第17話 爺様、ハーレムで転倒する。

我が家の一大事。婆様が、ついに、入院した。って事なんだけど、本当は、検査入院する事になったんだ。もちろん、僕も親父も兄も、全然、問題なかったんだけど、最近の爺様は、目が離さず、登校する小学生に声をかけた事件があったから、どうしようかと話になった。爺様は、悪意があって、声をかけたんじゃなくて、僕らが小さい時から、交通安全の声掛けや雪かきをして来たから、その延長線上だったと思うけど、今のSNS時代に、爺様は、ただの不審者として、映るみたいで、目が離せなくなった。爺様!昭和は遠くなったんだよ。親切で、声を掛けたのが、立っだの不審者になってしまったんだ。なので、爺様は、初めてのお泊まりに行く事になった。兄と爺様のお泊まりグッズの準備は、楽しく盛り上がった。施設に、お泊まりの時に準備する着替えは、必ず、名前を入れなくてはならなくて、大体の男物は、黒いから、サインペンで名前を書くのが、むずい。

「今は、白いペンがあるんだよ」

帰ってきた父に、笑われながら、兄とお泊まりの準備をした。てか、父親なんだから、手伝えと思ったけどね。お泊まりに行く当日、爺様は、どこかに散歩に行く所だったと思う。

「行くかい?」

「うん」

なんて、言われたのか、理解する間もなく、爺様は、父に行くかい?と聞かれ、施設行きの車に乗り込んでしまった。

「あれ?爺様は?」

見送る暇なく、爺様は、施設にお泊まりになってしまった。あっけなかった。

「行きたくない!」

誰もが、拒否すると思っていた。意外だった。あっけなく爺様が、お泊まりに出掛けて、兄と僕の2人になってしまうと、なんか、寂しくなってしまった。爺様のいない生活に慣れてきた頃、施設から電話があった。

「転倒したんだって?」

父が大きな声で、興奮していた。

「何?どうしたの?」

みんな驚いた。理由は、こうだ。爺様は、施設の中でも女性が大好きで、目を離すとすぐ、女性のテーブルに混ざってしまう。そして、世話を焼きたがり、転倒しそうになったご婦人を庇おうと、自分が転倒してしまったらしい。

「どうもな・・・」

父は、顔を顰めた。

「ご夫人達を、自分の婆さんと勘違いしているそうだ」

爺様にとって、そこは、ハーレムになっているそうだ。流石、爺様。

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