二十七章 ロスコフ登録は簡単?
「お待たせ致しました~。ロスコフの登録用の書類をお持ちしました。本日はアルクが対応させて頂きます! お客様、文字は書けますでしょうか?」
「……俺文字は書けないです。すみません」
なぜか文字や言語は理解できるのだが、書くのだけはまだ出来ない。というか何語なのかもよくわかっていない。俺が見る文字は基本的に日本語に見える。けれど、書くとなると話は別だよな。ここは書けないということにしておくべきだろう。
時間ある時にでもセシリアに文字を見てもらって判断した方が良さそうだ。
「いえいえ、文字は読めるけど書けないって冒険者さんって結構いるんですよ~。ですから私達受付嬢がいるのです! いくつか質問をしますので、お答えください。私が代書いたしますので」
「えっ、そんなことまでしてくれるんですか助かります!」
見た目は猫耳メイドだが仕事はきっちりやってくれるれるようで一安心だ。
しかも、代書まで行ってくれるとはギルドのサービスもいいではないか。
「はい! では順を追って質問しますのでお答えください。まず氏名と年齢、性別、種族をお答えください。ちなみにですが……偽った場合、申告出来ないこともありますので、嘘偽りなく答えてくださいね!」
猫耳をくるくると器用に動かしつつ、満面の笑みで質問をしてくるアルクさんである。その顔は笑っているが嘘は許さないと顔に書いてる。
「えっと、名前はフランツ、年齢は21歳、男、人間です。これでいいですか?」
「ちょっと待ってくださいね。名前は……フランツさん。年齢は21歳の男性で、種族は人間っと。——お待たせしました。次は身長、体重、血液型、現在の職業、配偶者の有無、好みの女性のタイプをお答えください」
「身長と体重はだいぶ前に計った時は180㎝の70㎏だったかな? 血液型はAB型で、今は剣士やってます。配偶者はいません。好みのタイプですか、う~ん。お淑やかで包容力あって、それなりにふくよかで綺麗で、守ってあげたくなる子が良いですね。っておい!?」
自然に答えさせられたが、最後の質問はおかしい。思わずツッコミをいれてしまったではないか!
「はいは~い。身長は180㎝で体重が70㎏、血液型がAB型と。で、職業が剣士ですね。配偶者はなし。好みの女性は……なるほど。うんうん。やっぱ男性の好みは色々ですね~。参考にさせていただきますね!」
てへへ。っと真っ赤な舌を出し悪戯っぽく笑うアルクさん。くっそ可愛い。これじゃ怒る気にもならないじゃないか。
「では、最後の質問です。出身地とギルドに入る目的をお教えください。目的は別に何でもいいんですよ。世界を救いたいとか~、女の子にモテたいとか~、一攫千金を目指すとか~など。なんでもいいですよ~」
――しまった。出身地はどうしたものだろうか、日本って通じないだろうしな。この世界の地名のこともっと聞いておけば良かったぞ。こうなったらいつもの記憶喪失でこの場を乗り切るしかない!
「アルクさん、実は俺……記憶喪失なんです。生まれとか幼い頃の記憶がまったくなくて、最近の出来事や身体的な特徴とかしか思い出せていないんです。目的は記憶を取り戻す旅をするためでいいですか?」
「えっ!? そっ、それは大変でしたね。どうしましょう。出身地の記入は必須なんですよ。なんとなくでいいですから、どの様な所に住んでいたかも? っとか思い出せませんか?」
同情の視線を向けられてしまったが、この窮地は脱せそうである。
どの様な場所に住んでいたか。便利な機械や道具、サービスがあったのが日本だしな。少しぼかして答えるしかないよな。
「……う~ん。そうですね。便利な道具や魔法みたいなものが周りにあったような気がします。ここよりは文化が発達してたかもしれないです。アルクさん、そのような街とかってあります?」
「あぁ……一か所だけありますね。魔法と機械を融合させた「魔道具」が発達した国があります。名前はインストルメントと言います。私は行ったことはありませんが、暮らしやすく一年を通して活気のある国だと伺っています。では、フランツさん仮として登録しておきますね」
魔法と機械を融合ってファンタジーって感じだな。しかも、魔道具もあるらしい。
日本ほどではないだろうが、機械に近いものがあるのあれば永住の候補だな。
「はい! 無理言ってすみません。ありがとうございます。あと何か足りないものはありますか?」
「いえ、以上で申告は終わりです! フランツさん、お疲れ様でした。 ――で、先ほどのお連れの女性の方が辛そうなので行ってあげてください。登録には一日かかるので、明日のお昼以降にまたいらしてくださいね」
「こちらこそ色々と助かりました。アルクさん、ありがとうございました。って、セシリアが泣きだしそうだな。あのアニータって人は何者なんだよ」
「ふふっ、いつものことなんですよ。フランツさん、セシリアさんをお願いしますね。泣かしたら駄目ですよ?」
「い、いつものことか。と、とりあえず助けてくるよ! アルクさん、明日会いましょう!」
猫耳メイドさんに頭を下げたあと、申告書を片手に二人の居る席へと向かうのであった。
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