四章 魔法剣 フラムベルク

こんな女の子が本当に魔物を倒せるのだろうか? 

スライムに相対するセシリアの背を見ながら俺は内心では心配している。


彼女が渡してくれた回復薬を使い治療を終えた俺は成り行きを見守っているのだが、気になっていることがある。本人は魔法剣士と言っていたが眉唾物である。実際、転送を失敗しているわけだから、心配にもなるってもんだ。

可愛いなりをしているがRPGなどでは最弱と言われるスライムであっても魔物なのだ。


「スライムは物理攻撃に耐性が高く、剣や槍などでは討伐に時間がかかります。ですが、魔法使いや私のような魔法剣士にとっては得意とする相手なのです」


『今から実演をします』

そう言って彼女は右手に持った剣でスライムを縦の一閃で切り割く。

スライムは豆腐のようにあさっりと切断されたが、よく観察すると分裂して数が増えている。体積は減っているように見える。だが、数が増えるのはなかなかに厄介である。

「なるほどな、これは厄介だな。細かく刻むのもかなりの労力だろうな……」

俺は魔法が使えないので、こいつの相手はしたくないな。—―疲れそうだし。

そう心中で嫌悪しているとセシリアが次の行動に移るのが横目に見えた。


「個体差もあるのですが、剣が通りにくい個体も居るので注意ですよ。では、ここから一気に片づけますね。—――焔剣フラムベルク!」

剣の名を呼ぶ前に詠唱があるようだが、転送と同じように俺には聞き取ることが出来なかった。もしかしたら魔法は独自の言語があるのかもしれない。

真っ赤な炎が吸い込まれるように彼女の持っている剣へと宿り刀身が生き物のように靡く。不思議なことに髪や衣類に火は燃え移らないようで、逆の意味で感心する。


炎を纏った剣を縦、横、斜めと薙いでいく。斬られたスライムは面白いように蒸発、または消し炭になっていく、彼女がそこで剣を振るい舞うたび、刀身の炎も彼女に追従し紅の軌跡を描く。

その姿は剣舞ように洗礼された動きで、彼女の可憐さが加わわり見るものを釘付けにする。


それに見惚れていた間、スライムはすべて倒されていた。

俺の出番はそもそも無かったのだけれど、彼女の力量が本物であったと思い知らされた一件であった。


「フランツさん終わりましたよ。呆けていないで移動しましょう。立ち止まっていたら魔物達がまた集まって来ますから」

そう言って彼女は俺の手を取り立ち上がらせ共に駆け出した。


「あ、はい。セシリアさんの実力は本物だったんだな。内心疑ってた……ごめん」


「だから言ったじゃないですか! 私は魔法剣士だと。これでも……実力はある方なんですからね!」

一瞬、彼女の片眉が上がって機嫌が悪くなったかと思ったら拗ねているような、恥じらいと言うか……うん。可愛いな。

こうして森のをかけて町へと向かのであった。

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