第4話 腐女子は繋がりたい話。

「彼女いるのかなー」


 朝練が早めに終わり、いつも早めに来る透香とうかと教室に二人きり。こういう時こそ腐トーク! と、思ったのですが。

 最近すごい悩んでたからか、声に出ちゃったみたいです。テヘペロ。


「え? ガチ恋?」


 朝からギリ18禁かかってないくらいのBLマンガ読んでるの、あなたしかいないだろうな。


 あと毎回ガチ恋か聞くのやめてくれ。絶対ないから。


「違うよ。やっぱさ、彼女いると申し訳ないじゃん―――」


 透香は『あー、そういうこと』という顔をした。

 三次元で腐を感じる者であるなら、誰もがぶつかる壁ではなかろうか。


「―――BL考えるの」


 まあ申し訳なさというより、BのLを想像するときに彼女の存在がちらつくのがつらいんだがな。ははは。


「じゃあイソスタ繋がれば? もし彼女いるなら、ストーリーとかに上がるんじゃない?」


 な! 何を言うか透香殿!


「なんでこっちから彼女の存在見つけにいかなきゃいけないのさ! 知らないままが一番!」


 こちらとしては彼女はいない方が嬉しい。だからわざわざ確認することないのだよ。


「普通にBL供給あるかもよ?」


 え、……確かに。友達と遊んでるよーみたいなストーリーだったら、絶対スキンシップ取ってるはず。超絶見たい。拝みたい。


 ……でも。


「や、無理っす」


「なんで」


「気まずい」


 流石に、こればっかりは、人見知りしない仮面被ってる私でも、ちょっと勇気がいりますわ。


「じゃあクラス全員フォロリクすれば?」


「……あーね?」


 的を絞らせない、というのは良いかもしれない。


「でもさ、今更って感じしない? クラス替えしてから一か月も経ってるよ?」


「何うじうじ言ってんの。スマホ貸して」


「え! ちょっ!」


 透香にスマホを引ったくられて大焦り。


 なんと! ミズホちゃんは、イソスタを開きながら話していたのでした! 勝手に操作され放題スマホです!


 絶対柿ピーのフォロー欄から探してるでしょ……。

 なんでかって? そりゃ柿ピーもクラスでは……うん、何て言うのかな。



「はい、クラスのほぼ全員にフォロリク送ったから」


「え! ねえちょっとヤバいって!」


瑞穂みずほだから大丈夫」


 なんだその理論。


 透香は一仕事終えたとばかりに、なっさんのオレンジジュースをごくごく飲んだ。



「そーいえば、透香さんは何読んでらっしゃる?」


「オ○ガバース」


「ちょ、声でかい! あと画面見せんでいいよ! 隠しながら読め!」


 と言いつつ、ちゃっかり読ませていただきます。


 おお、人外ものだ。わー、わー! この表情たまらんな!


「瑞穂、顔」


「え? ヤバい?」


 言われてみると、確かに色々緩んでた気はする。


「やっぱ学校で読むのはダメだわ。脳がBL脳になっちゃって、正常に生活出来ないわ」


「じゃあ少女マンガでも読んで、脳ミソそっちに変えれば?」


「なんで?」


「瑞穂も少女マンガ的高校生活送れるかもよ」


「いや絶対ねーよ、悲しーよ」


 もしかしたらあるかもしれないけどね。……いや嘘。ないね。あー、泣ける。






 昼休み。購買並び中。


「あー、今日の午前も尊いが溢れてました」


 ……え? 透香さん無視? 完全無視じゃん。ちょっとは反応してよ。

 しかもね? あんなに言ったのに、透香ったらまだ藍沢あいざわくんの笑顔見てないの。めちゃくちゃ人生損してるって!


「フォロリク返ってきた?」


「あ、そういえば」


 透香に言われなかったら、もう今日はイソスタ開くことはなかっただろうよ。


「わ、めっちゃ来てる」


 何人ものフォロリクが表示された。なんか怖い。透香マジでほぼ全員に送ってるじゃん。


「藍沢くんは……あ! いた!」


「お」


 うお、アイコンハイ○ュー!!じゃん。アニメ見るんかな。

 いやいかん。騙されるな。少年マンガだぞ。


 と謎の自問自答をし、全員のフォロリク通してミッションコンプリート。


「ストーリー上がってる?」


「うん、ある」


 ……はあ!


 昨日の夕方のやつですね。写真です。バレー部のお友達と肩組んでます! 可愛ー!


「良かったね」


「透香ありがと。マジでありがと」


「うん、鼻息抑えようね」


 え、すっごい顔背けんじゃん。そんなに荒かったですか。

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