第21話 家族崩壊

僕の家族は、不完全な形をしている。

母さんは、いない。

兄は、ダウン症で、婆さんが育ててくれた。

親父は、マイペースな人柄で、何事も、他人事だった。

婆さんのお天気な性格で、何とか、今日まで、来れたけど、

爺様のおしっこが、家族の形を壊し始めた。

所構わず、おしっこをする。

それは、雨の日に強い臭いを放つ。

誰が来ても、その匂いは、人間のものだとわかる。

ここで、僕らは、考えた。

車が、来れば、自分のデイサービスの迎えだと思い出ていく爺様。

僕らにとって、面白おかしい爺様は、婆様にとって、ストレスでしかなかった。

助ける手立ては、僕らには、ない。

「子供さんが、お爺さんの面倒を見ているんですか?」

行政の人に聞かれた時に、お婆さんは、ハッとした。

僕らに、負担を掛けてはいけないと。

爺様は、変わらず、あちこちで、ズボンを下げておしっこを掛け、ニコニコしながら歩いている。

「もう、限界だよ」

婆さんが、呟いた。

「いいの。夫婦が離れるよ」

「このまま、お前達に、迷惑は、かけれないだろう」

婆さんの声が寂しそうだった。

僕らが、いなければ、爺様と婆様は、一緒に暮らせるの?

「長生きするもんでない」

婆様が、寂しく呟いた。

僕が、もう少し、大人だったら、爺様を病院に連れて行って、認知症を治してありたい。

僕が、そう言うと

「本人は、どうなんだろうな」

いつも、他人事の親父が言った。

「本人は、楽しそうだぞ」

家に来る人は、みんな、自分のお客さんだと思い、笑顔で対応している。

宅急便の郵便物も、全部、自分の物だ。

「人の幸せなんて、わからんよ」

そんなある日、ついに事件が起きた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

忘れた事を忘れる認知症の爺さんは、面白い? 蘇 陶華 @sotouka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ