二十五章 王都到着

王都への旅3日目、黙々と険しい山道を進んでいると木々が徐々に晴れ悪路が石畳の道へと変わっていく。


「道が整備されてきたな。そろそろ王都が近いってことだよな?」


「そうですね。あと数刻は歩きますが、王都はもう目の前ですよ」


「久方ぶりの王都だな。セシリアは家に戻るのか? 良ければ私も一緒に行ってもいいだろうか?」


「……ま、まだ歩くのか。——まさかとは思っていたけど、セシリアは王都の人間なんだな。ロスコフの件が片付いたら俺も家に行ってもいいかな?」


「う~ん。そうですね。フランツさんがどうしても言うのでれば止めませんが、ごく一般的な家ですからね? エミリアはアレですね。王都に到着したら爺やに一報を送っておきます。」


「……やった! セシリアいつもありがとう。となると、手ぶらでいくわけにはいかないな。あの店によってみようかな」

一般的な家庭で爺やというフレーズが出てくるのがそもそもおかしいと思うのは俺だけだろうか? たぶん、執事や使用人などがいるんじゃないんだろうか。

所作が綺麗、言葉も丁寧、落ち着いた物腰、品格があり、身に纏っている服や装飾の数々。


――まさに、絵に描いたようなお嬢様ではないだろうか。


「是非とも、お邪魔してみたいな。セシリアのことをもっと知りたいのもあるし、お世話になったんだから、家族の人にお礼も言ったほうがいいだろう。俺も手もぶらじゃ駄目だよな。エミリア俺の分も頼んでいいか?」


「うんむ。私が見繕っておくからお前達は用事を優先するといい。さぁ、もう少しで王都に到着だぞ」


「……私のことを、知りたいですか。わかりました。王都に入ったら準備をさせてておきます。少しだけ慌ただしくなるかもしれませんが、覚悟してくださいね」

ただ家に帰るだけだろうに何が騒がしくなるってことかな? なんとも引っかかる言い方だな。にしても、セシリアの頬が少し緩んでいて何やら嬉しそうだな。実家に帰るのがそんなに嬉しいとは素直な子だな。








「人とすれ違うことが増えてきたな。おっ、門が見えてきたぞ! やっと真面な宿と食事にありつける……ここまで長かったぜ」


「ここは王都で一番の交易路ですからね。人が多いのも当然です。さぁ、門をくぐりますよ」


「ふぅ……久方ぶりだが、相変わらず人が多いな。さてと、私は手土産を買いに行ってくる。昼にセシリアの家で待ち合わせでな!」

大門でけぇ……ごつい門番もいるし、人の数もそれなりだな。VRゲームのイベント祭に比べれば大した数じゃないけどな。

エミリアは片手をぶんぶんと振りながら、石で出来た古ぼけた橋を小走りで渡って去っていく。

小走りといっても中々に早いな。もう背中が小さくみえる。元から小さいけど……本人が聞いたら殴られそうである。


「さぁ、フランツさん昼に間に合わせなければいけないですし、ギルドへと向かいますよ。門から近いので安心してくださいね」


「あっ、そうだな。昼には用を済まさないといけないよな。良かった……ここから近いのが救いだな」

彼女の道案内で門から左に進んでいくと古ぼけてはいるけど、ずっしりとした佇まいの大きな建築物が見えてくる。

入り口付近にはマントを羽織った冒険者風の女性、屈強な男性剣士、木の杖を持った性別がわかりにくい魔導士、執事っぽいお爺さんなど、多種多様な職業が集まっていた。


「おぉ……ゲーム世界のギルドみたいだな。俺わくわくしてきたぜ! セシリア案内頼めるか?」


「……げーむ? よくわかりませんが、私が案内できるのは案内人がいる受付までです。そこでフランツさんは、ロスコフの登録を申請すればいいだけです。特に難しいことは無いので、頑張って下さいね」

しまった、余計なことは言わないようにしないとな。変な疑いをもたれると後々、問題が起きそうで怖いしな。


「ははっ、たまに変なこと言うが気にしないでくれ。さぁ、ロスコフの登録をしにいくぜ!」


「……ふふっ。いつもどおりで安心しました。では、参りましょう」

こうして異世界に来て初めてのお使いイベントが開始されるのであった。

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