二十一章 男性嫌いなちびっこ

「セシリア……まだ王都に着かないのか? かなり歩いたとおもうんだけど……」


「近いとは言いましたが、まだ一日ぐらいはかかりますよ? 私は最初に3日にはかかると言ったはずですよ」


「私達は慣れてるとはいえ、お前ほんとヘタレだな。もっと身体と精神を鍛えろよ」

セシリアから王都が近いと言われて頑張って野山を進んでいたが、一向に王都とやらは見えてこないのである。たっく、元引き籠りゲーマーの体力を期待しないで欲しいものだ。


「エミリアさ、ほんと口が悪いよな。せっかく小さくて可愛い成りしてるのに勿体ないぞ?」


「……はっ? 私は男が大っ嫌いなんだよ! 可愛い? お前に言われてちっとも、うれしくもないんだよ!」


「あぁ、エミリアは男性が苦手なの忘れていました。悪気はないのでフランツさんもどうか落ち着いてください」


「セシリア! 苦手じゃない。だ・い・っ・き・ら・い! なんだよ! 特にこいつみたいな女を欲情した目で見る奴はな!」


「……そうか、苦手だったの……っておい! なんだ、その欲望の獣みたいないわれようは!? 俺はこう見えても無防備な女性に手を出したことは一度もないぞ」

自分で言っていて悲しくなる。虚しいぜ……

にしても、男が苦手ってレベルじゃないぞ。いや、これもしかして……先ほどのセシリアとのやり取りを思い出せ。


——そうか、彼女は百合なのかもしれない。


そっちの界隈は疎いのだが、世の中には一定数いるらしい。

ましてや相手がセシリアであれば、俺の性別が変わったとしても彼女に好意を持ったに違いない。それほど、魅力的な子なのである。

心の中で勝手にエミリアの境遇に同情していたのだが追い打ちがかかる。


「実際、セシリアの膝の上で気持ち悪い顔していたのはお前だろう? 私を初めて見た時も顔が緩んでいたしな!」


「……ぐっ、だ、だがな? 俺は幼女趣味はないんだ。セシリアのようなお淑やかで、女性らしい体躯が好きなんだ。なので、エミリアのようなお子様体系はこっちから願い下げってことだ」


「……うぐっ。た、たしかにセシリアの落ち着いた女性らしさ、身体つきを羨ましく思う。だが、絶対に! お前にはセシリアはやらんぞ! そ、それに幼い体躯が好きな者が一定数はいると姉上が言っていたぞ!」

俺に妹がいたらこんな感じに喧嘩したりしたのだろうか? 思いの外、素で言い合えるのだから、相性自体はいいのかもしれない。——いや、ないか。


「……二人共、どさくさに紛れて私を褒めて頂けるのは嬉しいですが、内容が卑猥すぎますよ。本人を前に言って良いことではありません。それにしても、仲の良い兄弟が喧嘩しているようにしか見えないですね」


「……ごめんなさい。えっ!? だ、誰がこんな奴と……」


「……ごめんなさい。でも、こんな妹は願い下げだぞ……」

セシリアは青の瞳を細め、微笑ましそうに俺たちを交互に見やる。何処となく拗ねているようにも見えるのだが気のせいだろう。


「わかったのならいいのです。さて、陽も陰ってきましたし野営の準備をしましょう。エミリアは夕飯の支度をお願いします。私はテントの準備を終えたら、周囲が安全かどうか見てきます。フランツさんはお疲れでしょうから、ゆっくりしていて下さい」

セシリアの指示は的確で配慮も完璧。俺たちは各自、指示に従い行動を開始する。

と言っても俺は準備されたテントで休憩なのだが。

にしても、今日も疲れたな。洞窟探索をしてロスコフを手にいれて、エルフにあって喧嘩して。一人で居た時では無かった人の温もりがある。やっぱソロぼっちは寂しかったってことなんだろうな。

少しだけ、目を閉じよう。彼女が戻ってくるまで……

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