第20話 生きてる事も忘れるさ
爺様は、若い頃、気難しい人だったそうだ。
いろんな役員をこなし、街の人に頼りにされていた。
けど。
あの感染症で、自宅待機の日が続いて、爺様は、壊れ始めて行った。
家族の顔がわからない。
あんなに、字が上手で、年賀状を頼まれていたのに、
自分の名前さえ、書けない。
大好きな孫が、わからない。
その変化に、婆様は、泣いたり、笑ったり。
元々の育ちがいいから、暴れたり、怒ったりは、しなけど。
けど。
一緒にいる婆様の表情が曇っていった。
僕らは、
爺様を通してみる世界は、新鮮だった。
けど。
一緒にいる婆様は、辛かったみたいだ。
これが、認知症なのか?
本人は、全て、忘れて新鮮だ。
いろんな事を忘れていく爺様を
「かわいそうに・・・」
と。
婆様の友達が呟いた。
その瞬間、婆様の心の中で、何かが、壊れたんだ。
あたり構わず、ズボンを下げて、おしっこする爺様に
婆様が、叫んだ。
悲痛な声だった。
辛いのは、本人じゃないんだ。
一番近い人が、辛いんだ。
僕らは、事は、深刻だと思った。
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