第5話 今と昔

「なあなあにーちゃん。何してんのー?」


「うん? ああ、君か。僕は今ゲームをしてるんだよ」


「またー? ゲーム以外やることないのー?」


「あったよ。僕はやる事全部終わらせてゲームをしているんだ。君も一緒にどう?」


「やらなーい。砂場で城作った方が楽しいもん」


「へえ、そう。君は楽しそうでいいね」


「うん、俺何でもできるよ!」


「何でも?」


「うん!」


「本当かな。じゃあ空を飛んでみてよ」


「いいよ。ん~~~パタパター! パタパター!」


「・・・ップっふふふ」


「どうどう? 飛んでると思う?」


「そうだなぁ、なんか飛んでるというより浮かんでるって感じだな」


「なんだよーにーちゃん俺の事馬鹿にしてるだろー」


「違うって。ただちょっと速さが足りないなーって思うんだ。こう、ビューン!って」


「あーいいなぁ! それマネしていい?」


「いいよ」


「やったぁ! ビューン! ビューン!」




「にーちゃんバテるの早すぎ、俺まだ全然飛べてないよ」


「いやぁ、すごいね君は。僕ももう年かな、動きたくないや」


「じゃあ、もう終わり?」


「うん。ごめんね。でも、君は本当に何でも出来るんだね。僕も空を飛んでるみたいだった」


「そうでしょ? 俺、将来ヒーローになりたいんだ。だから、今もその特訓中なんだ」


「それは、すごくいい夢だね」


「でも、お母さんはそんなことより勉強しなさいって言うんだよ」


「まあ、勉強も大事だしね」


「・・・ねぇにーちゃん」


「なんだい?」


「にーちゃんはさ、大人になると何でもできなくなっちゃうと思う?」


「うーん、かもね」


「そっかぁ・・・なら大人になんてなりたくないな」


「まあ、分かるよ。僕もたまに嫌になって、子供の頃に戻りたいって思う時もあるよ。でも、大人になると偶に、本当に偶に自分の想像を超えるものが見えるんだ」


「自分の想像より?」


「うん。それをまた見るために僕は頑張っているんだ」


「さっきゲームしてたくせに、かっこいいこと言うね」


「はは、そうだね。君はどう? 大人にはなりたくないと思った?」


「ううん。俺、早く大人になってみたい」


「頑張りな。・・・さーてそろそろ帰ろうかな」


「俺もそうしよ。じゃあねにーちゃん。また遊ぼうよ」


「ああ。君のヒーローになるって夢、きっと叶うよ」

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