8月11日 クリケット
昔観た映画のラストシーンで、小さな男の子が
「
とても印象的なシーンだった。
あれと、似たような物が、うちの風呂場にいた。
3㎝くらいの黒い虫。飛び跳ねるのにちょうどよさそうな長い脚。それを見た瞬間、映画のそのシーンを思い出した。
映画の虫より小さい気がする。ホントにクリケット(こおろぎ)かどうかもわからない。
しばし固まる。
虫は得意ではない。綺麗なおべべを着た小さな子が手づかみしてたけど、私には無理。潰すなんてもっての外。
でも風呂には入らねばならない。追い出す時間もない。どこにいるのかを確認して、近寄って来なさそうだったのでそっと湯舟に入る。
あの映画を観たのはずっと前。
ラストエンペラー。秦の最後の皇帝の溥儀という人が主人公だったはず。詳しいことは覚えていない。すっごくカッコいい俳優さんが演じていて、たしかジョンローンだったか? その溥儀が亡くなるときに、その幻を見る。だったような?
とっても良いシーンだった気がする。ホントにうろ覚えだけど。
ラストエンペラーには坂本龍一さんが出ていて、役者として出ていたのはほんの一瞬だった気がする。すっごく印象的な日本の軍人さんの役。映画音楽も坂本龍一さんだった。サントラ盤を買って、それを繰り返し聴いていた。
メロディーが頭の中で流れる。すんごく好きな曲。ゆっくりとしたキラキラの弦楽器の音だったような?
坂本龍一さんといえば、戦場のメリークリスマスの印象が強い。戦メリもとっても好き。映画はテレビで観た。戦メリのラストシーンは武ちゃん(ビートたけしさん。俳優としては北野武さん)が「めりーくりすます、みすたーろーれんす」と言ってたような気がする。ぶっきらぼうなジャパニーズイングリッシュ。これが映画のキーワード。というか題名そのもの。
本も借りて読んだ。本だと武ちゃんの言葉の後のことが書いてあって、その言葉の意味がわかった気がする。あれは、日本の軍人さんが決して言ってはいけない、『助けてよ。ローレンスさん』になるんだと思う。はっきりと覚えてないからよくわかんないけど。
それに気づいたローレンスさんが武ちゃんの元に戻るんだけど、ってところで終わってたような?
本も読んでたし、楽譜も借りてあの主題歌をピアノで弾いてた。全然上手じゃなかったけど。乱視だから楽譜読むの苦手で、五線が6本に見えたりしたけど線を数えて音を確認しながら弾いてた。ピアノ曲もすんごく好きなんだけど、ライドライドライドっていう小さな男の子が歌う曲も好き。天使の歌声。
ということを思い出しながら湯船につかっていた。
浸かっていただけなので、クリケット?(こおろぎ?)はいなくならない。鳴かなかったからこおろぎかどうかもわからない。そもそも虫は得意ではない。
時間もなかったのでそのまま出る。
次の日もいた。
そして坂本龍一さんのことを思い出し、頭の中で曲が流れつつ風呂に入る。
コオロギだかクリケットだか何だかわからない虫は数日いて、いつまで経ってもいなくならない。自力では出られないのではないかと思い、時間ができたとき、少ししっかり目の郵便の封筒を使って外に出した。真夏の雑草だらけの家の裏。
こんな閉ざされた空間ではなく、広い世界に出てお行き。
それまで歩いていたけれど、その時だけは飛び跳ねて怖かった。
ただ、ずっと頭の中ではラストエンペラーの曲が流れていた。優雅な弦楽器の音楽。たまには、こんなことがあってもいいかな。
ホントにたまにでいいけど。やっぱりあんまりなくていいけど。
でも、頭の中で坂本龍一さんの曲が流れてる。
大好きなメロディー
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