二十三章 深夜の騒動
「……食った食った。あとは寝るだけだな」
「ご馳走様でした。周辺に危険な魔物などは見受けられませんでした。今日はこのまま就寝としましょうか」
「ごちそう様でした。さて、明日も早いから寝ておくか」
意外と美味しかったウサドリを食べ終え、それぞれ自分の簡易テントに戻っていく。どうやらロスコフには携帯用の簡易テントがデフォで入っているらしく、俺は惜しくも一人で就寝となる。
一日目はセシリアと一つ屋根の下、もといテントの中で一夜を過ごしたはずだったのに不覚にも慣れない旅で死んだように寝てしまったので、何も起こらなかったわわけだ。
そもそも、そんなイベント起こっても俺は何もできないであろう。だって、恋愛経験ないし。はぁ……自分で言ってて悲しい、もう寝よう……
♦
……暑い。なんでこんな暑いんだ。寝る前は涼しくて寝やすかったのに。
「……って、重くて暑いと思ったら、お前かよ!?」
「……すぅ、すぅ……もう食べれないってばぁ~」
暑さの元凶はエミリアだった。何故か俺の上に覆いかぶさるように寝ていて見た目に反して地味に重くて暑いのである。
「ったく、人騒がせなエルフだな。ほら、起きろ。自分のテントに戻るんだ」
「……うっ、う~ん? ……はっ!? お、お前なんでここに居るんだよ!?」
「俺がお前のテントに居るんじゃなくて、お前が俺のテントに入ってきてるんだが?」
「……えっ? 私がお前のテントに入って寝ていたと。おかしい、これは何かの間違いだ。実はお前が私を……こ、この変態が!」
「そうそう……おいっ!? どうしたらそうなるんだよ!? 俺は幼女趣味は無いって言ってんだろうが!」
被害妄想が強いこのエルフは自分の間違えを認めず、俺をロリコン扱いしてきがやった。こうなったら強制的に退場してもらおうか。
「……ひっ、な、なんで近づいてくるんだよ!? や、やはり、私の身体が目当てか! このロリコンやろう!」
「ったく、もう面倒だから力づくで出て行って頂こうと思ったんだが? ほら、騒ぐんじゃない!」
衣類が乱れ恐怖に顔引きつらせあとずさる幼女、対照的に真顔で近寄っていく優男の俺の構図であるが、傍から見たら事件性があるようにしか見えないだろう。
――そう、目撃者がいたのである。
「もう、何時だと思ってるんですか、ふたり……えっ?」
「セ、セシリア! た、たすけてくれ! こいつ、こいつが私を辱めようと……ひっ!?」
「あぁ、セシリアいい所に来てくれた。このちびっこ勘違いしてるし、うるさいから連れていってくれないか?」
蒼い瞳を見開き微動だにしなくなったセシリア、エミリアは助けを求めるが頼みの人は思考が停止している。収集がつかないことに俺は軽くイライラを募らるせ、ちびっこの首根っこを掴んで外に投げ捨てるように放置した。
「勘違いしているようだが、このちびっこが勝手に俺のテントに入ってきたにも関わず、俺を犯罪者扱いしたんだ。——いい迷惑だよ。悪いが面倒見てやってくれ」
「あ、あぁ。そうでしたか、よ、良かった。フランツさん幼女趣味があったのかと一瞬だけ心配しました。では、私が責任をもって面倒見ますので、おやすみなさい。エミリア夜中に騒ぐのは駄目ですよ。ほら、いきましょ」
「……う、うん。セシリアごめん」
少しはお灸をそえられたかな? ちと、やりすぎた感はあったが、俺の安眠と名誉のために強行に出たことは後悔はしない。
セシリアにも事情は説明したし、たぶん大丈夫だろう。大丈夫だよな!?
というか大丈夫であってくれ! こんな騒ぎで彼女との仲が悪くなるのも嫌だしさ。
てか、この世界でロリコンって言葉を聞くとは思わなかったぞ。言葉と言えばなんで俺この世界の言葉がわかるんだろう? う~ん。考えてもしかたないか、眠いし寝よう。
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