塔の中の住人

 本日もネタバレ大盛りよろしくお願いいたします。


 まずは、前回登場したキリコについて紹介します。

 キリコは眞人の家のお手伝いさんの一人です。現実世界では細身のタバコが好きなおばあさんで、眞人と一緒に塔へと入りました。

 入ってすぐ眞人はキリコと離れ離れになり、次に出会ったときにはすでに若い姿でした。


 キリコ(若い姿)は眞人に対して何かと世話を焼いてくれます。出会って早々、自宅へ招き入れ、ご飯と寝床(机の下ですが)まで提供してくれました。

 部屋には花柄のワンピースが掛かっていて、自分はそれがとても印象的でした。

 キリコ本人はもののけ姫に出てきそうな服装であること、衣装入れではない場所に掛かっていることから、キリコは外の世界から来たのかなと思いました。ワンピースはその時に着ていたものではないでしょうか。



 キリコと一緒に眞人の味方になってくれた人物がいます。ヒミです。

 ヒミ様と呼ばれる少女は火を操り、危険な鳥を退けることができます。

 登場時打ち上げた花火は、助けるはずのわらわらをも焼くほど恐ろしいものですが、同時にとても綺麗でした。ヒミ自身も花火のように強く快活な少女です。


 ヒミの正体は眞人の母親、久子と断言してもよいでしょう。

 久子は子どもの頃(たしか1年ほど)行方不明になっていた、とお手伝いさんが話すシーンがあります。あの塔は危険だ、とも。行方不明の間塔の中で暮らしていた、と考えていいと思います。

 また、ヒミは眞人と共に妹であるナツコを助けようと動いてくれます。鳥だらけの塔で心強い味方と言えるでしょう。


 眞人は共に過ごすうちにという感じでしたが、ヒミは眞人が自分の息子であると最初から知っているようでした。ある意味、アオサギが言っていた、塔の中に母親がいるというのは正しかったと言えるかもしれません。

 最後はそれぞれが自分の時間軸へと帰って行きますが、ヒミと過ごした眞人は母親の死への後悔やトラウマと折り合いがついたのか、すっきりとした表情をしていました。そういった意味でもヒミは眞人にとって重要な人物だったと言えます。



 そして、忘れてはいけない住人に大叔父様がいます。

 大叔父様は、塔を建てた張本人であり、大量の本を読むうち気がくるって塔の中で行方不明になったと伝えられています。

 気がくるったかは兎も角、ほぼ正しい情報だったと言えるのではないでしょうか。

 大叔父様は行方不明になったその日から(それより前から?)塔の中の世界を創り、安定して維持させるために動いていたのではと思います。

 そして、老いた今、アオサギを使い後継者として眞人を塔へ引き入れたのではないでしょうか。もしかすると、ヒミもまた後継者候補の一人だったのかもしれません。


 しかし、大叔父様の思惑は打ち砕かれ、塔の中の世界も崩壊を迎えます。

 正直、積み木を積むくらいしてあげればいいのに、と思ってしまった自分は、無責任な人間なのでしょう。

 眞人の方が、自分が創造する世界と大叔父様の理想の世界について深く考えることが出来ているように思います。


 大叔父様が創りたかった美しい世界はきっと、悪意の無い世界だと思います。

 悪意のある石の積み木(大叔父様が調整していた積み木の塔)は不安定で、慎重な調整を以てしても1日しか安定しません。

 長い時間をかけて集めた悪意の無い石の積み木。その積み木を使えば安定した美しい世界になる・・・


 本当にそうでしょうか。



 次回は、大叔父様の言う悪意について考えていきたいと思います。



   >>>next 鳥は悪意か

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