第21話 見習い冒険者登録?
僕とロジャーは、冒険者ギルドに向かって歩いていた。
「凛よ。お主に確認しおかなければならないことがある。」
「何?急にどうしたの?」
「お主は、この町にずっと留まりたいのか?」
「えっ?どういうこと?ロジャーは、しばらくここの町にいるんでしょう?僕も一緒だよ。」
「儂は、そうだな。期間は決めておらぬが、暫くはこの町にいようと思う。お前が独り立ちして、生活できるようになるまでここで過ごすかは分からんがな。少なくとも、お前が何とか生きていくことができる術を手に入れるまではな。住む場所や、生活の基盤が整うまでということだから、心配せぬとも大丈夫だ。しかし、この町を出ることにならぬとも限らぬ。その時は、お前もついて来たいかということを聞いておるのだ。」
「僕は、そうしたい。ロジャーが来るなって言うなら我慢するけど、この町で一人で生活するのは嫌だ。この世界に来た時からロジャーとはずっと一緒でしょう。ロジャー以外に知っている人なんていないんだよ。」
「分かった。そんなに悲しそうな顔をするな。別にお前を置いて行こうなどと思っておらぬ。ただ、旅は、危険だ。怖い思いもするやもしれぬ。幸いお前には、錬金術の才がある。この町で錬金工房に住み込んで働かせてもらうのも一つの道だと思ったのだ。お主は、それはしたくないのだな?」
「嫌だよ。僕は、この世界で冒険をしたい。ロジャーと一緒が良いよ。だから、一緒に連れてってよ。」
「それなら、丁度良かった。お前を見習い冒険者として登録しておけば、旅に出る時に手続きが簡単になる。見習いでも冒険者証を取っておけば、町に入る時の手続きが簡単になるのだよ。入場税もいらなくなるしな。ただ、見習いでも、登録料は必要だし、依頼をこなさないと登録が切れてしまうからな。冒険者ギルドの資料を見るだけなら俺についてきたってことにして、幾らか支払えば資料室に入れてもらえるとは思うのだがな。」
「それなら、見習い冒険者登録するよ。登録料はいくらか知らないけど、今なら金貨1枚までなら支払うことができるからね。」
「見習い冒険者の登録料はそんなに高くないと思うぞ。」
話をしながら歩いて行くと冒険者ギルドにはあっと言う間に着いた。
「今日は。今日は如何なさったのですか?ロジャー様向けの依頼はございませんが、森の魔物討伐の常駐依頼はいかがでしょうか?」
「いや、今日は、依頼を受けに来たわけではないのだ。凜に、錬金術師の才が現れてな。その資料を読ませてもらうのと、儂が、町を出る時に便利なように見習い冒険者登録をしておこうと思うのだ。ギルドには、献金術師の冒険者向けの資料もあるであろう?」
「錬金術師の冒険者の資料ですか…。あの…、この場では分かりかねますので、資料係に確認してまいりましょうか。」
「いや、もしも、錬金術師の資料がなくとも見習い冒険者登録はするつもりだから後ほどで良い。まずは、登録の手続きを頼む。」
「じゃあ、凜君は…、受付のカウンターじゃあ高すぎるね。お姉さんと一緒にこっちのテーブルで手続きしようか。」
僕は、お姉さんに手招きされてカウンターの中に置いてあるテーブルの席に座った。
「じゃあ、この申込書に名前を書いて。成人前の見習い冒険者登録だから職業欄は記入しなくていいわよ。年齢は?」
「11歳。ここに書いたらいいの?」
僕は、言われたところに異世界の数字を書き込んだ。レミは、しっかりと勉強をしていたようで、読み書きは不自由しなかった。
「凜君は、読み書きができるんだね。11歳で読み書きできるなんてすごいです。」
お姉さんに褒められて少しうれしかった。
「最後に魔力登録ですけど、カードに登録しますか?この町から出ないのならカードは必要ありませんから、登録料も安く済みますよ。」
「ねえ、ロジャー、どうしたら良いの?」
「カードを作っておいてもらえ。どうせ必要になる。カードを作って登録料はいくらになる?」
「見習い冒険者の登録でしたら銀貨1枚と銅貨1枚になります。」
「よかった。銀貨1枚と銅貨1枚だね。…、はい。」
僕は、アイテムボックスから銀貨1枚と銅貨1枚を出してお姉さんに渡した。
「はい。確かに受け取りました。凜君はいつもこんな大金持ってるの?」
「えっ?そ、そんなはずないじゃないですか。今日、練習で作ることができたスクロールなんかを買ってもらったからです。」
「それじゃあ、凜君の錬金術の腕前も凄いんだね。お姉さんびっくりだよ。」
「おいおい、そんなにからかうな。凜がどぎまぎしているではないか。」
「あら、そんなつもりはないのですよ。ほら、ギルドハウスには誰もいないでしょう。だから、つい、おしゃべりしすぎちゃって。本当に感心しちゃったんですよ。てっきりロジャー様が登録料を出すものだとばかり思っていましたから。」
「そうだったな。それは、儂がうかつだった。この町の治安はそう悪くはないようだが、こんな子どもが大金を持ってるなんて知れたらどんなことになるか分からぬからな。まあ、ギルドカードに大金をはたいてしまったということにしておいてくれ。」
「はい。仰せの通りに。ところで、この後資料室には、お入りのなるのですか?」
「どうする。凛。錬金術や錬金術式について調べてみるか?」
「ロジャーは、大丈夫なの?資料室で調べるだけだから、僕一人でも大丈夫だよ。済ませたい用事があるなら、済ませて来ても良いよ。」
「特に用事はないが…、ミラ…、だったかな。お主、この辺りで薬草の材料が採集できる場所を知らぬか?ついでにボアや毒袋を持つ毒蛇などが採集できる場所も教えて欲しいのだが。」
「そうですねぇ。町の南東広がる草原から森に向かって歩いて行けば全部採集できると思います。ただし、森の奥には狼の魔物も出ますから一人であんまり奥まで行かない方が良いですよ。ロジャー様でも目は二つしかありませんからね。採集中に死角から襲われたなんてことになりかねません。」
「そこは、十分心得ておる。だてに年は取っておらぬからな。」
「そうでございしましたね。とんだご無礼を…。ええっと、凜様には、この後、ギルドカードに魔力を流して魔力登録をして頂きますが、それは、確認しなくてもよろしいのでしょうか?」
「うむ。後は、頼んだ。では、凛よ。儂は、回復ポーションの材料を集めてくる。お主は、できれば回復ポーションの錬金術式を探してくれぬか?旅の役に立つ上に、そこそこ高く売ることができると思うぞ。いや、回復ポーションに限らず、全てのポーションの錬金術式を探しておいてくれ。その内に役に立つと思うからな。」
そう言うとロジャーはガルドをストレージから取り出した。
「ガルド、凜の護衛を頼む。護衛中は、凜に危険が及ばない限り凜の要望を聞いてくれ。頼んだぞ。」
「えっ?あっ、ロジャー、いってらっしゃい。」
「うむ。夕方には迎えに来る。」
ロジャーは、ガルドが頷き、指示を聞き取ったことを確認すると音もなくギルドハウスから消えてしまった。どうやったんだろう。気配を消してものすごい速さで出て行っただけ?
「ねえ、お姉さん。見習い冒険者?って資料室に入れることの他にどんなことができるの?」
「そうですね。見習い冒険者が利用できる施設は、資料室、訓練所、それに、一応、ギルドの食堂兼酒場もです。見習いでギルドの酒場を利用している子は見たことないですが、
そんな見習い冒険者事情を聴きながらギルドカードに魔力を登録した。
お姉さんは、そのカードを持って奥に入って行くと直ぐに出てきた。
「はい。冒険者ギルドカードの登録が終わりました。見習い冒険者の場合、2週間以上ポイントの獲得がないと資格が失効してしまいますから気を付けて下さい。その場合、再登録にはカード代金以外の初期登録代金、見習い冒険者は銅貨1枚ですが、発生します。荷持つ運びや清掃なんかでも良いから週に1つくらいは依頼を受けて下さいね。これは、安否確認の意味もありますから、必ず守るように。町を出る場合は、行先の届け出をしてもらえれば、失効期間が伸びますからね。行先のギルドで依頼を受けても大丈夫です。見習い期間で受けることができる依頼はRランクまでです。ギルドメンバーの荷物運びなども依頼としてカウントされますが、必ず依頼書が必要になります。ギルドを通さない個人間の契約は、ギルドポイントの対象になりませんからね。気を付けておいてくださいよ。何か質問はございますか?」
「いいえ。特に、ありません。自分で何か依頼を達成しないといけないのですね。でも、まずは、資料室で調べたいことがあるので、どこにあるのか教えてもらえますか?」
「はい。ご案内いたします。」
こうして僕の見習い冒険者?はスタートした。
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