あの日の放課後

影束ライト

あの日の放課後


 十七時。今日は珍しく定時で帰ることが出来た。

 俺は高校出てから約三年、とある企業で働いている。


「夕陽を見るのは久しぶりな気がするな」


 街の中を歩いていると、学生服を着た少年少女がたくさんいる。


「学生、学校帰りか。……久々に行くか」


 帰り道から少しずれ、ゲームセンターに入る。

 遊ぶのは昔からあるレースゲーム。


「久々だけど、楽しいな」


 他にも格ゲーや、取れないクレーンゲームなど色々とやった。


「結構遊んだな」


 ゲームセンターから出ると、入れ替わりで学生のグループが中に入って行く。


「今日は負けないからな」


「受けて立ってやるよ」


「あ、あの景品欲しいな」


「いいね、あれ可愛い」


 ……懐かしいな。俺も昔は友達とゲーセンに入り浸ったな。



 ゲーセンで時間を潰し、ちょうど晩飯時、せかっかくなのでファミレスで食べることにした。

 中に入ると、時間的にもそこそこの人が入っている。


「……ごちそうさまでした」


 食事を終え、水を飲む。

 昔はドリンクバーだけで友達と何時間も話していたが、今となってはそんな時間も友達も無いな。


「帰るか」


 腹も膨れたし、なんか昔の事思い出したし、帰ろう。


 時刻は十八時過ぎ、辺りは暗くなってきたが、まだまだ人は多く、学生もたくさんいる。


 ……本当に今日は懐かしい気分に浸るな。


 ゲーセンも、ファミレスも、友達との無駄話も、あの頃はずっと続くと思ってたんだけどな。

 今となっては会社と家を往復する毎日。なんでこうなったんだろうな。


「ま、時間は戻らないからな。今更考えても仕方ない」


 別に後悔は無い。あの頃は楽しかった。それだけでいい思い出だ。

 ただ、今でもあんな気持ちになれる友達がいてくれれば……。


「通知?」


 スマホを見てみると、同窓会の連絡が届いている。


「行ってみるか」


 あの頃の放課後は戻らない、けどあの頃と同じような時間をもう一度過ごすことは出来るかもしれない。









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