三十五章 深夜の密談
こいつらよく食って飲んだな。ちびっこと獣人娘は満足したらささっと個室に行ってしまった。セシリアはいつもの調子を取り戻したようで一安心かな。
さてと、今日は早く寝ようか……うん? ベットに身体をゆだね、そのまま眠りに落ちたかったのに部屋のドアをノックしてきた人物によって妨害されたのである。
「アリシアです。フランツ様、夜分遅くに申し訳ありません。少しだけお話をさせて頂いても構いませんでしょうか?」
「へっ? アリシアさん? お話ですか……は、はい! 今開けます!」
扉の向こうの人物はセシリアの母親であるアリシアさんであった。
意外な人物が自分を訪ねてくるとは思わず素で驚いてしまったが怒られないだろうか?
「ありがとうござます。話はそれほど長くはありませんので、ほんの少しでいいのでお話をさせてくださいまし」
「は、はい! で……お話とはどのような内容でしょうか?」
どことなくセシリアに似た面持ち、そら親子なのだから似ていて当然だよな。でも母親のほうが妙に落ちついているというか淑女って感じだな。セシリアはまだまだ幼さが残っているのがポイント高いんだけどな!
「フランツ様お願いがあるのです。あの子――セシリアとこれからも行動を共にして下さいませんか?」
「えっと、それは彼女が許してくれるのであれば俺は共に居たいです。どうにも彼女に呆れられたり、怒られていてばかりで嫌われているのではないかなって思うんです。だから、セシリアの許可がもらえなければ俺はこの話をお受けできません」
――本音を言えば、彼女は信じてもいいと思えるから一緒に居たい。だけど、彼女には迷惑をかけていてばかりだし、何故か呆れられてしまうことも多い。ましてや触れてはいけない地雷をよく踏む。たぶんだが嫌われているはずだから。
「ふふっ。あの子が他人の面倒を見るなんて稀なのですよ? ましてや男性となるとですね。フランツさん安心してください。あの子は貴方のことが気になっていると思います。そうじゃなければ、貴方は今ここに居ません。もっと自信を持っていいと思いますが……そうですね。娘の話を聞いた限りでは女性の扱いがなっていない。デリカシーが無いといった所でしょうか。そこを直せばあの子も心を開いてくれると思いますの」
誰かも同じことを言っていたような……あぁ、ミュコスのピザ屋のおばちゃんだな。
女性の気持ちというか感情ってよくわからない。コミュ障かつ彼女いない歴年齢の俺にとって女性との付き合って高難度クエストクリアするより難しいんだよな。
って、セシリア母親に俺のこと話してるのかよ!?
「彼女に一番近しい人の話なら自信を持ってもいいかな! って思ったのに酷い言われようですよ! あの、セシリアは俺のことなんて言っていたんですか?」
アリシアさんは顎に手を添え虚空を見上げ考え込んだ後口を開く。
「……そうですね。セシリアが言うには、どうしょうも無く手間のかかる男性ですと。だけど、世話するのが苦にならないからついやってしまう。たまに頼りになる一面が垣間見えるのがいいらしいですね。ただ、女性を見る目が如何わしい時があるのと、よくわからない用語を漏らすことが気になるとも言っていましたね」
まんまダメ男の典型的な特徴じゃないか。俺ってそんなにも駄目男だったのか……
くそっ、いい印象より悪い印象のほうが多いじゃん。マジでつらい。
「まぁまぁ、そんな落ち込まないで下さいな。フランツ様はうちの旦那によく似ているんですよ。ジョエルはお客様の前では威厳を発していますが、二人の時はどうしょうも無くダメ男ですのよ? ですが、戦いにおいては真っすぐなお方です。そのギャップに私は惚れました」
親子揃って男の好みのが一緒と……嬉しいような悲しいような……たしかに決闘の時のあの態度は子供同然だったよな。
「は、はい……と、とりあえず、この話はセシリアの意思を尊重したいです。俺は彼女の決断に従います。貴重なお話をありがとうございます。少しだけ自信がついた気がします」
「いえいえ、うちの娘が初めて意識した男性ですからね。親としては嬉しい出来事なのですよ。まぁ、ジョエルは泣きじゃくっていましたが、黙らせておいたのでご心配なさらぬ様に。では、明日またお会いしましょう。おやすみなさいませ」
……初めてか。親が言うんだから間違いはないんだろうな。けれど、父親がまた暴れだしそうなのが怖いんだよな。また決闘とかにならないといいのだが!
「明日お願いします! おやすみなさい」
次の日にアリシアさんから彼女に問うてくれる算段とし、深夜の密談が終わる。
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