二十六章 ここギルド?
先頭を歩くセシリアが木製の両開きのドアを手でゆっくりと押し広げていく。
建付けが悪いのか、古いからなのか金属の留め金が鈍い音を立てつつドアが開いていく。
RPGとかのギルドって個々で独特な雰囲気があるのだが。この世界のギルドはどうだろうか?
「フランツさん、呆けていないで中に入りますよ」
「あぁ、すまない。今行くよ」
考え事をしている場合ではないな。けれど、王都のギルドだから強そうな猛者達が依頼を奪い合ったり、旅人同士での情報交換など、活気に溢れているに違いないと内心で期待をしていしまうのはしかたないのである。
期待に胸を躍らせつつも連れられ中に入るのだが、ギルドは俺の予想を斜め上に超えた場所であった。
「いらっしゃいませ~! 2名様入ります~。さぁ、お客様ご用件を伺いますよ。事務的な用件からお食事まで。あとお悩み相談などもありますよ!」
「相変わらず、ここのギルドの雰囲気は馴染めませんね……今日は彼のロスコフの登録を申告しにきましたので私は付き添いです」
「……??? なんだこの某コンセプトカフェみたいなノリは……」
中に入ってみると、外見からは想像できないほどの別世界であった。
内装自体は、クラッシクな作りで落ち着くのだが……
――受付嬢が明暗のメイド服を着ていて、頭頂部にはプリムを被っているのだがその脇から猫のような獣耳が2つ、スカートの下からは長い尻尾が出ているのが見える。
というか、夢にみたケモミミ美少女のメイド服のセットとかここの店長わかっているじゃあないか! いやこの場合はギルドマスターか。
「お兄さんが何を言っているのかわかりませんがこちらへどうぞ! 書類を準備しますので、そこの席に座って待っていてくださいね」
「あぁ、彼はいつものことなので、気にしないで下さい。フランツさんお隣失礼しますね。——もう、あまり女性をジロジロ見るものでは無ないですよ」
「わ、わかった。ここで大人しく待っているよ。セ、セシリア一つ聞いてもいいか? ここって本当にギルドなんだよな? って、俺そんなジロジロ見てた?」
いや、あれ見たら世の男性は釘付けにもなるだろう。予想を軽く超えた事象に疑いを持ちつつ、裏に引っ込んでいくケモミミ少女を目で追いながら彼女に尋ねる。
「そうです。ここはギルドです。ですが、この王都のギルドが変わっているいだけで他所のギルドは正常ですよ。——フランツさんはよく鼻の下伸ばしているので、嫌でもわかってしまいます。その……あ、あのような服装が好き……なんです?」
どうやらギルドで間違いないようだ。だが、どう見てもコンセプトカフェじゃねーか! 死ぬ前に一回行ってみたかったんだけど、まさか異世界にきてその夢が叶うとか普通は考えられないよな。にしてもセシリアが妙に服装を気にしているようだがメイド服が嫌いな男はいないだろう。
「そ、そうか。他は真面と……うん? 俺そんな鼻伸びてたのか、これからはポーカーフェイスでいないといけないな。……? そうそうメイド服っていいよな。ここは古き良きロングスカート丈なのもポイントが高い。店長はよくわかっている」
「たしかに、ここの受付嬢さんは可愛い亜人さんが多いので、ある意味では人気らしいのですがなんだか負けた気がして、その……私もあれを着れば……」
「うん? セシリアどうした? 体調が悪いのか? 俺一人でも出来そうだし休んでいていいんだぞ」
「……。もう、いいです!」
どうしたんだ? やけに不機嫌になったような気がする。聞いても答えてくれなさそうだし受付嬢が戻るまで大人しく待つか。
「あらあら、カップルで痴話喧嘩ですか? 周りのお客様の迷惑なので声のトーンは下げてくださいね。って、セシリアちゃんじゃない~」
この大衆の雑音の中、高く透き通った声が俺たちを注意しに回ってくる。
そもそも喧嘩ではないし彼女の機嫌が悪くなっただけであってだな。
「あっ、すみません。彼女気分が悪くなったみたいで、静かにします。……あれ? セシリアの知り合い?」
「……フランツさんは少し黙ってください。今日はこの人のロスコフを申請をしに来たんです。お騒がせしてすみませんでした。アニータ」
「へぇ~、あんたが男連れなんて珍しいね。あれかい?」
「ちっ、ちょっと!? アニータまで何を言っているんです!? この人とはそういった関係じゃないんです!」
「いいのよ~? お姉さんだけには正直に話してくれても。ほら、あっちで話を聞くわよ」
アニータと呼ばれた女性は亜人のようだ。真っ黒な髪を後ろでまとめていて、犬耳が生えている。そして、どこがとは言わないがとっても大きいのだ。服装もメイド服ではなく、胸元が大きく開いたスリットが入ったドレスのような格好で余計に目立つ。それはもうセシリアなんて目じゃないレベルで。やや褐色の肌、身体つきも豊満で太めの尻尾があり、艶のある女性である。
「えっと、フランツ君だっけ? セシリアちゃんはこっちで預かるからね~。用が済んだらこっちきてね~」
「え、ええぇ?! ちょっと、まだわからないことが多いんですが! あぁ……いってしまった……」
「フ、フランツさん! 早く、もどっ……!」
アニータはウィンクをしたあと、セシリアの腕を抱え込んだと思ったら無理やり引きずって去ってしまった。
これが亜人アニータとの壮絶な戦い? の始まりだとは俺は思ってもみなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます