09.天然由来のドラゴンパワー
町で一晩過ごした。宿はギルドで紹介してもらったぜ。
いやぁ俺は飯とかは食えないんだけどね? 俺、初めてのこの世界の宿屋。オカモチの中ですやぁと過ごしました。
ベッドとかあっても寝られるわけないだろ。こちとら冷やし中華だぞ、いいかげんにしろ!
まぁご飯付きだったから俺の身体は食べられることなく休ませることができた。キュウリやハムも完全復活! どっからきてるんだろうねこのキュウリとか。
あとこれ、多分俺って腐らないな。ドラゴンパワーって便利。冷蔵庫いらずだ。
……でも腐らない食べ物って逆に怖くね? 添加物とかさぁ……ドラゴン由来の怪しいパワー……まあ天然由来成分っぽいし大丈夫かな。
まぁそれはさておき、俺達は早速オークを狩りに来ていた。
え? 最初のうちはモンスター狩りに行かないで装備を整えた方が良いってアドバイス貰っただろって?
バーロー! うちのナツ様にそんなん不要なんだよ! へへっ、いきなりCランクの逸材なんだぜ?
あ、俺?
俺は非常食、もとい常食だよ。じゃなかった無害な従魔ですよ。ええ。
「ゴンさん、いいかげん機嫌なおして」
「へっ、ギルド職員に将来のAランク認定された人はいいですね」
「まぁまぁ。でもゴンさん言ってたじゃない? 『俺は目立たない方が良い』って」
! そうだった!
だって普段は力を隠してるけど実は最強とかめっちゃカッコいいじゃん!
え? 普段から頑張って全力出してる方がカッコいいって? やれやれ系主人公にはもう飽きた? ばーろーぅ! ろーぅ! ぉーぅ。(セルフエコー) 俺はそもそも最強チートになりたくてドラゴンに転生したんだぞ!? それもこれも楽をしたいからだ! 普段から必至こいて汗かいて頑張ったりしたくないんじゃ!
あ、今は冷やし中華だから汗腺ありませんでしたね。ってやっかましいわ!
まぁそんなわけで、俺は強さを隠して裏からこっそり、みたいなのをしたくてね。
……まぁ、隠すほどの強さが無かったわけなんだけどね。うん。いや、事前に麺食われてパワーダウンしてた感はあるけどさ。
「そうだな。俺の方が大人げなかったぜ。謝る」
「えっ。ゴンさんって大人なの?」
……大人なのかと言われると、赤ちゃん未満だった気がするぞ? 卵から孵る前に料理されちゃったからなぁ。前世でも社会人になってたわけでもないし……子供で良いのかなぁ。
「とにかく、不祥事を黙っとくことを条件に金を借りることができたし……上手く行かなくてももう2,3日は大丈夫だからな」
「うん、それにしてもゴンさんはこういう交渉が得意なんだねぇ。冷やし中華なのに」
昨日の宿代はギルドの受付の人から善意で借りたポケットマネー(出世払いで返す予定)で何とかなったが、今日明日はともかくこれからどうするかと言うことを考えると絶対に足りない。
あ、一応服もボロ服からちゃんとした服に変えたぞ。なぜか子供チャイナドレスだけど。シニョンが似合うぜ。可愛い。なんで服屋にあったかは謎だが安かったのでな、これはもう運命だねと即買ったわ。
で、手っ取り早く金を稼ぐならやはり討伐依頼だとのこと。特にオークは討伐報酬と素材報酬で二度美味しいそうだ。こりゃ狩るしかない!
ちなみに上手く行かなかった場合、というのはオークが見つからなかった場合だ。
ナツの実力であればオークは余裕。と、受付の人から太鼓判を押されている。俺もそう思う。だって150kgを片手で持ち上げる子だよ? 俺のパワーありとはいえ。
そんなんオーク余裕に決まってるやん。ぶちコロコロがしてくれるわ。
と、森の中をオークを探して彷徨い歩く俺達。迷子になった? いやいや。空を飛べばすぐ帰れるからね。迷子になんてなってないよ。
「大丈夫、道はわたしが分かるから」
「えっ、そうなの? ……町はどっち?」
「あっち」
と指さした方向をみれば、木々のスキマを抜けてちらりと外壁が見える気がした。ほおふ。や、やるじゃないナツさん。
「オカモチの中で運ばれてるからかな。方向感覚が狂うわ」
「自分で飛ぶ?」
「いざと言うときに備えて運ばれておくよ」
あと飛ぶと疲れるんだよね。まぁいざとなったら飛ぶけど。
と、見つけたよオーク。木々をすり抜けた先に1匹のっしのっし歩いてる。散歩かな?
よし、特別にオークのお散歩ツアーを組んでやろう。行き先はあの世だぜ。
「ゴンさん、少し食べるね?」
「おう。キュウリも食っていいぞ、回復したし」
「キュウリもいいの? わかった……もぐもぐ……はふっ! おいひぃ……ぷはぁ……」
そう言って麺を5本くらいと錦糸卵6枚、あと千切りキュウリ5本を食べるナツ。
「はふ、しゃきしゃきぱりぱりでただのキュウリなのにこんなにおいしぃ……ん、んっ、錦糸卵と麺のコラボさいこぉ……♪」
相変わらずおいしそうに食べるなぁ。
そして、ぎゅ、ぎゅと手を握ったり開いたり。……拳だけが光る。何それカッコいい。
「うん。さすが冷やし中華……とう!」
そしてオークに向かってパンチ。手からぽひゅん! と光が発射された。
ひゅーん、と投石のようにやや放物線を描いて飛ぶ光。そして見事オークに着弾。ばぼん!
オークの頭が吹っ飛んだ。
「「えっ」」
一撃……だと?
頭を失いどさりと倒れるオーク(死体)……えーっと。
「と、とりあえず持ち帰ろうか、ゴンさん」
「……持てる?」
「うん。だからもう1本、いや、3本だけ麺食べて、いい?」
くっ、そんなひとさし指を咥えて「ぢーっ」と俺のこと見つめやがって……そんなん、食べさせちゃうに決まってるだろ!
「……しょうがないにゃあ! 3本だけよ!」
「にゃあ? えと、ありがとゴンさん」
くくく、ナツめ。つるつるしこしこの弾力ある麺の虜になってやがる。あんっ、くすぐったい! いやそれ程でもないけど。あれ? そういや触覚もちょっとあるんだなぁ。
「んんっ……はぁ、ゴンさんの麺おいしいよぉ……ん、ちゅるるっ……♪ 昨日宿のごはん食べたけど、やっぱりゴンさんの冷やし中華が一番……ん、はふっ。1本につながってて歯ごたえが……んっ、ん……癖になるぅ」
ぷはぁ、と恍惚に頬を染めるナツ。
さすらいの料理人が精魂込めて作り上げたドラゴン卵料理である俺(王族に出せるレベルの高級料理)と一般宿屋の飯と比較したら、当然俺の方が美味いだろうよ。
「はふ、落ち着いた……じゃ、オーク運ぶね。よいしょっと」
そしてナツは右手でオカモチ、左手でオークを持ち上げてた。
ナツさん強ぇぜ……惚れる! あ、俺のパワーだったわ。俺に惚れる!
……あれ? ナルシストかな?
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