第3話 契約

それから俺達は満身創痍の体を起こして先程まで座っていたベンチに座り直した。

俺はカバンからシガレットを再び取り出し、一本を童子に渡す。

更に自分用に一本取り出し咥えた。

そこで一つ疑問に思っていたことを童子に聞いてみた。


「なぁ、童子。

契約って何かすることってあるのか?」


それに対して童子は


「俺が知ってるのはひと昔前の契約だけだな。

今どきの契約の方法なんて俺等みたいな野良にはとんでもねぇ機密扱いだからな。」


「そりゃあ、何故に?」


「何故って、俺等みたいな野良が政府の見えないところで正規の契約なんてしたら問題が多発するからだろうな。」


童子の返答に対して俺は納得できた。

政府が管理している今でも裏の連中の手引で問題になることが多々ある。

その為、正規の契約方法が野良にバレたとなれば社会バランスが崩れかねん。

そのため俺は


「じゃあもうお前の知ってるひと昔前の契約方法で契約してみようぜ。」


なんて提案した。

童子はまさかそんなことを言われると思っていなかったのか虚を疲れたような顔をしていた。

そして


「ま、まぁいいけどよ。

取り敢えず針があればよかったはずだ。

これも別の野良に聞いたやつだから信憑性ないからな。」


なんて渋々の雰囲気を出しているが顔はずいぶんと素直みたいだ。


「安全ピンで良かったらあるぜ!」


「それぐらいがちょうどいい。

少し指を傷つけるだけだからな。」


童子に安全ピンを手渡すと自分の右手の人差し指の先端部分を傷つけていた。


「契約には血を使うから亜弗もしておけよ。」


そうして安全ピンを返された。

俺も迷うことなく右手の人差し指の先端を傷つけた。

正直先ほどまで殴り合っていたので頬から出ている血でもいいのではと思ったが童子曰く指が望ましいらしい。


「取り敢えず亜弗は、左手の甲に血で三角形書いて。

大きさは大きくていい。」


指示通りにやると次は俺と童子は左手を重ねていた。


「取り敢えずここからは詠唱に入るから離せって言ったら手を少し後ろに下げて俺の手と空間を作れ。

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』」


正直、なんて詠唱しているのか聞き取るのが難しかった。

別に俺の頭が悪いわけじゃない。

おそらくあやかしが使うと言われてる言語だろう。



そうこうしていると、詠唱が終わったのか俺の血で書いた三角形が淡く光り始めた。

そこで童子は


「ゆっくりだ。ゆっくりでいいからこぶし1つ分ぐらいの隙間を開けるぞ。」


と言われたのでその通りに行動した。

そうして手を話して空間を作ると俺の手の甲に書かれていた三角形は俺の手をすり抜けて中央に言った。

逆に童子の手からは淡く光った逆三角形が童子の手をすり抜けてきた。

そうして2つの三角形は合わさり六芒星となる。

そこで何かの文が頭の中に突如として浮かぶ。


「いいか、最後の詠唱文が頭に浮かんだはずだ。

今からそれをお互いに詠唱する。

失敗は許されないからな。」


その言葉を聞き俺は息を呑む。

そしてお互いに最後の詠唱が始まった。


「「我々はここに宣言する。魂の半欠片を相棒に託し、我ら二人で一人前となる。対等な関係を築き、互いのために努力を怠ることなく、裏切ることなく、我々は死を迎えるその時まで共ににあることをここに誓う。」」


一呼吸おいてから


「人間の名は参屋 亜弗。」

「あやかしの名は童子。」


詠唱が終わると同時に手の間の六芒星はそれぞれの手の甲に焼き付いた。

それは燃えるように痛いといったことはなく、むしろ、どこが気持ちよかった。

童子と繋がっている。

その感覚がとても強くあるような気がする。


「終わった〜〜」


そこでようやく童子の気の抜けた声が聞こえてきた。

しかしこれで俺もよくわかった。

契約はここに成立された。

その事実がとてつもなく嬉しかった。

そこで童子が急に一言


「だらしねぇ顔してるぜ。亜弗。」


その童子の言葉に俺は


「お前こそだらしねぇ顔www」


と笑いを返すのであった。

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童子と俺の青春 パム @pamutto

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