二十四章 仲直り
昨日は散々だった。何もしてないのに犯罪者扱いされるわ、強制退去させようとしたら騒ぐし、あのちびっこエルフほんと迷惑極まりないじゃないか!
一夜明けて反省してくれているといいのだが、さてさて。
「二人とも、おはよう。セシリア昨日は助かったよ。ありがとう」
「おはようございます。いえいえ、一瞬だけですが胸の奥に黒い感情が湧きましたが、成り行きを聞いて正気に戻りました。ほら、エミリアもちゃんと謝るのですよ」
「お、おはよう。昨日はすまなかった。セシリアと話したあと眠い頭でテントを探していたから間違ったのかもしれない。次からはちゃんと確認する」
セシリアは朝の支度をしていた手を止め、満面の笑みで挨拶をくれる。昨晩エミリアと話あってくれたのだろう、ちびっこエルフは素直に頭を下げ謝罪をしてくれた。
「わかってくれたのならいいんだ。もう二度と御免だぞ。さて、朝から暗いのは精神衛生上よくないからな。朝飯にしよう」
「ですね。エミリアも反省したようですし朝ご飯にしましょう。今日はウサドリの肉と野菜を使ったスープですよ。この地域は年中を通して冷え込むので、温かいメニューにしましたよ」
「うん。そうだな。私も暖かいご飯を食べて心を落ち着かせよう」
今日の朝食はウサドリの肉をメインに何かの葉野菜と根菜が入った黄色みのある透明度のあるスープである。
今日は脂が少ない部位を使っているのか重くなくヘルシーに感じる。葉野菜は食べやすい大きさにカットされていて、細かく切られた根菜の触感で食が進む。起きたての胃に優しく、身体を奥から温め代謝を上げてくれるのである。
「今日もご飯が美味しい。セシリアはいい嫁さんになれるな」
「うむ。美味いご飯が作れるのは良いことだ」
「昨日も言いましたが、手持ちの素材だけでしか調理できないので、私としてはお恥ずかしい品です。ですが、誰かに食べてもらって美味しいと言って頂けるのは嬉しいですね。お嫁さんですか……その時がきたらですかね」
謙虚で凛々しい。そして、今日も笑顔がいい。朝からテンション上がるな!
「その、お前と呼ぶのは失礼だったな、フランツと呼んでもいいか?」
「うん? 好きに呼んでもらって構わないよ。俺もエミリアって呼ばせてもらうし」
「うんうん。いい感じ。二人ともしっかりと関係を改善できてますね。その調子ですよ」
昨日の初対面から印象が良くなかったが、素直になったエミリアも悪くないな。
黙っていれば可愛いわけだし、このまま良好な関係を保てればいいのだが。
「そう言えばエミリアって成りは幼く見えるけど実際はいくつなんだ? エルフって長命種だろ? 歴史も長そうだよな……」
「あぁ、私はこう見えて200年ほど生きてるが、まだまだ若輩者だ。うむ、私達エルフの歴史は長い、この世界の始まりから存在していると言えばわかるだろう」
「もう……フランツさん? 女性に失礼な質問を平然としては駄目と言いましたよね? エミリアの種族であるエルフ達は長命です。長老と称される始まりのエルフは万に近いと聞きます。故に歴史が人間とは比べ物になりません」
おぉ、ゲームとかの設定に近いな。にしても世界の始まりから存在しているってことは世の摂理とかも理解してるんだろうな。そのうち長って人とも会ってみたいものだ。そして、好奇心に負け失礼な質問をしていたようだ。でも、もう一つだけ気になることがあるんだよな……ええぇい! この際だ聞いてしまえ!
「……あっ、ごめんごめん。ほんと悪い! あと一つだけ気になるんだ。そのエミリアはその容姿から成長はしないのか?」
「……まったく、人が気にしてると言うのにフランツは好奇心が旺盛なのだな。エルフはおおよそ、100年ほどの歳で身体つきが決まる。だから、私はこれ以上の身体の成長はないぞ。これで満足か?」
なるほど……エミリアは一生この幼女体系ってことになるわけか、エルフも色々大変なんだな。
「歳に合わない容姿はコンプレックスだよな。俺が悪かったすまない。それに知的好奇心ってほどのことじゃない。気になったから聞いただけで悪気はない。それだけは信じてくれ」
「もう慣れたよ。それに、成長しないというわけでもないから、そこまで悲観してないんだ。いつか姉さまのようないい女になれると信じ日々の努力は怠っていないしな!」
「エミリアが納得しているのならいいですが、フランツさんも今後は気にしてくださいね? エルフは身体的な特徴を言われるのを嫌いますから。エルフもこの世界の住人であって他の種族も皆住人ですから色眼鏡で見ないようにしてください」
「す、すまないって、本当この通り、ね? 反省してる。——よ、よし! 王都まであと少しのはず、二人とも出発しよう!」
こうして三日目の朝は騒々しく始まったのである。
それにしても、エミリアのお姉さん気になるな。今後の楽しみにしておくとしよう。
――想像の絵にかいたようなエルフだと信じたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます