第13話 これって?ええっ!

 ガルドが僕の体を揺すっている。外は十分明るくなっていた。


「お早う。また寝ちゃってたね。そうだ。道具屋さんに行かなくちゃ。」


 僕は、ガルドを引き連れて道具屋に向かった。道を歩く人は、ガルドを見て少しびっくりしてたみたいだったけど、騒ぎになることは無かった。


「お早うございます。」


 昨日の、道具屋にいって挨拶をする。


「今日も来てくれたんだな。宜しくな。」


「今日は、何を作ったら良いですか?」


 昨日の夜、魔力病の治療をして魔力は殆ど空っぽになったけど、今朝は既に満タン状態だ。中級のポーション瓶位なら何十本でも大丈夫だと思う。


「お主が作ったポーション瓶は評判が良くてな。薬師たちがまとめて買って行ったぞ。売り切れだ。今日は、初級ポーション瓶を50本からだ。大丈夫か?材料は、これだ。計っておいてやったからそのまま入れれば良いぞ。」


「有難うございます。これ全部入れればいいんだね。それで50本だね。よーし。」


 僕は、測ってもらった材料を全部錬金釜に入れて魔力を流した。


『ポポポ……ポポン』


「できました。」


「よし。待ってろ。チェックするからな…。1、2、3、4…48、49、50。よし、歪み無しで傷無し、魔法陣良しだ。これで銅貨5枚だな。次は、中級ポーション瓶だ。錬金式を書き直すから待ってな。」


 道具屋の店主さんが術式を書き直している時にお客さんが来た。


「おっ、丁度ポーション瓶を作ろうとしている所か。ちょうど良かった。初級ポーション瓶を100本と中級ポーション瓶を100本くれないか。さっき、知り合いにあったらここで買ったポーション瓶がとっても良かったって教えてもらったんだ。」


「初級ポーション瓶が50本なら今で来たばかりのがあるぜ。後50本は、今日は無理かもしれないな。今から、中級ポーション瓶を作るから待ってくれたら売ることはできるぜ。」


「じゃあ、初級50本で良い。見せてくれ。中級は、出来上がったのを見てからだな。気に入れば買うって言うことで良いか?前もって買うって言っておいて粗悪品掴まされたら嫌だからな。」


「へいへい。まず、初級を持ってくる。さっき、買ってった薬師が気に入ったって言ってくれたものだ。まあ、目利きしてみな。気に入るはずさ。」


「じゃあ、見せてくれ。…、うむ、ほほう。中々丁寧な仕事だ。かなり精錬式を丁寧に書いたんだろうな。これは良い。気に入った。後50本欲しかったな…。」


「まあ、明日も作れるはずだからな。また来てくれ。さあ、次だな。中級か…。さっき術式は書き換えたからな。まず試作だ。」


 店主が1本分の材料を入れて作ってみるようだ。魔力を流して…。

『ブボン』


 なんかちょっと変な音がした。

「ありゃりゃ。術式を急いで書き換えすぎたか…。おい、坊主。」


「ん?僕のこと?」


「そ…、そうだ。お前だ。この式で1本作ってみてくれるか?」


「う…、うん。材料は?」


「今から1本分入れるからな。…、良し。作ってくれ。」


「分かった。」


 錬金釜に魔力を流す。昨日と同じように所々引っかかる場所がある。引っかかる場所ではちょっと強めにしてできるだけ均等に魔力が回るように…。よし、そうだ。


『ポン』

「できた。」


「チェックするから待ってろ。…。良し。じゃあ、ここに100本分の材料がある。これで100本の中級ポーション瓶を作ってくれ。」


「分かった。」


 僕は、袋に入れられている材料を全部錬金釜の中に入れていった。少し重い。苦労して袋を開けて錬金釜の中に移してていると、店の中から話し声が聞こえてきた。


「お客さんが欲しいのはどっちだ?」


「そりゃあ、こっちに決まっておるだろう。今から作るのは、そっちだろうな。」


「そりゃあそうさな。あんたが選ばなかったのは、術式のゆがみをチェックするために作った試作品だよ。ちゃんと目利きできるか試したかったのさ。こっちは、1本銅貨2枚だが、それでも大丈夫かい?」


「順当な値段だな。もう少し吹っ掛けられるかと思ったぞ。それをできれば200本欲しいのだが作れるか?」


「200本もか…。ちょっと待ってろ。裏に行って材料の在庫があるか確かめてくる。」


 へえ…、この店の中級ポーション瓶って銅貨2枚もするのか…。僕も早くそんなに高い値段で売れるようなポーション瓶を作れるようになりたいな。さあ、頼まれた瓶を錬金しよう。慎重に…、滞る場所では強く…均一になるように…。

「ムムムムッ…。」


『ポポポポポ…………ポポポポン』


「おじさん。できたよー。」


「んぬ?どうした?」


「あれ?この店のおじさんは?」


「ああっ、裏に材料を確認しに行くと言って出て行ったぞ。」


 お客さんと話しているとおじさんが店の奥の方から出てきた。


「おっ、坊主どうした?」


「おじさん。できたよ。チェックお願い。」


「お客様だ。工房に行って、待ってろ。直ぐに来る。」


「はーい。じゃあ、先に行って待ってるね。早く来てよ。」


「分かったから先に行ってろ。」


「でどうだ?200本分はありそうか?」


「大丈夫だ。直ぐに作るが、出来上がりを待ってるか?後20~30分はかかると思うから、別の用事を済ませて来てもらっても良いぞ。」


「20~30分か。…、商品を見せてもらいながら待ってるよ。出来たら声をかけてくれ。」


「わかった。では、ごゆっくり。」


「あんたは、急いでくれよ。」


「まあな。」


 遠くで、そんな声が聞こえていた。


「おじさん。僕がまだ作って良いの?」


「おっ、おお。まだ作って良いぞ。後100本は作れるか?」


「うん。この術式の癖は分かったからすぐできると思うよ。」


「ほほう。頼もしいな。では、200本にするとどうだ?100本ずつの方が良いか?」


「大丈夫だよ。魔力に余裕はあるから。」


「じゃあ、200本分をまとめて入れるからな、さっきのポーション瓶は、お前が作っている間にチェックしてやるから安心しな。」


「うん。じゃあ、ササっと作って錬金釜を開けるね。あのおじさんが待ってるんでしょう?おじさんのポーション瓶。」


「ん?おお。そうだ。そうなんだ。でも、慌てないで良いぞ。傷があったり歪みがあると買い取れないからな。」


「はい。」


 僕は、魔力が均等になるように調整しながら頑張った。3分程で200本のポーション瓶は出来上がって、今おじさんにチェックしてもらっている。全部合格なら、鉄貨1601枚分だ。ええっと銅貨で160枚と鉄貨1枚。ということは、10で割って銀貨16枚だ。凄い沢山になった。


「うむ。全部合格だ。銀貨、17枚だ。頑張ったからオマケだ。ありがとうよ。」


「ええっ…。そんなにもらって良いの?」


「おお。いいぞ。頑張ったからな。…。でも、こんなにたくさん子どもが持つのは危ないな…。お前、アイテムバッグか何か持ってるか?まあ、お前みたいな子どもがそんなの持ってる方が危ないか…。とにかく何か入れるもん持ってたら大事に入れとけよ。落としたり盗られたりするんじゃねえぞ。おじさんちょっとお客さんと話してくるから、お前は、この金を大事にしまって持って帰るんだぞ。分かったな。」


「わっ、わかった。大事にしまう…。」


 そんなに言われても銀貨17枚ってどこにしまえばいいんだ。片手に持ってたら落としそうだし、両手に銀貨を17枚なんて持ってたら、変てこな歩き方になっちゃうよ。


 僕は入れることろを一生懸命探してみた。アイテムバッグなんて持ってないよ。


 アイテム…、何かアイテムないかな。おじさんに袋か箱貰えばよかった。アイテムバッグはないけど、袋は何だろう。エコバッグなんて言うから、バッグなのかな箱はボックス…。箱か袋が落ちてないかな…。アイテムバッグありませんか?アイテムボックスありませんか?


「アイテムバッグ、アイテムボックス…?あれ、何、この目の前の空間。」


 手を伸ばすと、手の中の銀貨だけが消えた。


「えええっ。」


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