パーティバラバラそれぞれタイマン
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それぞれが光に包まれ、強制転移させられた。
私が飛ばされたのは、無駄に広い海辺。無人のビーチ。
「無人の——ではないですかね」
私は、眼前に立つ人物に向かって言った。
「あなたは何番目の黒ローブなんです?」
「俺は五番目——ウリル・リゾ」
「なるほど。ではボロさんのひとつ上ってことですか」
確かボロさんが六番目でしたね。黒絵さんに憑依したヤゥトゥマさんが三番目だったから、残る四人の黒ローブが私たちをバラバラに飛ばして、それぞれタイマンって感じでしょうか。
やれやれ……これはちょっとキツい展開ですね。
「私以外の人は無事なんですよね? えっとウリルさん?」
「さあな。俺はお前を仕留めるだけだ、他は知らん」
「ぶっきらぼうな口調ですねえ。きっと馬鹿なんですかね」
「なんと言われようと問題ない」
ボロさんのように挑発に乗ってくれるタイプではないようだ——というか、いささかボロさんが例外過ぎたのだろう。
こちらとしてはペースを握りたかったのですが、困りましたね。
「行くぞっ——!」
私にペースを渡すつもりはないようだ。ウリルさんは言うと、ビーチの砂を操り、私に飛ばして来た。
「え、まってくださいよ!」
魔法障壁で防ぐ——が。
「おわっ! 威力つよっ!?」
魔法障壁をぶち破り、私目掛けて粒子の小さな砂粒が飛んでくる。
ひとつひとつは小さな砂粒。たが、纏まれば大きさは自由自在に等しい。
思考加速で避ける手段を模索する——ジャンプして避けるは悪手だ。身動きが取れない空中では、狙い撃ちされる。
サイドステップで
「てやっ!」
私はサイドステップで砂を躱わした——が、砂粒はこちらに向かってホーミングしてくる。さらに砂浜が私の足を鈍くさせる。
「くそっ!」
魔力は温存したい。けれど、ダメージは受けたくない。
仕方なく私は魔法障壁を二重で展開し、自分をコーティングする。
「うっ……!」
二重で展開しても完全には防げない。ダメージは最小に抑えたが、ノーダメージというわけにはいかなかった。
「大丈夫カイ!?」
「ええ……平気ですよ、ピンボケさん」
今のところは平気です——けど。
これはまずいですね……私勝てないんじゃないですか……これ?
ボロさんを解除して戦う——その選択肢は排除する。
唯一無二のボロさんを解除してしまったら、それは殺しに等しい行為だ。私はそんなことしない。
「弱いな、お前」
「言ってくれるじゃないですか……ウリルさん」
砂が武器になると言うことは、この砂浜にはウリルさんの武器で溢れている。そして海辺ということは、海すらも武器になり得ると見るべきでしょう。
おそらく、それぞれの黒ローブが有利な場所で戦闘を挑んで来ている。
では早く蹴りをつけて、シアノさんをお守りしなければならない——が。
「……今の私じゃ、どうやって勝てばいいのか」
魔力は枯渇寸前。回復はしますけれど、ボロさんに七割の魔力を消費している私ができることは、魔力障壁でダメージを和らげることが限界かもしれない。持久戦は当然不利。威力のある魔法は難しい。
だけど速攻でカタをつける——それしかありません。
手段があれば——なのですけど……。
「お前が弱いのは、我々も承知していた。だから我々の中で最弱の俺がお前を相手にしているのだ」
ショッキングな発表ですね、それは。
黒絵さんやボロさんならまだしも、まさかシアノさんより評価が低いとは。
ずいぶんと舐められたモノだ。
「空姫、落ち着イテ!」
「大丈夫ですよ、ピンボケさん」
屈辱的ではあるが、納得せざるを得ない。
うちのパーティを戦力図にするなら、黒絵さんがダントツトップ。次点にボロさん。
三番手は私だと思っていましたが、黒ローブ側の見立てでは私は最下位。
ムカつく。なーんかムカつく。
「……でも実際、ピンチなんですよね、私」
魔力も足りない。さっきからボロさんの魔力消費が激しい——おそらくボロさんも戦闘が始まり、相当追い込まれているのでしょう。
黒絵さんとシアノさんはどうなのかわかりませんが、シアノさんには元未来視の魔法少女でなぜか喋る剣になっているA子さんもとい
「サカヅキさん、なにかアイデアありません?」
私は頭に乗るサカヅキさんに訊ねました。
「うぬ次第じゃ。残念じゃが儂に言えること——儂に言うことが許されとるのは、それくらいじゃよ」
「未来が変わっちゃうとかそういう感じのやつですね」
じゃあ打開策は存在する。それをサカヅキさんが口にすることが許されていないのだろう。
打開策があるだけ十分です。希望があれば足掻けます。
「にしてもいつの間にサカヅキさん、A子さん……じゃなかった刻代さんから言えることを聞いたんです?」
「あやつめに被さったときじゃよ。あの部屋の壁は壁ではなくあやつめの魔法、未来を読む本と同じモノだったんじゃ。集束して収束した光に情報を込めて、儂に伝達したっちゅーわけじゃよ」
なるほど。砂粒を避けながら聞く話ではないですね。疲れちゃいます。
「のう、空姫や」
「なんです?」
今忙しいんですよ私。思考加速しているとはいえ、砂粒を最小限のダメージでやり過ごすのに必死なんですから。
「うぬはなんの魔法少女じゃ?」
「完璧で究極の魔法少女です」
「ガッカリじゃよ……その返事」
「嘘じゃないんですけどっ!」
「破壊と再生の魔法少女じゃろうが……はあ、よーく考えてみい」
「再生……とは……ですか……」
再生とは——なにか。
どうやらそれがわからない限り、残念ながら私には、生き残る余地はないようだ。
生き残る余地も——あるいは、生き残る予知も。
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