第13話 爺様、それを出したら捕まります。
我が家には、お気に入りのウッドデッキがある。親戚華たいただいた廃材で、作ったウッドデッキで、制作には、兄も関わった我が家全員での共同制作だ。僕は、まだ、小さくてよちよち歩きだったから、あまり、覚えていない。兄も保育園の頃だったけど、張り切って、ペンキ塗りをしていたそう。あの頃は、爺様も、しっかりしていて、基礎工事をやってのけた。が、そのウッドデッキを取り壊す事になった。兄は、また、不穏になってしまった。もう、雨に晒されて、10年以上も経過しているから、腐ってしまい、いつ、床が抜けるか、わからない状態なんだけど、もう一つ、どうしても、避けられない理由があった。
「お巡りさんに言いますよ」
お隣の奥さんは怒り心頭だ。それも、仕方がない。うちの爺様。トイレ以外で、用を足す事を覚えてしまった。それも、ウッドデッキの上から。我が家は、住宅街のど真ん中にあって、当然、お隣さんが住んでいる。爺様が、お腹を出す先には、お隣の庭先であった、リビングとキッチンがまっ直にある。爺様が、気持ちよく解放しているのを、目の当たりに見て、お隣の奥さんは、怒りに怒った。それもそのはず、お隣には、お年頃の娘さんがいるのだ。婆様が、何度、止めようと爺様は、関係ない。この間も、僕が学校から帰ってきたら、解放している最中だった。
「コラー!」
僕は、思わず叫んだが、爺様は、関係ない。何度、言っても忘れるのだ。結局、家族会議の結果、ウッドデッキを取り壊し、外には、出れない様にした。
「嫌だー!爺様のばか!」
いつも、爺様と兄は、衝突する。爺様の自由な行動で、我慢させられるのは、理由が理解できない兄ばかりだ。
「爺様なんか、いらない」
兄は、飛び出していった。足の悪い婆様は、追いかける事ができない。だから、僕が、追いかける事になる。
「兄ちゃん!」
5時のチャイムが町中に響く頃、公園の時計台の下に、兄を見つけた。
「お帰りのチャイムが鳴ったから、帰るよ」
「うん・・・」
あのウッドデッキには、兄の大事な思い出がたくさんあるんだ。だけど、爺様が、何もわからなくて、気持ちのままに行動している。それを兄に、わからせるのは、とても、難しい事なんだ。
「ねぇ・・・兄ちゃん、僕、考えたんだけど」
僕は、婆様に頼んで、また、知り合いから廃材を届けてもらう事にした。僕の腕前では、ウッドデッキは作れないけど、親父の助けを借りて、踏み台を作り上げた。もちろん、ペンキは、兄が担当した。
「これなら、部屋にも置けるし。部屋なら、爺様が、悪さする事もないね」
僕は、兄が、嬉しそうに目を細めるのを見て、嬉しく思った。
「届かない所の本も、これなら取れるしね」
当然、爺様には、内緒である。爺様が、踏み台から、解放するかもしれないので。
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