目覚めと戦気《オーラ》
──っ眩、しい?
突然感じた強い光の刺激に、思わず眼を閉じる。
「…………★※※☆◑◯」
「※☆◑※※……!!!」
──なん…、あ?
音が聞こえる。 聞いたことのない音…。声…なんだろうか? それすら分からない。…頭が、働かない。
こんな身体の反応はこれまで感じたことはなかった。
──だめ…だ。何も、考えられない。 思考を…続けていられない…
…そのまま、俺は最初の意識を手放した。
━━§━━
そんな、不完全な覚醒から三年後…。
俺が再び意識を取り戻したのは、それから時の流れた約三年後のことだった。
目覚めた時は、まぁさすがに驚いた。
困惑して、混乱した。 …何せ身体が全くの別人になっていた。
別人というか、完全に幼児だったし…
その後すぐに状況の把握に努め…ひとしきり混乱に身を委ねた後は、素直に認めることにした。
自分が全く別の世界に生まれ変わったのだということを……
生まれ変わりについては自分自身が証人だ。 前の記憶がそっくりそのまま残っているのに、身体が別物になっていたのだから。
或いはもう少し踏み込んで、過去の記憶が本当に自分のモノなのか、そんな事を考える必要はあったのかも知れないが…。
生憎…俺は俺の記憶を疑うなんて、そんな器用なマネは出来ない。
だからこそ…生まれ落ちてからの三年を、自意識なく過ごしていた事実に背筋を冷たくしたこともあったが…。
そのお陰で言語習得に異常が発生しなかったと考えると、今は必要な空白だったと納得している。
そして、此処が元とは違う世界であると結論付けた根拠だが…。 …それも簡単だった。
そう考える他にないものが、この世界にはあったからだ。
…それは、目覚めてすぐに感じることが出来た。
──自分の内と外に感じたこともないエネルギーが存在している──
それがとてつもないポテンシャルを秘めたエネルギーだということは、疑う余地がなかった。 …それほどの存在感。
ここが以前と同じ世界であるはずがない。
元の世界にも在って俺が気付いていなかっただけ? …それは考えられない、とても。
──『これ程の
俺が別世界への転生を信じる理由なんて、それで充分だった。
そして、確信めいた予感が俺にはあった。
今世では、この力を探求する人生になるのだと……。
ーーー§ーーー
そして現在に返り…。
俺は七歳を迎えていた。
つまり意識を取り戻してから四年という事になる。
それだけの時間を進めたのだ。 …もう未知の力のほとんどは解明済み。
とは、残念ながらなっていない。
周りに漂うエネルギーについては全くの手付かず。 『なんとなく内にある力と似ていて、だが全く別モノのようにも感じる』 なんていう曖昧な感覚から一歩も抜け出せていなかった。
内側の力についても、今日…というか、ついさっき覚醒したばかりで、まだまだスタートラインというところである。
……そう、ついさっきだ。 …本当に残念ながら…
俺は今、村外れにある納屋の中にいた。 最近はここで習得の為の修行を行っていたのだ。
だが、勘違いして欲しくはないのだが…。 決して習得に四年かかったというわけではない。
本格的に訓練し始めたのがおよそ一ヶ月前だというだけだ。
何故、目覚めてすぐ訓練を開始しなかったのかと問われれば、…順序だと答えるしかない。
前世でも行った身体掌握は、自身の知覚・神経を躰の隅々にまで張り巡らせ、身体能力やその精度を格段に引き上げる技術だ。
その工程は身体の外側、浅い部分から奥深くへと、根を張るように行われる。順番を入れ替えることは遠回りにしかならない。
この力が身体の最奥にあると感じる以上、手を付けるのは充分に身体掌握が済んでから。 …俺の直感がそう言っていた。
…そう、言っていたからこその選択だった訳だが…。
まぁ、それはどうやら普通に判断ミスだった様で…。
いざ力を得てみて分かったが、どうやらこの力は肉体以上に精神と深く結びついている。 故に身体を十全に整えてから習得に取り掛かるという俺の計画には殆ど…、いや全くと言って良いほど意味が無く…。 むしろ早ければ早い程……。
「はぁ…」
自分の身体の周りに渦巻く強大なエネルギーを見て、おもわず後悔が口から漏れる。
もっと早くから訓練してれば…ホント馬鹿をした
俺はオーラを
──ドゴォッ!
その衝撃が、地面と納屋を揺らした。
地面に振り下ろし、大地を揺らしてなお、傷一つない拳に身を震わせる。
「はぁ…俺の四年間が…クソっ…。 でもまぁ、仕方ないよな…」
未知の力に、これまでの経験と感覚を疑わず当て嵌めてしまった後悔はあるが…だとしても、それも結果論。
此処で全ての物事を最良の結果に納めようなんてのは…所詮は無理筋なのだ。
…そう自分を必死に慰め、悪態を付きつつ埃の舞い落ちる納屋を後にする。
ちなみに、この力についてだが…とりあえず『
…身体から発せられて、その身に纏うエネルギー。
…オーラ
何とも…分かり易いだろ?
──帰路。
通い慣れた道を歩く。
辺りは一面農地で建物は数えるほどしかない。
「のどかと言えば、聞こえは良いんだろうがなぁ」
俺はこの地で七年(俺の記憶があるのは四年)過ごしてきたが、余り好きにはなれなかった。
『サレオン』 それがこの村の名前だ。
バーゼル辺境伯とかいう奴の領地にあって、皆農業を生業にしている。 しかし、その暮らしぶりははっきりと言って貧しい。
食事はいつも麦粥と干し肉、たまに追加で堅いパンが付く。 …量も栄養も味も、何もかも足りない。
しかも、信じがたいことに、これでも我が家が村一番の農家だと言うのだから…
他は推して知るべしといったところだろう。
周りの、目に見える範囲に彼等の姿はない。
…よかった。
俺はまだ、彼等を見て完全な平静を保ってはいられない。
俺にとって、心を乱されるというのは、ただそれだけで煩わしいことだった。
さて、切り替えよう。
今日という日は、俺がオーラを習得した記念日だ。 出来ればご機嫌でいたい。
そう、俺はこの世界で初めてのオーラ使い‥‥
…いや、つい他にはいないと無意識に決め付けてしまったが…。
「俺以外にいんのかな…オーラ使えるヤツ」
いて欲しいと思う反面、難しいと考えてしう自分がいた。
俺ですら、……俺ですらってのはちょっと自意識過剰だろうか? いやでも、前の世界では少なくとも『個人』では最強だったはずだし自惚れってほどでも…。 …やめよう
俺も、前世の記憶と経験がなければオーラには辿り着けていない可能性が高い。 習得どころか認識するのも難しかったはずだ。
そしてこの世界の住人、俺はまだこの村の人間しか知らないが、特に身体的に優れているということもない。 寧ろ栄養失調気味で弱いまである。
オーラを得るのは大変そうだが、果たして
まぁとりあえずは、エドウィンにでも聞いてみれば良いだろう。
習得して分かったが、オーラを発現した者とそうでない者の間には、隔絶した壁がある。
隠すつもりがないのであれば、その存在は必ず語り継がれるはずだった。
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