第5話 腐女子にはつらい話。
あ、暑い……。でも脱いだら焼ける……。
五月にしては高い気温の中、私は長袖長ズボンで校庭に出ていた。
それは何故か。
「イチニ、さんはい!」
♪(音楽)~~
これは、体育祭のダンス練習の様子である。
うちの高校では、応援合戦という名の組対抗ダンスバトルがある。
今日からテスト期間を除いた一ヶ月、それの練習を、朝のホームルーム前と昼休みに行うのだ。今は昼休み、日が照りつける中でのダンスである。吹奏楽部にはつらい。
え? 半袖半ズボンでやれば良いって?
いくら私が化粧しない人種だからってね! 将来のお肌のことは考えるんですー! シミ作りたくないんですー! 日焼け止めあんま信用してないし! 安いやつだから!
……うん、まあダンスの他に選択肢はあるんだよ。
アート部隊って呼ばれてて、めちゃくちゃデカイ板に絵を描くやつ。
でもね! 私ダンスやりたかったの!……上手く踊れる訳じゃないけど。
吹奏楽部って演奏の時に、演出で少し踊ったりすることがあるんだけど、それ、一番出来が悪いのが私。
球技とかはそこそこできる。ただ、自分の体動かすやつ、……器械体操とかそういう系! は、からきしです。
でも、良いじゃん! やりたかったら、やるのが正義!
あ、透香はダンス得意だけどアート部隊行きました。
でも絵もめちゃくちゃ上手だから、戦力になるんだろうな。
組は、赤組、青組、黄組、緑組の四つ。
私と
「もう一回! イチニ、さんはい!」
指揮を取るのは青組のダンス部三年生。体育祭にはダンス部門の賞もあるから、熱も入るよね。
でもさ、今日、練習初回じゃん。まずは体慣らしからにしよーよ。まだ全然動けないっす。
* * *
「あー、あぢいー」
「声おじさん?」
「うるさいなあ」
練習が終わり、昼休みもあと十分。透香も作業が早く終わっていたのか教室に戻っていた。
他の組の人はまだ教室に到着していないようだ。
「ん?」
自分の席に戻り、スマホを開くとLIMEが一通届いていた。
こいつは二年連続同じクラスで、わりと話す男子。バスケ部での愚痴を聞いてやるくらいには仲が良いと思っている。
だが、LIMEなど滅多にしない。どうしたのだろうか。
私は恐る恐るメッセージを見た。
『あの、えすみかのんさんって知り合いだったりします?』
うん、めちゃくちゃ知り合い。なんなら仲良し。サックスの仲間です。
『知ってるけど、どうしたんすか』
そう返信すると、間もなく通知音が聞こえた。
『一目惚れしました。どうしたら良い?』
オウ、ジーザス。
なんだこの少女漫画的展開は!
古池が一目惚れだと? しかも私に恋愛相談だと?
二人とも黄組だよな? ダンス練習で
色々突っ込みたいが、まずこれを古池に捧げよう。
恋愛経験ゼロの私に聞くな。
次に、これ。
奏音はきびいっす。
彼女は、これっぽっちも恋愛に興味がない。部活と勉強どちらもとことん頑張るタイプで、恋愛に割く時間がないのだろう。
一年の時、クラスの男子に告られたがこっぴどく振ったと聞いた。……こっぴどくは言い過ぎだったかも。ごめん、奏音。
私の知り合いの中でもトップクラスに難しい人に惚れてしまったんだな、古池よ。可哀想に。
『一旦待て。作戦を練る』
絶対大変なの分かってるのに、私はなぜ首を突っ込むのでしょうか。
そうだね、私がお節介焼きなのがいけないね。
でもさ、それを知ってて頼ってくるこいつの方が、もっとたち悪いよね。
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