三十二章 漆黒のロスコフの力
「……ジャンケン……ポンッ!」
「フランツ貴様ジャンケン弱いな! 防戦一方ではないか!」
「……ぐぬぬ。ま、まだまだぁ!」
何度も何度も繰り返される攻防戦もとい、防衛戦状態である。
くっそ。俺こんなにジャンケン弱かったのかよ!? 一度も攻撃できないとか運に見放されてるとしか言いようがない。
――まるでRPGの負け確定イベントのようだ。変な所だけゲームの世界に似せなくていいじゃないか。このままだと押し切られそうだぞ。何か策を考えないと。いや、この際負けても俺にはそこまで問題はないような……
「フランツさん! 頑張って下さい! 諦めたらそこで試合終了ですよ!」
どこかで聞いたことあるセリフのような。……あぁ、父親の殺意がどんどん増してるんだが!?
「ぐぬぬ、一度ならず二度までもセシリアちゃんから応援してもらるなんて……もう容赦しないぞ! ジャンケン……ポンッ!」
「くっ、また負けた。ぐっ!?」
「どうした! 私に勝って誤解を解くのだろう? 受けるだけでは勝てぬぞ!」
……くそっ。このまま何もできないのかよ!? 誤解は解きたいが打開策が思いつかない。
『……まったくだらしねーな。今度の主はヘタレかよ』
……頭中に直接というか意思がある様な声が響いたような?
ついに追い詰められすぎて、幻聴が聞こえるようになったようだな。
『気のせいじゃないぞ? 新しい主は頭も悪いようだな。おいらはロスコフの精とでも言っておこうか。——で、主は勝ちたいんだろう? ならおいらが力をかしてやろうか?』
『どうやら気のせいじゃないようだな。ロスコフの精……こいつにそんな機能があるなんて聞いてないぞ。――お前の力? ずいぶんと都合のいい話だな。何が目的だ?』
『そらそうだ。おいらは最初のロスコフでありオリジナルだからな! そんじょそこらのやつと一緒にするなよ? で、どうするんだ? そろそろ限界が近いだろう?』
悔しいがこいつの言うとり、そろそろ俺の体力の限界が近い。数回の防衛で俺の腕が悲鳴を上げ始めている。受けているだけのはずなのに息が苦しく膝が笑い始めている。
『……わかった。どうすれば勝てる?』
『おう、わかってんじゃねーか。お前は【勝ちたい】と願うだけでいい。あとはおいらの出番だ。タイミングはジャンケンの結果が出る瞬間だ』
「お父さん! これで終わりにします! ジャンケン……」
「誰がお父さんだ! 引導を渡してくれるわ! ポン!」
怪しいことこの上ないが、この際この試合が安泰に終わるならどうとでもなれ!
【俺はこの試合に勝ちたい!】
心の底から願う。この試合の勝利を……!
……はっ!? 何が起こった!? さっきまで負け続けていたジャンケンにあっさり勝っている!? よ、よし! あっちも動揺している。勝てる!
「き、きさまぁ! 今何をした!? この私が……ごっ!?」
「……はぁはぁ。勝った!」
何か言っていたようだが、結果は出た。俺の勝ちだ。
勝利者が決まったことで、魔法陣の結界が解除され俺たちは解放される。
白目向いて気絶しているな……こうなるのが自分だったかと思うと勝ててよかった。
「フランツ様お見事です。元とはいえ歴戦の剣士を打ち倒すとはお強いですね。これにて娘との間に何もなかった事も証明されました。フランツ様はこれより当家のお客様としてごゆるりとして下さいませ」
「凄いです! まさか父様を打ち倒すとは思いませんでした! しかも先ほどの魔法? でしょうか、あのような事象は初めて見ました。お疲れさまでした!」
「……まじか。あのジョエル様を倒すとは……フランツ実は強かったんだな! 見直したぞ」
「あら~? フランツ君が勝てるとは思わなかったけど、どんな手品を使ったのかしらね? とは言えおめでとう」
『おう、主よかったな。これからよろしく頼むな! だが今日はサービスだ。次からは対価を貰うぜ!』
『うん? よろしくな。対価か……次使う前に仕様を教えろよな!』
こうして俺は謎の力によってバタイユに勝利したのであった。
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