第22話 錬金術式のコピー?

 ミラさんに資料室に連れて行ってもらい、資料室の受付でギルドカードを出すように言われた。言われた通りギルドカードを出すと、受付のおじさんがカードを機械?みたいなものに押し当てて返してくれた。ギルドカードの認証をしたのだそうだ。その時、僕の魔力パターンも一緒に調べているから他人のギルドカードで資料室の中に入れないようになっていると説明された。


「おじさん、資料室に錬金術の資料や錬金術室があれば見たいんですが、どこの辺にありますか?」


「小さいのに資料室で調べ物をすることができるなんてすごいねえ。おじさんが持ってきてあげるよ。君はそこに座って待っていなさい。」


 そう言うとおじさんが3冊の本と2本の巻物を持ってきてくれた。


「まずは、錬金術師の戦い方の本だな。冒険者になったのなら戦い方の勉強は大切だ。命を守る術を身に着けてから冒険に出ないといけないからな。それとこれは、冒険に役立つ魔法やスクロールの本だな。そしてこれは、錬金術の基礎という本だ。基本的なポーション類や武器のの素材が書いてある。少ないけど錬金術式も描いてあるから、描きとってみてごらん。術式構成が出来ようになったら、見ただけで錬金術式を作れるようになるんだけど、坊やにはまだ難しいかな?」


「ありがとう。初めてだから、何ができるか良く分からないけど、しっかり読んでみるね。これって貸出ってできるの?」


「お金がいるよ。本によって値段が違うけど、今持って来た中で一番高いのは、錬金術の基礎で、銀貨5枚が保証金だな。貸出料は銅貨1枚だよ。」


「分かった。一日で読み終わりそうになかったり、本を見ながら錬金したかったりのするときは、借りるかもしれないからね。でも、錬金術式が乗っていて素材も分かる一番大事そうな本が一番高いのか。まあ、そりゃあそうだよね。一番役に立ちそうだもの。」


「それじゃあ、おじさんはあっちにいるから、何か用事が出来たら呼んでくれな。あっ、そうだ、資料に書き込みをしたりしたらダメだからね。」


「はい。」


 僕は、おじさんの言いつけにしっかりと答えて資料を読み始めた。


『錬金術師の基本的な戦い方。錬金術師は、多くが身体強化のスキルを持つが、放出系の魔術スキルは持つことができない。その為、武器を使った戦い方かスクロールを用いた戦い方をすることになる。』


 錬金術師の戦い方の本を読み進めていくと、錬金術師って冒険者にはそんなに向いていないというようなことが書いてあった。町で工房を立ち上げて生活必需品や外に出る冒険者に必要な物を作ること。つまり後方支援こそ、真価を発揮する職業なのだそうだ。しかし、今まで錬金術師がS冒険者になったことも数多くあったそうだ。そのような伝説級の錬金術師の戦い方がこの本に書いてあった。簡単に言えば、武器の扱い方を学び、強くなるか、強力なスクロールを錬金できるようになって、魔法使いのような戦い方をするかのどちらかのようだ。ロジャーと一緒なら魔法使いの方が良いのかな。僕が強くなるのってかなり時間がかかるだろうし…。


 何しろ、剣術なんてやったことないし、この前ロジャーに教えてもらった剣の素振りも直ぐにバテてしまった。基礎体力という物が全くないのだから剣や武術の達人なんてなれそうにない。


 次に読んだ本は、冒険に役に立つ魔法とスクロールの本。僕は、錬金術師だから放出系の魔術はできない。だから、ここでしっかり読まないと入れないのはスクロールについて書いてある所だ。


 スクロールは、古代の魔法体形に基づいた魔道具で、基本ダンジョンのドロップ品だ。しかし、素材と錬金術式さえあれば、錬金釜で錬金することができる。僕のアイテムボックスの中で錬金できるのは試したから分かっている。問題は、強力なスクロールの素材と錬金術式があまり伝わっていないことだ。


 S級になった錬金術師たちのほとんどが武器の扱いに長けた冒険者だったせいもあるけど、強力なスクロールが少ないというのもある。強力なスクロールのドロップが極端に少ないことと、強力なスクロールの素材が多くてレアな物が多いこと、錬金術式が構築された物があまりないことが原因のようだ。それ以上にスクロールが使用したらなくなるというのが一番大きな原因だ。命とスクロールどっちが大事かと言うと命に決まっている。


 ロジャーと安心して冒険の旅を続けるためには、強力なスクロールの術式と素材をそろえる必要がありそうだな。それはそれで難しい気がする。ファイヤーやブリザードの術式は、このギルド資料室になくてもどこかにありそうだ。でもそれ以上に強力なスクロールとなると探すのに難儀しそうな気がする。


 戦いに使えそうなスクロールの種類をメモしながら本を読み進めていった。

『闇のスクロールは、命あるものの命を削る。光のスクロールは、命亡き者の瘴気を浄化する。ファイヤーのスクロールは、風のスクロールとともに用いると業火の効果をもたらす。ブリザードのスクロールとウォーターのスクロールで氷刃のスクロールとなる。』


「なんかスクロールの組み合わせって色々やってみると不思議なことが起こるかもしれない。」


「はい?何か御用でしょうか?」


 あれ、思わず独り言を言っていたみたいだ。


「いや、何でもないです。」


 錬金術素材図鑑を読む前に巻物から読んでみることにした。一枚目の巻物は、何これ?


 細かい錬金術式が何十何百という数、びっしり書き込まれている。そして透視図?オートバイみたいな形だな…。オートバイだ。しかも、自動運転できる物らしい。錬金術式も何が書いてあるのかさっぱり分からないし、素材も良く分からない。僕が聞いたことがない物の名前が一覧表になっていた。必要量とかも書いてあるから、素材一覧と思って良いだろう。


「おじさん。これ何?何が書いてあるのか全然分からない。」


「簡易コンロのスクロールの錬金術式のことかい?便利だと思ったんだけどね。魔獣の皮に描いたら一晩中使うことができるんだよ。」


「なんか、それと違うみたいなんですけど、オートバイみたいな図面が付いてる巻物の方です。」


「あれ?送風のスクロールと簡易コンロのスクロールじゃなかった?資料室にあるスクロールで初級錬金術師が作れるものはその位しかなかったはずなんだよね。ちょっと待ってすぐ行くから。」


 おじさんは、直ぐにやって来てその錬金術の巻物を見ると首をかしげていた。


「ごめん、ごめん。間違って持って来たみたいだね。冒険者になる錬金術師って錬金術よりも身体強化が得意な人が多いからね。武器の錬金術式もいくつかあるけど、全体として数は少ないんだよ。でも、こんなに複雑な錬金術式が書いてある巻物ってあったかな…。これってオートバイって言うの?錬金オートマンバイクって書いてあるけど、オートバイってオートマンバイクの略のことなのかい?」


「いや、そう…なのかな?全然読めなくて複雑な錬金術式だったから飛ばして読んじゃったのかな。でも、これって作れるようになったらすごいですよね。」


「そうだね。でも、こんなにたくさんの錬金術式を錬金釜に順番を間違えないように刻み込んでいくのってどれだけ大変なんだろうね。昔は錬金術が盛んな時があったみたいで、いくつかこんな複雑な錬金術式が残っているけど、術式を正確に発動できる錬金術師がいなくてね。ただのおとぎ話見たいなっているんだよ。実際、こんな魔道具、錬金できた人間がいたかどうかも怪しいと思われているんだ。」


「そうなんですね。あっ、それから、さっきおじさんが言ってた武器の錬金術式があったら見せてもらえませんか?魔鉄鋼を持ってるんで術式があれば作ってみたいんです。」


「武器の術式ね。分かった。じゃあ、そのオートマンバイクの術式は片付けておくね。」


「はい。もう少し錬金術のスキルが上がったらもう一度見せてもらって良いですか?」


「そうだね。スキルが上がったら、術式複写の呪文も使えるようになるかもしれないからね。」


「えっ?何ですか、その呪文。」


「その錬金術の基礎に描いてあるでしょう。他の人が術式構成した物を複写する呪文だよ。最初の方に書いてあったと思うから読んでご覧。術式複写ができるよになれば紙に書いてある錬金術式も複写できるようになるよ。そして、錬金釜に貼り付けるのも簡単になるからしっかり練習して使えるようになったら良いよ。」


「分かりました。早速読んでみます。」


 戦い方やポーションやスクロールよりも先に錬金術の基礎から読むべきだった。何事も基礎が大事だ。


 それから、ロジャーが帰ってくるまで錬金術の基礎の本を読んだ。何度も読み返してというより、術式複写の呪文を見つけて使ってみた。術式ならフォーミュラ・レプリカン。術式の図に手をかざして、声に出してそう言うと錬金術式がアイテムボックスの中にコピーされた。


 術式がフォーミュラでレプリカンが複写のことみたいだ。コピーじゃダメなのかな…。試してみよう。次に手をかざして、ページ全体を複写してみる。


「ページコピー。」


 やった。上手くいった。


 それからは、一ページずつアイテムボックスにコピーしていった。順番に一枚ずつだ。でも、とっても面倒だった。本丸ごと一冊コピーできないのかな…。錬金術の基礎の本には、攻撃魔法のスクロールがあるとは書いてあったけど術式までは掲載されてなかった。かなり複雑なのかもしれない。ページの最後の方に紹介程度に書いてあっただけだった。


 かなりの多くのページを割いてポーションとポーション瓶の解説が書いてあった。初級ポーションの材料とポーション瓶に刻まないといけない魔法陣についてやポーション作成の術式と素材。ポーション瓶の術式と素材は既に知ってる。でも、中級ポーションと上級ポーション、最上級ポーションの瓶の術式が描いてあったのはラッキーだ。


 さっき見せてもらったオートバイは術式コピーをしてみたけど何のことやらさっぱり分からなかった。素材なんかも書いてあったから、ページコピーもしておいた。巻物は、一枚扱いだからコピーが楽だ。


 今日持ってきてもらったすべての資料をコピーし終わった頃ロジャーが森から戻ってきた。素材を沢山取って来たって言っていた。宿に戻ったらもう一度錬金術の基礎を読み返してみよう。何か新しい物が作れるかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る