二章 出会いからの脱出
「ね~え? き……君!」
人が気持ちよく寝ているというのに、起こそうとしているのは一体誰だ?
――あれ? 人の声? 確かに聞こえる……人だ!?
「お~いってば! こんな草原の真っただ中で寝てたら……きゃっ!?」
『ごつんっ!』っと鈍い音が草原に木霊する。
俺が勢いよく上半身を起き上がらせたことにより、俺の頭と謎の声の主の頭がぶつかったようだ。俺たちはお互いに頭を抱え悶絶する。
「いってぇ!? くっそ、こんな近くでおこすやつがあるかぁ!」
「そ、それはこっちのセリフです! 親切で起こしてあげようとしたのに……あいったぁっ……」
声の主は女性で、だいたい20代前後ぐらいだろうか? 髪は腰までかかる金髪のロングヘアーで瞳は青色、目尻がやや下がり気味で口調からもわかるが、おっとりしているイメージだ。
服装はこれは騎士なのか? ロングドレスのような純白の衣類の上から胸当て、腰回りや腕に甲冑のようなものを付けている。
武器はロングソードよりやや短めのスモールソードに似たような物と小さなバックラーのみ。
――騎士にしては軽装だな。
「あ、あの! ちゃんと私の話を聞いていますか?」
まじまじと彼女を観察していたら俺の目の前に整った顔が目前まで迫っていて、話半分であったけれど無言で頷く。
「あぁ、すまない。えっと、ここは迷いの草原と言う場所で、対策なしで迷いこんだら一生出れなくなる。って話だよな?」
なにが迷いの草原だ。普通は迷いの森などが定番だろうに。
あとだな? 昔とある魔女様がこの草原を作って人間を誘い込んでいたとかなんとかって話も胡散臭いよな……
「そうです! ここは迷いの草原で、たまたま私が通りかかったら草原のど真ん中で大の字になって貴方が倒れているのを見つけたんです。最悪の場合、魂だけで草原に彷徨うことになっちゃうんですよ!」
「お、おう。それはさすがに困るな。で、命の恩人様のお名前を教えてくれるかな? ちなみに、俺はフランツだ。」
この子は俺と同じプレイヤーだよな? まさかNPCじゃないよな? 気になったので名前を聞いてみる。—―けして、ナンパとかではない。
「フランツさんですか。私の名前はセシリアと言います。こう見えて魔法剣士してるんです。フランツさんの職業はなんです?」
セシリアは立派な? 胸を張って自身の職業と名を教えてくれる。
明るくていい子なのはわかるが、少々警戒心が薄いのではないだろうか。
それにしても魔法剣士? そんな職業なかったよな?
そもそもメモリーアースに魔法はない。正確にはスキルがあって魔法じみたことは出来たりはする。これは他のゲームに飛ばされたか? う~ん、そんなことありえるのだろうか。
「俺の職業は剣士だな。ところで、この草原を抜けることは出来るのか?」
少し考えたが、この世界の流儀に沿って無難な回答をし草原を抜ける手段を彼女に聞いてみる。
「剣士ですか、古風ですね。あぁ、草原を抜けるのは簡単ですよ。これを使えば一発で脱出することが出来ちゃいます」
そう言ってセシリアは腰に下げている小袋の中から羽のような物を取り出し、それを掲げ呪文を唱える。彼女の周りの地面から淡い光が浮き出し、光の柱となり上空へと延びていく。
「フランツさん、手を出してください。早くしないとおいていかれますよ?」
「あぁ、おきざりになるのはまっぴらごめんだ。頼む」
こうして俺は彼女の手助けで迷いの草原を抜け出すことに成功したのであった。
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