イカロスの到達(テーマ:日と2)

 あっづい……

 締め切ったガレージの中で、俺たちは二人でマシンをいじっていた。翼を二重に着け、浮力を上げ、強いロケットエンジンでどこまでも飛べるだろう。

「にしても、なんで中古の反重力装置にしたんだよ」

 俺は、マシンの下で機械の調整を続けている相方に話しかける。

「あ? オマエ、新品の反重力ユニットがどれだけするか知ってる?」

「高いってことだな」

「俺らじゃあ、買えねえのよ」

 ずっといじりながら言っていたが、急に立ち上がった。ボディをよけながら、するりと飛び上がる。

「まあ、この骨董品ではあるがロケットエンジンに、反重力ユニットの同時作動で、簡単に重力圏は振り切れる計算だよ」

「これで、俺らも宇宙に行けんのか」

 人が手軽に宇宙に行ける時代。

 僕らは手作りのマシンで宇宙を目指す。

「けど、本当に行くのか?」

「行くだろ!」

「でも、太陽って……」

 この暑さの原因とも言える燃える星、太陽に行くんだとこいつは言った。

「でも、イカロスはさ」

「誰?」

「前時代の神話の話」

 そういうと彼は、「はっ」と笑った。

「そんな昔ばなし」とバカにするように。

「まあ、聞けよ」

「なんだよ」

「そいつは、蝋の翼で太陽に向かって飛び立って、途中で蝋が溶け、地上に落ちたんだとさ」

「で、どういう格言なんだ」

「つまり、暑いんだよ」

 そこで彼はさっきからずっと持ってたレンチを取り落とす。どうやら今の今まで気づいていなかったらしい。

 夏の暑さは、だいたいアレの核融合だというのに。

 頭は良いはずなのになぁ。

 誰も太陽には到達できない。

 焼けるとか、そういうレベルではないはずなのに。

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