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「えっ! ピンボケさんもサカヅキさんも、最強の硬度でカッチカチなんですか!?」


 陽もすっかり落ち、私、黒絵さん、バニカさんチームは、黒絵さんの位置交換瞬間移動を使って、シアノさん、ボロさん、刻代さん、チームと合流しました。


 ツケモノカプチーノというふざけたお名前の港から少し進みまして、プレハブです。


 今はシアノさんがお外でご飯の支度をしてくれているので、料理待ちのお時間です。黒絵さんとバニカさんはお手伝いしてますし、ボロさんはピンボケさんと偽物のトランプで神経衰弱しているので、ざっくり言うなら私とサカヅキさん刻代さんの雑談ですねー。


「うん、魔法少女の相棒は持ち主の魔力によって、その強度が違ってくるんだ」


「知りませんでした」


 刻代さんがカッチカチという情報を耳にしたので、ピンボケさんやサカヅキさんはどのくらい頑丈なのか聞いてみたら、この答えが返って来ました。


「じゃあ私の魔力がほぼ無限だから、ピンボケさんもサカヅキさんも頑丈ということですか」


「厳密に言うと、ピンボケさんは空姫さんの魔力で最強の強度になっているけど、サカヅキはちょっと違うよ」


「と言いますと?」


「サカヅキは僕がこの姿になっても契約し続けているからね。この姿の僕に魔力はないけれど、ユーシアノさんの魔力を拝借していることで、間接的にだけど僕も無限みたいなもの、ってわけさ」


「ほほう」


 つまり、無限魔力のシアノさんが所有している刻代さんの魔力も、イコール無限——ということ。


「なんだかまるで、魔法少女の相棒関係みたいな感じですね、シアノさんと刻代さんって」


「僕とユーシアノさんは魔法少女の相棒関係ではないけれど、そこは血縁者ゆえのリンクだね。濃さに違いはあるけれど、ユーシアノさんには確実に僕の血が流れているからってこと」


 なるほど。しかしこれは戦闘の幅が広がるかもしれません。


「じゃあサカヅキさんを手にはめて、リーチを伸ばすこともできますね」


「儂の使い方プラン酷すぎじゃろ!」


「仕方ないじゃないですか。だって私まだ成長期前なので、リーチに自身ありませんし。万が一クロスカウンターを狙わねばならない時は、メリケンサックタンブラーになってくださいな」


「それじゃったら、ピンボケさんをレイピアにせえよ。そっちの方が長いじゃろうが」


「残念ながら、私に剣術の心得はないんですよね」


 空手なら習っていたんですけども。黒帯です。


「本当にうぬ、成長期前なんじゃろうな……? ちゅーか、その歳でそのナリじゃったら、もう成長してもたかが知れとるんじゃないかのう?」


「可能性は無限大で私は私を信じているのです」


「諦めも肝心じゃぞ?」


「諦めは愚人です」


 小学校から身長が伸びていないことは黙っておこう。


 小学校からバストに変化がないことも黙っておこう。


 認めたくないので成長止まった可能性は全否定です。


 まだ私は成長期前。うん、これからこれから。きっと15歳になる頃には、身長164センチでJカップくらいになる予定ですもん。今はまだ途中なのです。


 たとえ寄せ集めてもギリA止まりのバストで大人になるわけないですもん。たぶんないですもん。あってたまるか。


「料理出来たよー」


 私が自分を心の底から信頼していると、外からシアノさんの声が聞こえましたので、サカヅキさんと刻代さんを手に持ち外に出ます。キッチンがないので常時アウトドアなのです。


「わーお! メニュー盛りだくさん!」


 お刺身、魚の煮付け、焼き魚、魚の塩釜焼き、焼き鳥、ステーキ、サラダ——と、ご馳走が並んでます。


「お魚が多いですね」


「うん。ナルボリッサがたくさん貰って来たからだよ」


 ボロさん、造船所の人たちを腕相撲で百人抜きして、気に入られて仲良くなって、お魚を大量にプレゼントされたらしいです。


「あっはっは! 俺様が勝ち取った魚、ありがたく食いやがれよな!」


 えらそー。超ご機嫌。ニッコニコー。


 にしても、メニューが日本と大差ない。


「焼き鳥とステーキって、これなんのお肉なんですか?」


 ステーキは二種類あります。豚肉と牛肉ですかね?


 お魚の名前も知りませんけど、お魚の名前を言われてもよくわからないのでスルーします。


「焼き鳥は、ハゲノフェザーって魔物のお肉だよ。ステーキは、バクテンブタとイキリウシ。ハゲノフェザーは家庭的なお料理だけど、バクテンブタとイキリウシは滅多に手に入らなくてどっちも高級なんだよ」


 ハゲノフェザー。バクテンブタ。イキリウシ。


 名前はっちゃけてるなあ。


「てかそれってお名前的に魔物ですよね……? 魔物って食べられるんですか?」


「うん、食用の魔物もいるからね。前にクウキが倒したトンボコロシも、世界三代珍味ですごく高いんだよ」


 アイツ食えたのか。トンボコロシ。


「トンボコロシ以外の三代珍味は?」


「ファイナルキノコと超サメの卵だよ、どっちも数千万ペイズ以上するから、よほどのお金持ちしか食べられないけど」


 ファイナルキノコがトリュフ的な感じで、超サメの卵とやらがキャビアみたいな感じでしょうか。いや超サメって!


 そこはチョウザメで良いでしょ、お名前が雑! この世界は全部のお名前が雑!!!


 超サメが雑すぎるから気にならない感じしますけど、ファイナルキノコも大概ですからね?


「さあ、みんなー! 冷めないうちに食べて食べて!」


 自分の奢り。それがよほど嬉しいのか、シアノさんはテンション高めです。でもシアノさん、筋肉痛で足カクカクしてますけど。


「シアノさん、筋肉痛が酷いなら、私が筋肉痛になる前まで肉体コンディションを戻して再生しましょうか?」


「え、本当! あ……でも、大丈夫かな」


「遠慮しなくて良いんですよ?」


「うん、でも遠慮じゃなくて、だってそれってお願いしたらわたしの身体が鍛えられないでしょ、だから大丈夫だよありがとう」


「……………………あ」


 シアノさんの言葉に、私は戦慄を覚えた。


 肉体コンディションを戻す。私は筋肉痛とかちょっとした怪我とか、そういうことがあるたびに肉体コンディションをセルフリターンさせています。


 それって……私の成長を止めているに等しいのでは?


「……………………」


 まさか、だから私の身長もバストも止まってる……?


 ピンボケさんと契約したのは、中一になって割とすぐ。


 私の成長が止まったのは、およそそれくらい。厳密に言うなら小学校から止まってますけど、そりゃ中一になってすぐに成長するわけじゃない。


「な、なんてこった…………」


 毎朝マヨネーズご飯を食べても太らないわけだ。魔法少女になってから、毎日のようにバトってましたもん。毎日のように筋肉痛を戻して、擦り傷も戻してましたもん。


「くそう……っ!」


 筋肉痛だけ、あるいは擦り傷だけを再生するなんて器用さなんてモノは私に無い。身長とバストと同じくそんな器用さはない。


 なんてこった……なんてこった!!!


 今夜はやけ食いです! ステーキも焼き鳥もお魚もドカ食いしてやります、ちくしょう!

 

「おい空姫や、ちゃんと噛んで食べるんじゃぞ」


「お婆ちゃんに私の気持ちはわかりませんよ!」


 くそーーーーーーーう!

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ふりすくん @tanamithi

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