第15話
聞いて、和希。
葉佑くんはね、和希のことを悪者扱いした彼らに、こう言ったんだよ。
彼らとも友達だし、和希とも友達なんだ。彼らにも、和希と友達になればいいって。
もしかして和希は無責任だと思うかもしれないね。だけどね、和希。その無鉄砲な提案が、僕には希望に聞こえたんだ。
「どうせ、口だけ」
「そうかもしれないけど! だって俺には、お兄さん見えないし、幽霊なんて超常現象、俺、今まで体感したことないし」
和希は反論することもしないで、ただ葉佑の言葉を聞いていた。
「それでも、信じるよ! 見えるとか、見えないとかじゃなくて。和希がそう言うんなら、そういう世界もあるんだろうなって」
目は合っているけれど、和希は表情一つ変えないで、ただ葉佑を見ていた。
「見えなくても、信じることはできるだろ! ああ、お兄さんは和希のこと、大切にしてるんだって、分かるじゃん! 今だってきっと、和希のこと、大好きで大事で、見守ってるんだろうなって、思うよ!」
和希が聞いているのかなんてそっちのけで、葉佑はただ和希に言葉をぶつけた。
「だからもう、誰も分かってくれないなんて思い込み、やめろよ!」
…そうだよ、和希。
今まで、君の回りには酷い人しかいなかったかもしれないけど。今目の前にいる葉佑くんは、違うんだよ。
僕がどれだけこの時を待っていたのか、和希に分かる?
体が風に巻き上げられるように軽く感じる。大地から解き放たれるように、少しずつ足元から光に溶け込んで、形容しがたい多幸感に包まれていく。
――ああ、どれだけこの時を、待っていただろうか。
「兄さん…どうして……?」
目の端で、淡い光が空へ空へと、溶け込みながら舞い上がっている。
こっちじゃないよと笑っても、きっと和希には届かない。
「和希! 危ない!」
「行かないで、兄さん! 僕を置いていかないで!」
僕が最後に目にした光景は、しがみつくように和希を抱きしめる葉佑くんの姿と、葉佑くんの腕の中で泣きじゃくる和希の姿だった。
青の軌道~ベストフレンドフォーエバー~ 巴瀬 比紗乃 @hasehisa
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