということにしても良い?」
「それは、かまわないが、銅貨1枚という仕入れ値は、そう簡単には上げられないからな。勿論、良い品になれば考えんこともない。しかし、薪だからな。そう高い値段は付けられんのだ。」
「僕もそんなに高く引き取ってもらおうなんて思ってないから大丈夫だよ。それで、ここに20本の燃料を60束持ってきているんだけど、買ってくれる?」
「よし。契約成立記念だ。ドドンと購入しやるぞ。一束銅貨1枚。全部で銀貨6枚だな。」
「「毎度ありがとうございます。」」
リニと僕の声が揃っていた。現金で銀貨5枚。パーティーメンバーに一人銀貨1枚ずつだ。皮鎧位なら購入することができるかもしれない。
「あのおじさん。この燃料、一日にいくつ位仕入れてくれる?」
「何?一日にか?うーん。当面は、一日100束が限界だろうが、その内、大口の購入先を見つけてきてやる。そうしたら、一日千でも2千でも仕入れることができるようになるからまってな。」
「分かった。まず100束だね。明日から、100束ずつ持ってくるから宜しくね。」
僕はおじさんにそう言うと、道具屋を後にした。
「リニ、これで、一日金貨1枚ずつは現金が手に入ることになるよ。
そしてそのペースでお金が手に入ると5日間で一人金貨1枚ずつ手にすることになる。それをどう使うかちゃんと話しておいてね。」
「金貨1枚だなんて、今まで見たこともない金額だぞ。銀貨だってつい最近初めて見たくらいになのに…。そんな金額何に使ったらいいのか見当もつかない。みんなに話して、決めておくけど、シスターたちに相談しても良いか?もしかしたら、テラが孤児院にいくらか寄付するって言うかもしれないし…。」
「シスターに相談するのは、
今日のお祝い金や支度金の話も何か変な気がするけど、何より孤児院で読み書きを勉強していないってことが変だと思う。昔は、神父様が教えに来ていたらしいって言っていたし…。
「まあ、お金の使い道は、よく相談しないといけないよな。テラは後一月で孤児院を出ないといけないし、俺も二月で出ないといけないんだから、住む場所の相談もしないといけないものな。」
「そうだよ。そして、冒険者として生活してくなら、装備もそろえないといけないでしょう。僕も錬金術式が手に入ったら材料さえあれば、協力できるけど、少なくとも材料と錬金術式は手に入れないといけないからね。」
「そうだな。5人でよく話しておく。装備のことは特によく話しておかないと怪我をしたり、死んじまったりしたらどうしようもないからな。」
「その通り!だから、よく話しておいてね。僕は、そこの門を曲がったらすぐに宿に着くんだけど、リニは、このあと一人で大丈夫?お金は僕のアイテムボックスで預かっていて良いかな?」
「凜がお金を預かってくれるなら一人でも大丈夫だ。この先を少し歩けば冒険者ギルドだし、まだ明るいからな。今日は、凜が言った通り薪型燃料を作っておいてよかったよ。お昼に買ってもらったばかりなのにまた買ってくれるなんて思わなかったからなな。凜は、良く買ってくれるって思ったな。」
「テラと行った時、家で試してみないと追加できないって言ってたからね。きっと試しただろうって思ってね。そう言えば、リニたちも使ってみた?」
「俺たちは、凜と一緒に下水処理場に行ったからできるはずないだろう。でも、シスターたちが使えるように台所に運んでいたから、もう使ってるんじゃないかな。どうしてだ?」
「使い勝手や燃え方で気になったことがあったら教えて欲しいと思ってさ。折角なら使いやすくしたいだろう。シスターたちに何か不便なことや使いにくい所があったら教えてくれるように言っておいて。」
「聞いておく。じゃあ、明日は、俺たちが孤児院で待っていればいいんだな。また明日な。」
「じゃあ、また明日。」
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