幼馴染の力と壁の向こうの〇〇〇

”メガロドンって最近の映画のあいつか”


”巨大なコンテナ船を食いつぶすあいつだよな?埼玉の川はどうなってんだよ(笑)”


”絶滅した生き物はすべて埼玉に集結してたのか!?”


”その可能性は高そう。埼玉に行けばすべての生き物が見れそう”


”埼玉って海ないのに不思議だなぁ”


俺はコメントを流し見しながら、メガロドンを見る。スイスイ泳いでいる。しかし、悠々自適に泳ぐだけで巨大な波が押し寄せる。とりあえず、俺はトライデントで波を抑える。これ以上は地元に被害が出る。


すると、メガロドンが異常を察知したみたいだ。俺の方にヒレの向きが固定され、そして、顔が浮かびあがってきた。


”でっか。怖すぎるわ”


”あっくんなら大丈夫。頑張れ!”


”わくわく”


俺とメガロドンは向き合う。俺はトライデントを構え、メガロドンは俺に突っ込んで来ようとしている。勝負は一撃で決まるだろう。


しかし、


「人のあーくんに何をしようとしているのかしら?」

「!?」


イリスがメガロドンの真横に気配なく現れた。ぎょっとしているメガロドンをよそに、居合の姿勢をとっている。


「死になさい、≪凍炎:霧時雨≫」

「ガッ・・・」


全長30メートルはありそうなメガロドンの首を真っ二つにした。


「すげぇ・・・」


”イリスちゃんってあんなに強かったの!?メガロドンが真っ二つじゃん”


”最強すぎる!”


”ぜひ、うちの会社に来て欲しい”


”檻の中にいる山本と社長どんまい(笑)”


”いいもの見させてもらいました!≪1000≫”


イリスは魔法を使える上に、超絶レアな二つの属性持ちだ。属性は炎と氷。相反する属性を百パーセント有効に使うことによって、会社のエースになった。炎を凝縮した刀身が触れたものを焼き尽くし、氷で刀の切れ味をあげている。


それによってメガロドンという超巨大な生き物を真っ二つにするという離れ業を成し遂げることができた。しかも、氷や炎の魔法を使って、遠距離攻撃もできるので山本よりも討伐数が圧倒的に多かった。


そんなわけなのでうちの会社では絶対的なエースだったわけだ。本当はもっといい会社に入れたはずなんだがな・・・


「どう?惚れ直した?」

「いや、全然。知ってたし」

「うぐ・・・、アレ?でも、『知ってた・・・・』・・・?ということは、つまり、私とあーくんは言葉で何も言わなくても通じ合っているということ!?もぉ、あーくんったらぁ」

「言ってないんだよなぁ」


どんどんイリスが残念になってる。あのクールなイリスはもう見れないらしい。それよりイレーナはどこだ?


「ふぅ・・・まさか凍らせられるとは・・・」

「あら、生きてたのね」

「後で〇します」

「返り討ちにしてあげるわ」


水中でひと悶着あったらしいが会話の流れ的にイリスが勝ったのだろう。珍しくイレーナが悔しそうにしている。だけど、そんなイレーナも可愛い。


「グス・・・酷いわあーくん・・・」

「ふん!試合に負けて勝負に勝つとはこういうことを言うのですよ!」


”彼女と幼馴染でしっかり線引きしてるのは偉い”


”俺はイリス×あっくん派なので、イリスちゃんに頑張ってほしい”


”俺は断然イレーナさんとあっくんにくっついて欲しいわ”


”山本×あっくんが一番興奮するな”


”その薄い本はどこに売ってるんですかぁ!?”


イリスとイレーナが対照的な顔をする。そして、触れてはならないコメントを見た気がしたので、俺は見なかったことにした。


とりあえずはこんなところかな。撮れ高もしっかりあるし、食材も確保した。ご近所さんに配る分のサザエも手に入った。ただ、今日は遅いし、明日にでも届けるかな。


「今日の配信はここまでです。面白いと思っていただけた方がいたら、高評価とチャンネル登録をお願いします。次の配信は明日の早朝です。朝早くからになりますが、見てくれたら幸いです”


”楽しかったです。明日絶対に見ますね!”


”想像以上に面白かった!チャンネル登録しました”


”もっと伸びて欲しい。これで器材を揃えてください≪2000≫”


”早起き頑張ります!”


俺は最後に頭を下げて、配信を切った。そして、俺の背後ではイレーナとイリスが喧嘩をしているので、ため息をついた。


「イレーナ、イリス。帰るぞ」

「はぁい!」

「ちょっ!待ちなさい!」


イレーナ、そして、イリスが俺の後に続いた。



家に帰ると、俺はサザエをつぼ焼きにした。そして、ポテサラとビールを用意した。イリスも頑張ってガサガサしてくれたので三人で乾杯した。会社があれば明日に備えては寝る準備をしなければならないと考えるといい生活ができるようになったものだ。


「ふぅ、美味しかったのですぅ」

「本当、こんな時間に飲んだのは久しぶりね」

「確かになぁ。会社にいた頃じゃ考えられないなぁ」


社畜の頃と今の生活を比べてしまう。やっぱり人間、好きなことをして暮らすのが一番だ。すると、


「イレーナ、ほっぺに醤油が付いているわよ」

「え?どこですかぁ?」

「じっとしていなさい、ん、取れた」

「ん、ありがとうございます、イリスさん」

「お礼はいいわよ」


二人の仲が良くなっている。俺としては嬉しい。俺はほっこりした気分になって、時計を見た。時刻は22時を回っている。そろそろいい時間だ。


「それじゃあ解散だな」

「そうですね」

「そうね。布団を敷いておくわ」

「「ん?」」

「え?」


イリスが何かおかしなことを言った気がした。


「イリスさん、ここからは夫婦の時間です。家に帰ってくださいな」

「嫌よ。このまま初夜を迎えるの」

「あ?」

「は?」


・・・前言撤回。二人ともいきなり険悪なムードになった。


「邪魔者は消えてもらってもいいですかぁ?」

「嫌よ。これからは私とあーくんの恋人の時間よ。イレーナこそ消えてもらえるかしら?私の家の鍵を貸してあげるから」


さっきまで仲良くしてたんだからそのままでいてくれよぉ・・・


俺の願いは聞き入れられなかった。まぁ喧嘩するほど仲が良いとも言えるからな。どうもそっちの可能性の方が高い気がする。


閑話休題。


仕方ない、俺が止めるか。


「イリス、これからはイレーナと俺の時間だ」

「あーくん!?」

「さっすが私のあっくん!よくわかってますね!」


イリスが泣きそうな顔をするが、心を鬼にする。こんな酷い男なんて忘れてさっさと別の男を探して幸せになってほしい。


「帰る・・・」


すると、イリスは背中に哀愁を漂わせながら力無く部屋を出ていった。


イリスが部屋を出ていくとイレーナが俺の背中に抱き着いてきた。


「さっすがあっくん!昨今のどっちつかずの優柔不断男とは格が違うのです!さてと」

「あのイレーナさん?なんで服を脱いでいるんですか?」

「イリスさんにスパっといったその姿に濡れちゃったのです!今夜は寝かせません!」

「あっ、はい」


イリス一難去ってまたイレーナ一難


今夜は寝れるのだろうか・・・


結局朝まで搾り取られたのは言うまでもない。



〇〇〇ピーの最中。


「あーくんがぁ・・・グス」


隣の部屋の壁際で涙を流しながら、未来の夫(仮)の嬌声を聞いていた。いつか泥棒猫イレーナからあーくんを奪うために、この屈辱をパワーに変えようと壁に耳を当てることが日課になっていた。しかし、


「なんなの、この気持ちは・・・私の大好きなあーくんがNTRされて悔しくて、涙が出てくるのに、なんで興奮してきちゃうのよぉ・・・」


イリスが何かに目覚めようとしているのは別の話。

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