第34話 魔術訓練と清掃準備

「ねえ、ロジャー、昨日の訓練でみんな魔術やスキルをちゃんと使えるようになったの?」


「うむ。魔術は皆発現しておったからな。使えるといえば使えるのだろうが、テラとリニ以外は、総魔力量が少なすぎて実践では、まだ使えぬ。まあ、フロルのストレージは、魔力の消費が少ないから、実践でも使うことはできるだろうが、投擲スキルが低すぎて戦力としては、当てにならぬな。」


「そうなんだね。魔力が発現したらすぐに冒険で使えるようになるのかと思ってたよ。」


 僕たちは、冒険者ギルドに向いながら昨日の訓練の話をした。


「お主たちは、暫くは町の中から出ないだろうから、パーティーの活動で攻撃魔術を使うことは無いだろうが、今回の清掃依頼でできるだけ使える魔術を数多く使用して熟練度を上げていかないとな。魔術は、最終的にはどれだけ使用したかが戦闘で使えるかどうかの分かれ目になる。初期魔術でも熟練度が上がって使いこなせるようになれば、戦闘で十分に使える威力と正確さが手に入るからな。」


「へぇ?初期魔法でもそうなの?でも、街中で攻撃魔術を撃ったりしたら、大事になるんじゃない?」


「そうりゃあそうだ。攻撃魔法は街中どころか城壁内では使用禁止だ。使えるのはギルドの訓練所だけだな。しかしな、属性魔法を使うことで魔力量も上がるし、属性魔法全体の熟練度も上がるのだ。リニの属性が分からないのが痛いが、シールドバッシュならスキルを使用しても構わないからな。時間がある時は、剣術の訓練をしてその中でシールドバッシュを使うようにすることだな。」


「それって、リニは知ってるの?」


「勿論だ。昨日さんざん言ったから覚えておるだろうよ。それはそれとして、今日も儂は採集依頼に出るが、何か必要な物はあるか?採集のついでで良ければ採集してくるぞ。まあ、採集が出来なくても気長に待って欲しいがな。」


「それならさ。薬草とボアの魔石が採集できるようだったらお願いして良い?パーティハウスを借りるにしても資金がないと借りれないからさ。」


「そうだな。凜の資金稼ぎならポーション作りが一番効率が良いからな。まあ、儂も資金はかなり溜まってきたからすぐにでもハーティーハウスは借りることはできるぞ。しかし、分かった。薬草とボアの魔石はチャンスがあれば採集してくる。お主たちは、今日から清掃準備に入るのか?」


「うん。そのつもりだよ。レンガは作れるようになったし、フロルがストレージを使えるようになったから、僕と一緒にあの臭い泥を収納して運べるからね。リニたちは、出来上がったレンガで焼き場と乾燥場を組み立てていこうって昨日話したんだ。リンジーの土属性魔術がどの位使えるかまだ分からないからね。」


「リンジーだけでなく、フロルやリニも一応試してみた方が良いぞ。土属性の可能性はまだ残っているからな。初めは、穴掘りだけでも良いからな。魔術でやってみようとするのじゃ。資料室に行けば、土属性魔術の呪文が分かるであろう。」


「分かった。資料室で穴掘りの呪文を調べてから行くよ。」


 ギルドに着くと、ロジャーは真っ直ぐ受付に向かった。ロジャー向けの採集依頼が準備してあるようだ。腕利きの冒険者には、依頼の方からやってくるという話だ。


 テラたちはギルドに先についてた。僕が呪文について調べている間、昨日習ったスキルの使い方や攻撃魔法の練習するといって訓練所に降りて行った。訓練所は、冒険者ギルドの地下にある。


 僕は一人で呪文を探しに資料室に行った。地面に穴を作ったり、壁を競り上げたりする呪文を探すためだ。


「見つけた呪文は、土属性魔術のウォールという壁を作る魔術とエクスカペートという地面に穴を掘る魔術だ。それと、クリエート系の魔術のクリエートブロックは、土を材料にブロックを作る魔術らしい。クリエートには、ストレンジという素材の強化魔術もあった。リニでもフロルでもリンジーでも良いから、誰か一人でもその呪文を使えたらものすごく作業が捗るんだけど…。」


 僕が、魔術を見つけるまでの2時間近くはみんな訓練所で魔術の練習や剣術の訓練をしていたようだ。リニのシールドバッシュの訓練には他の人の協力と木剣なんかが必要だから訓練所でしか練習が難しい。放出系の魔術は5~6発で魔力切れで顔色が真っ青になるからその後は、剣術の練習をするそうだ。その時に圧倒的な力を見せるのがリニで、シールドバッシュはスキルだからそんなに魔力を必要としなくて、一人勝ち状態になるのだそうだ。


 ギルドでの訓練と調べ物を終えてみんなで゛下水処理場に向かった。スラムの中は通らない。少し遠回りになるけど城壁に沿って迂回するコースで処理場に向かった。


「まず、フロルとリニとリンジーは、土壁づくりのウォールと穴掘りのエクスカペートの呪文を試してみてよ。」


「試すのは良いんだけど、どこで試すんだ?もしも地面が穴だらけになったら困るだろう。」


「試すのは、下水処理場の側だよ。試すって言っても、汚泥を貯めて乾燥させる穴と焼き場作りをやるってことだから穴だらけになって困ることは無いと思うよ。」


「今日から、下水処理場の清掃を始めるということか?」


 テラはもう少し準備に時間をかけるつもりだったのかもしれない。でも、これ以上訓練や準備をやっても実戦で使えないと何もならなってロジャーに言われた。自分たちで自分たちのやり方を見つけないといけないって。


 下水処理場に向いながら、マスクを作ったり、スコップを作ったりした。レンガは、昨日までにたくさん作っている。でも、問題は、そのレンガで焼き場や乾燥場を僕たちだけで作ることができるかどうかだ。レンガを積み上げる技術もないし、設計図もない。


「リニ、焼き場か乾燥場の形をどんなにしたらいいか分かるかい?」


「俺が分かるはずないだろう。ギルドの資料室の中にはなかったのか?」


「だいぶ捜したけどなかった。それじゃあさ。まず穴を掘ってそこに汚泥を貯めて乾かしてみようか。乾燥につかそうなスクロールの錬金術式は見つけたからさ。僕とフロルで頑張って汚泥を運ぶよ。」


「ええっ。俺も汚泥運びするの?身体強化で穴掘りを頑張るからそれで許してくれない?」


「どうして?フロルは、ストレージスキルを持ってるから汚泥を運ぶことできるでしょう。」


「ストレージに入れる時に、直接触れないとダメなんだよ。あのくっさい泥に手を突っ込んで、ストレージに入れるんだ。気持ち悪いよ。絶対。」


「じゃあ、手袋を作ってあげるよ。水が入ってこない奴をさ。作業用グローブの錬金術式は見つけてるから、この前のカエルの皮で作ったら、防水グローブになると思うんだよね。スクロールにしようと思ってたけど、フロルが必要なら作ってあげるよ。」


「分かった。グローブが出来たら、汚泥運びをやる。でもグローブが完成するまで穴掘りをさせてよ。」


 フロルの泣き言はその場でグローブを作って却下された。でも、穴掘りには挑戦してもらう。土属性の可能性は残っているから穴掘りにはチャレンジしてもらうことにする。


 下水処理場に到着して、初めは、穴掘りをしたり、臨時の焼き場にする場所を平らにしたりする作業を行った。土魔術は、リンジーが発動できた。リンジーのおかげで穴掘りと、焼き場の整地は直ぐに終わった。


「僕とフロルで汚泥をリンジーが掘ってくれた穴に運んでくるから、テラとリニで乾燥のスクロールを使って乾燥させてくれないか?」


「分かった。しかし、乾燥させたものをどうするのだ?」


「小さく砕いて、焼き場に積み重ねたらサラのファイヤボールで着火してみてよ。燃えるようだったらどんどん投げ込んでいけばその内に汚泥は無くなると思うんだけど…。どうかな…。泥って言っても普通の泥とは全く違うでしょう。」


 燃えるかどうかでこれからの対策が変わってくる。燃えない時は、別の方法を考えないといけないのだけれど…。どこかに捨てに行くとかしかないかな。その時は、冒険者ギルドに捨て場所を探してもらわないといけない。汚泥を乾かして燃えるかどうかを試した後の話だ。


「フロル、行くよ。どの位ストレージに入るか分からないから少しずつ増やしていってみてね。岸から近い所から収納して。僕は、できるだけ離れた場所うから収納するから。」


「分かった。それにしても臭いな…。鼻がどうにかなりそうだ。」


 猫獣人のフロルは鼻が僕たちよりも利く。僕ら以上につらいのかもしれない。


 フロルは、幅2m深さ2m程の量の汚泥を収納出来たようだ。魔力的にも余裕があるそうだ。僕は、少し頑張ってフロルが収納した奥側幅2m奥行き5m深さ2mの量の汚泥を収納した。水を収納しないように気合を入れたけど、乾いた泥にはならなかった。その泥をリンジーが掘った10m四方深さ5m程の穴に移す。臭い。





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