第2話 腐女子と部活の仲間たちの話。

 六時間目も終わり、これからは部活の時間。

 この時間の私は、無敵である。

 なぜかって? それは……身内ノリでも引かれないからだ! 先輩が引退したのも要因のひとつだがな! がはは!


「やっほーみんな!」


 楽器庫に着いて、私はなぜか声を張り上げてしまった。


「うっさい」


「すんません」


 教室からここまで一緒に来た透香とうかに、一瞬で怒られた。

 透香さんには敵わない。分かってたじゃないか。


「じゃ、また明日」


「うん! じゃあね」


 透香とはここでバイバイ。吹部じゃないけど、ここまでついてきてくれるんだ。ツンデレっすね、可愛いです。

 ただし、ここは下駄箱への近道ではある。が、その事実には目を向けないでおく。



 楽器庫では、同じパートのみんなが準備をしていた。

 私が怒られたのが聞こえたようで、みんなしてクスクス笑ってやがる。


瑞穂みずほテンションキモい」


 彼女は我らがサックスのパートリーダー、江角えすみ奏音かのんである。

 テナーサックスを担当している。童顔で声も可愛い。たまに透香さんより毒舌。だが透香同様、愛を感じられるので悲しくならない。

 ここで補足。奏音もちょいと腐っておられます。


「うおおお!!」


 私のハイテンションに呼応してくれたのか、野太い声を出したのは、私より変人(腐なわけではないよ)の谷川たにかわあかね

 ボケ担当……ではなく、アルトサックス担当です。

 かなりの美人。……かなりの美人なのに! 勿体ないぐらいに奇行種。


「あら、今日は元気いっぱいね」


 彼は、柿本かきもと俊臣としおみ。通称柿ピー。

 バリトンサックス担当。聞いての通り、オネエである。

 柿ピーと今年は同じクラスになれたんだ! ……でもね、教室では全然話してくれないの。最初は普通にへこんだよね。

 でも、これには訳がありまして……。理由はあとで分かると思います!(GJ)


「瑞穂先輩、こんにちは」


 この子は、サックスパートの中では一番まともな男の子、加賀山かがやま孝太こうた。うちのパートの中では冷静ってだけで、一歩外出たら全然ヤバい部類。

 サックス唯一の一年生で、アルトサックス担当です。


「やっほ! 私そんなうるさい!?」


 そして私が、藤咲ふじさき瑞穂。アルトサックスかソプラノサックス吹いてます。茜のボケ(奇行)とか柿ピーのド下ネタにいっつも笑わされてる、笑い声担当です。


 私たち、濃いめの五人合わせて!…………うん! そう! 仲良しサックスパートなのだ!

 あはは、特にこれと言った名称はありませんでした。



 うちの部員は三十四人。吹奏楽経験者なら分かるとは思うけど、この人数に対して、サックス五人は多い。多すぎる。

 それと因果関係は多分ないけど、吹部で一番騒がしいのが私たち。あ、あとトランペットの美麗みれいもたまにサックスに混ざって騒いでるかも。


 ちなみにとっても話が変わるけど、透香はフルート吹けます。めちゃくちゃ上手いです。中学校では吹奏楽部部長もやってたらしいです。

 でも今は帰宅部。高校でやめちゃったみたい。


「ミーティングするよー!」


 部長の声が楽器庫に響き渡った。

 みんなが隣の部室に移動し始める。



 さあ、晩年銀賞の県立けんりつ壮美そうび高等こうとう学校がっこう吹奏楽部は、今年こそ金賞を取れるのか! こうご期待!

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