第9話 これはギルド依頼?
「おう。目が覚めたか。では、朝食に向かうとするか。」
「ロジャー、待っててくれたの?」
「いや、朝飯前のいつもの日課をこなしていただけだ。それをやらぬと、ちと調子が悪いのでな。」
いつもの日課って言うのは良く分からないけど、気にしてもしょうがないから、一緒に食堂に行くことにした。
「お早うございます。ずいぶんのんびりですね。冒険者の皆さんはもう、ギルドの方に出かけられましたよ。朝一番じゃないと良い依頼は手に入らないっておっしゃってね。」
「まあ、そうかもしれぬな。しかし、今日は、依頼を受ける気はないのだ。昨日、ギルドにいくらかの素材を下ろしておるからな。その代金を貰って、町を少し見て回ろうと思っておる。」
「そうなんですか。そりゃあ、余計なことを言っちゃいました。すみませんね。」
「なーに。気になどしておらん。さっ。飯の準備をしてもらおうかな。」
「今日は、パンとスープそれにドウドウ鳥の卵の料理にサラダです。果物もありますからね。ありゃ、もう、あまり残ってませんが、好きなだけお食べ下さい。」
「うむ。頂こう。凜よ。好きなだけ取ってくると良い。儂も好きなだけ食べるからの。」
「うん。」
今朝はお腹も張っていないし、痛くもない。沢山食べることができるはずだ。昨日の夜は、あまり食べてないから、お腹が空いてる。
パンを一つと、スープをなみなみ注いで、サラダの横に卵料理を乗っけて果物も3切くらいとってきた。僕としては、最高記録の山盛りのつもりだったけど、ロジャーは、卵を一皿、サラダを一皿果物も一皿でパンは山盛り取ってきた。そんなに食べて大丈夫なんだろうか?ロジャーも宿も…。
一時間位かけて、朝ご飯を食べて、冒険者ギルドに向かった。今日は、お腹いっぱい食べたからお昼にお腹空いたって言わないで良いと思う。
「いらっしゃいませ。ロジャー様。昨日の査定は終っております。預かり証と引き換えになりますが、今日は、お持ち頂ておりますか?」
「うむ。ここに。」
ロジャーが預かり証を手渡すと、ミラさんが袋に入れた代金を持って来た。
「こちらが引き取り額になります。フォレストウルフの皮が全部で32枚でしたが、傷が多く査定ランクが下級のものが8枚。中級が4枚、最上級が20枚でございました。」
「下級ランクの毛皮が銅貨5枚。中級ランクの毛皮は銀貨2枚。最上級ランクの毛皮は金貨1枚で買い取らせていただきますが宜しいでしょうか。」
「うむ。宜しく頼む。」
「では、こちらが代金でございます。下級品が8枚で銀貨4枚。中級品が4枚で銀貨8枚これで、金貨1枚と銀貨2枚になります。それから最上級ランクが20枚ですから、合計金貨21枚と銀貨2枚でございますね。ご確認ください。」
「それでなのですが、冒険者登録のお話になるのでございますが、ギルマスの方から、この毛皮をすべて当ギルドに卸して頂けるのであれば、登録料はいらないと言われておりまして。毛皮は全て卸して頂けるということで宜しいでしょうか。」
「代金まで確認しておいて今更卸さぬなどと言うはずがないであろう。では、無料で冒険者登録をしてくれるということなのだな。」
「それでで、ございますが、もう一つギルマスの方から申し出がございまして、後1体分の皮でも宜しいので、フォレストウルフの皮を治めていただきましたら、Bランクで登録させて頂きたいということなのですが…、フォレストウルフの討伐、お願いできますか?」
「別に、Bランク登録は必要ないが、フォレストウルフの討伐は引き受けても良いぞ。出現場所と群れの大きさが分かっておるのだろう?」
「はい。では、ギルド依頼の手続きをさせて頂きます。契約書にサインをお願いしてよろしいですか?」
「うぬ。う?この場所は、凜が襲われて居った場所ではないか?」
「ここには、10体の群れと書いてあるが、あの時には、40体以上いたと思うがな…。それに、その群れは…。」
「おい、ミラ。この討伐依頼の情報はどのくらい前の物なのだ?」
「えっと、少々お待ちください。確認してまいります。」
ミラさんは、ギルド事務所の奥に入って行って書類を調べているようだった。
「確認してまいりました。この依頼が初めて持ってこられたのは、3週間前、依頼主は、この町の商業ギルドだったようです。その後、いくつかのパーティーが請け負いましたが、会敵しつつも討伐に失敗しております。また、数回、町の近くの森の出口辺りにも出現し、初心者パーティーが全滅するという事故も起こっています。ですから、指定された場所辺りに住み着いているのは、間違いありません。」
「そうか。昨日の、フォレストウルフの毛皮は、その群れの物だ。しかし、その群れは、フォレストウルフだけではなかったぞ。」
「と言いますと?他の魔物と同調していたということですか?」
「上位種が率いていた。シロッコに率いられた群れであったぞ。」
「シロッコ…、少々お待ちください。その魔物を存じ上げず、ギルマスに聞いて参ります。そして、そのシロッコは何体いたのですか?」
「儂が確認したのは、1体だけだ。金色の毛並みの魔物だよ。確認してくると良い。」
「はい。少々お待ちください。」
「のう、凜、何か面倒なことになってきたな。あんまり時間がかかるようなら、明日出直すことにしようかの。お主の家臣が稼いだ金も手に入ったことだし、これからのこともあるからの、ちと買い物をしたいと思っておるのだがな。」
「お待たせいたしました。ギルマスとお話しいただけますでしょうか?」
「この子も一緒に良いか?」
「はい。大丈夫でございます。」
僕たちは、冒険者ギルドのギルドマスターの執務室っていうところに案内された。そこで、ロジャーがシロッコを見た時の話をしたんだけど、ギルマスは、頭を抱えてしまった。
「シロッコと言えば、Bランクの魔物ではないか。討伐依頼をするならBランク以上のパーティーか…。こんな小さな町にBランク以上のパーティーなどいるはずがないだろう。」
「おい、ギルマス。そのシロッコの討伐は、Bランク冒険者じゃ依頼できないのか?」
「一人で討伐するのなら最低でもAランクだろう。オマケに、フォレストウルフの群れも連れているのだぞ。どう考えても、Bランク以上の複数パーティーに依頼するギルド案件だろうが。」
「それならば、先ほどのフォレストウルフを討伐してくれば、無料でBランク登録というのは無くなったのか?」
「それは、また、別じゃ。別にこの依頼の場所でなくても良い。フォレストウルフを狩って来てくれれば、Bランク認定じゃよ。」
「では、フォレストウルフの討伐依頼は、受けたということで良いのだな。期限は?」
「依頼の場所はシロッコが率いているのであれば、ウルフ探しからせねばならぬからな。1月でどうじゃ。チトきついか?」
「いや。かまわぬよ。では、期限だけ書き換えた契約書を作ってくれ。サインをしたい。」
「ミラ。契約書の作成を頼む。では、ロジャー殿、また、最上級の毛皮を卸してくれよ。」
「心得た。」
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