第7話 ここが街?
「ロジャー、お腹空いたよ。もうすぐお昼だよ。」
「そうだな。もうすぐお昼になる。足が疲れたのか?回復ポーションを飲むか。しかし、お主は、魔力病だからな回復ポーションは、あまり飲まない方が良いのだぞ。」
「足は大丈夫だよ。全然痛くない。でも、もうすぐお昼だよ。お腹空いたから、お昼ご飯にしない?」
「お昼ご飯?何だそれは?」
「お昼ご飯は、お昼に食べる御飯だよ。決まってるじゃない。」
「こんな森の中で御飯など食べていたら、魔物に襲われてしまうではないか。いくら何でも不用心という物だぞ。」
「ええっ。でも、おな空いたら歩けなくなるよ。」
「だから、朝、たくさん食べておけと言ったではないか。お主が直ぐにお腹いっぱいなどと言うからこういうことになるのであろうが。」
「だって、あの時はお腹いっぱいだったし、今はお腹空いてるんだからしょうがないじゃない。」
「しょうがないっていっても、こんな所で御飯などは作れぬぞ。さっき、取ってきた、果物でも食べながら歩くのだ。喉の渇きも癒されるだろうからな。」
「それ、それが欲しかったんだよ。そんなに怒らないでくれてもいいじゃない。」
「うむ…。まあ、良い。食べながら歩くのだぞ。しばらくの間ゆっくり歩いてやるから。ほれ。」
さっき取ってきていくれた紫色の果物を手渡してくれた。かじると甘い果汁が溢れて来て口の中に広がった。
「美味しい。これ、甘くてお汁が一杯で。これって何て言う果物なの?」
「それか、なんと言ったかな…。フォレストペアだったかな。梨だ。山梨。」
「へえ。この紫色が梨なんだね。なんか不思議だね。」
「何が不思議なのかわからぬが、不思議なのか。面白いか?」
「うん。面白いよ。僕ね。森の中歩いたの初めてかもしれない。どこかに出かけてもすぐに熱を出したり体が痛くなったりしてたからさ。」
「そうか。楽しいか。それは、良かった。もう少し、楽しいまま歩いてくれ。森を出たら、他の移動方法もあるからな。」
それから2時間位歩くと森を出ることができた。森の外には細い道が伸びていた。
「ようやく道に出たな。ガルド、ご苦労であった。ストレージで休んでくれ。」
ロジャーは、ガルドをストレージに入れると古いかなりさびている二人乗り用の自転車?みたいなものを取り出した。
「自転車じゃない。凄い。この世界にも自転車があるの?」
「久しぶりに出したな。壊れていなければ良いのだが。」
ロジャーは自転車にまたがると、僕に後ろの座席に乗るように手招きした。
「えっ?後ろに乗って良いの。」
「うむ。しっかりつかまっておるのじゃぞ。ちょっと試運転をしないといけないからな。ゆっくり走るが、油断するな。この道はそうなだらかではないからな。」
ロジャーが走り出すとすごく揺れた。全然ゆっくりじゃなかった。父さんの車よりも速いかもしれない。でも楽しかった。ガタガタ揺れる後ろの座席ですごい勢いで後ろに流れていく景色に見とれていた。
この世界は、とってもきれいだ。
「ロジャー、速いね。とっても速いよ。」
「怖いか?」
「少しね。でも、面白いし、楽しい。」
「そうか。では、この位のスピードで走って行こうかの。」
自転車を襲ってくる魔物もおらず、時々見かけた魔物は、自転車のすごく後ろの方にしか近寄ってこなかった。
「ボアがいる。今日の晩御飯にするか、肉と魔石を売って宿代にしようかの。ちょっと狩りをするから、しっかり掴まっているんだぞ。」
ロジャーは、ハンドルと車体をボアが見える方に傾けるとストレージから槍のようなものを出して、投擲した。槍の角を生やしたボアはその場に崩れ落ち、自転車で駆け寄ったロジャーのストレージに収納された。
「この大きさのボアであれば、銀貨2枚程で買い取ってもらえるだろう。町まで後20分位だからな。もうしばらく掴まっておくのだぞ。」
そのまま、道に戻って駆け抜けて行く。町に着いたのは、ほんのしばらく後だった。太陽が沈む前で、町には人が溢れていた。ロジャーは、冒険者ギルド入り口まで自転車で乗り付けると、扉を開け、中に入った。ギルドの中は人はそう多くなかった。
「
「はい。買取はこちらのカウンターです。」
「まず、さっき仕留めたボアなんだが、血抜きは終っておらぬ。まだ、暖かい奴だ。これから査定を頼む。」
「あら、本当に暖かいでね。今から血抜きをして間に合うと思います。ベン!急いでこのボアを処理場に運んで頂戴。」
「はーい。」
係の人がボアを受け取って奥の方に運んで行った。
「あっ、お名前を伺っておりませんでした。失礼しました。私は当ギルドの買取受付をしておりますミラと申します。失礼ですが、お名前を教えて頂いて宜しでしょうか。」
「ロジャーだ。宜しく頼む。」
「ロジャー様ですね。よろしくお願いいたします。あの大きさのボアでしたら、素材を解体した後なら銀貨3枚は固いと思いますが、即金でしたら銀貨2枚ですね。」
「そうか。では、このフォレストウルフの毛皮だといくらで買い取ってくれるかの?」
ロジャーが30体分くらいの狼の毛皮を出した。
「これは、すごい数ですね。傷が多い物もありますが、小さな傷しかない物ものたくさんあります。難しいです。全ての皮の査定が終わるまで1時間ほどかかると思いますが…。ざっと見ですが、金貨2枚はお支払いできると思います。これを即金は無理です。ここで1時間ちょっとお待ちいただくか、明日来て頂ければ買取できます。」
「そうか。今、手持ちがないものでな。それに、これから宿を取りに行かねばならない。では、ボアを銀貨2枚で買い取ってもらって、この狼の毛皮はの代金は明日受け取りに来るということで大丈夫か?」
「では、素材の預かり証をお渡ししますので少々お待ち下さい。あの…、冒険者証をお持ちでしたら、カードに振り込むこともできるのですが…。」
「冒険者カードか…。昔は持っていたんだがな…。今はなくして持っていない。新たに作ることはできるか?」
「銀貨1枚が必要ですが…。」
「では、明日だな。預かり証をくれ。明日、冒険者登録も行うことにする。」
「では、少々お待ちください。」
しばらく待っていると、ロジャーの名前が呼ばれた。預かり証と銀貨2枚を受け取ったロジャーと僕は、冒険者ギルドで聞いた、今晩の宿を探しに町の中に出て行った。
「旅の止まり木亭、ここだな。」
手ごろな値段、一泊銅貨1枚で一人分。夕食朝食を付けても銅貨1枚と鉄貨5枚の格安の宿。子どもと二人なら銅貨2枚で食事を付けてくれるということだった。ギルドに紹介してもらった宿だ。
「
「冒険者ギルドの紹介なら大丈夫さ。5日分で銀貨1枚だ。先払いだが大丈夫か?」
「そう聞いている。まず、銀貨1枚だな。宜しく頼む。」
ロジャーは、銀貨1枚を支払い、部屋の鍵を受け取った。
「2階の奥から2番目の部屋だ。夕食は、1階の食堂で食べてくれ。大したものはないが、腹いっぱいにはなると思うぞ。」
「おう。ありがとう。早速部屋に行かせてもらう。湯あみをしたいのだが、お湯とタオルはいくらで貸してくれんだ?」
「水浴びなら、中庭の井戸でいくらしてもらっても良いぞ。タオルはサービスだ。お湯が欲しいのなら、銭貨2枚でサービスしている。」
「お湯を頼む。子どもが体が弱いのでな。俺は、お言葉に甘えて庭で水浴びをさせてもらう。」
「おう。好きにしな。タオルは部屋に置いてある。でも、ちゃんと返すんだぞ。サービスって言っても貸すだけだからな。」
「分かってるよ。ありがとうな。」
軽口をたたきあい部屋に上がってくロジャー。旅慣れているんだな。僕は黙ってロジャーの後ろをついて行った。部屋は思ったより清潔だった。しばらくして女の子がお湯の入った桶を持ってきてくれた。
ロジャーにタオルを渡された。ロジャーもタオルを持って下に降りて行った。僕はロジャーに渡されたタオルをお湯で濡らして体を拭いて行った。何度も…。髪は、洗わなかったけど埃は髪を拭いた時に取れたと思う。お湯で体をふくとさっぱりした。かなりべたべただった。
持ってきてくれた桶のお湯が濁っている。僕の体って本当に汚れていたんだな。
「どうだ、きれいになったか?」
白い髪と髭を濡らしたロジャーが部屋に戻ってきた。
「うん。さっぱりしたよ。でも、お風呂に入りたいな。久しぶりにさ。」
「お貴族様か!」
良く分からない突っ込みをされたけど、スルーして二人で食堂に向かった。食堂での食事は、パンとサラダとスープに焼いた肉が一皿だった。パンとスープはお替り自由ということで、ロジャーは、3杯くらいお替りしていた。パンも5枚くらい食べていたな。僕は、一皿ずつが精いっぱいだった。少し、お腹が痛くなってきたからね。
食事が終わって部屋に戻ると昨日の魔力病の治療を行った。お腹が痛くなっていたのが良くなって、少しお腹が空いてきた。こんなことなら、夕食の前にしてもらっておけばよかった。
そして、ベッドに入った。多分まだ夜になったばかりだと思うけど、ベッドに入ると直ぐに眠くなった。
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