第21話 魔族来訪

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 タンポポから連絡があり、町へと向かった。

 久しぶりにリノアから会いたい……という。食糧事情も秋となったため、畑からの収穫があって改善したはずで、そんな中の呼び出しだけに、ボクも嫌な予感をふりはらうように町外れまでやってくる。

 一応、彼女とボクが会っていることは周りの人には内緒だ。

 多くのスピリトゥスを抱え、畑や野草の知識も豊富。この世界では稀有であり、あまり表立って活動することを望んでないボクとしては、存在を隠しておくに限る、との判断だ。

「実は、内々に勇者から『食糧調達係だった者は、何者だ?』と尋ねられておりまして……」

 魔王討伐に、彼女の推薦……というか、ファラント家の推挙で参加している。野草の知識が豊富で、魔王城までの食糧調達にも役に立つ……ということで。本来はリノアが参加する話だったけれど、それをボクが代役となったのだ。そこで、彼女にそんな質問がきたのだろう。

「今は誤魔化しておりますが、そのうち誤魔化しきれなくなるかもしれませんわ」

「父上にも?」

「話しておりませんの。野草に詳しい人がいる。でも人見知りで、表に立つことは望まないから……ということだけで、納得してもらっていますから」

 大切な魔王討伐に、どこの馬の骨とも知れない者が参加できたのは、ファラント家の影響が大きい。


「今はまだ、拒否していますが、我がファラント家も国家八貴族の一つ。ふたたび人類がまとまって魔王を討伐しようとなったとき、あなたのことを黙っておけるかどうかは……」

「魔王と人類は、どうして争っているの?」

 ボクの問いに、リノアはびっくりした顔をして「強大な魔力で、人類を滅ぼそうとしているからです」

 あの時も感じたけれど、確かに魔王の魔力はすさまじかった。でも、人類を滅ぼすほどか? というと疑問だ。そもそも、魔王は人類を滅ぼして何をしたい? 魔族は大して数も多くないらしいし、それほど広い領土をもつわけでもない。魔王と戦う理由が今一つ分からない。

「とにかく、勇者がさがしております。お気をつけなさいませ」

 熱血漢っぽく、あきらめの悪そうな人物だったっけ……。それが魔王を倒すという方向にむかっているときはよいけれど、ボクを見つけ出そうという方に執念を燃やしだすと、厄介だな……。このときはそう思っただけだった。


 農場にもどると、スピリトゥスたちがざわついている。

「どうしたの?」

「魔族が来たのです」

 ローズマリーがそう応じる。今はスピリトゥスたちが迷路に追いこんでいて、すぐの危険はない。

 彼女たちは毒や香りだけでなく、道を隠して相手を迷わせることもできる。相手が強いと、こうして戦わずに追い払うのがここの流儀である。

「でも、今回はしつこいのよ。一度離れても、また農場に近づこうとするし……」

 タイムのスピリトゥスも、そう困ったようにいう。「農場をめざしているのかもしれないわね」

「追い払えない、ということか……」

 ボクも秋となり、球根を植えて目を覚ましたサフランのスピリトゥスとともに、その現場に向かう。

 そこにいたのは露出の多い、華奢で幼い感じの体をつつむ服をきた、赤髪の少女だった。

「魔族の匂いを感じます」

 サフランもすぐにそういって警戒を強める。ただボクにとっては、大して怖くもない。それは魔王をワンパンで撃退しておいて、今さら少女の魔族にビビッていたら、変だと思うから。

 しかしボクも警戒しつつ、少女に声をかけた。

「キミ、どうしたの?」

「あぁ~ッ‼ オマエ、魔王様を泣かした! だから私が成敗……痛い、痛い。よくもやったな! そこに直れ……痛い、痛い、ごめんなさい、ごめんなさい」

 時おり彼女が謝るのは、ボクが腕をひねっているから……。


「私はザグバ! 魔王親衛隊三十七人衆の一人!」

 ザグバはそう自己紹介するが、ここは農場である。別に悪さをするつもりもなさそうなので、農場につれてきた。

「何しに来たの? それに三十七人って中途半端……」

「魔族は三十七人しかいないからな。ここには魔王を倒した男を見に来たッス。ついでに倒しに来た!」

「倒せないことは、さっき確認しただろ? 魔法をつかおうとして、簡単に腕を捻られておいて……。えッ! 魔族って三十七人しかいないの?」

「そうッスよ。魔王様を除いて三十七。私をふくめて三十七ッス!」

「魔族はそれで人族と戦っているの?」

「戦っている……というか、人族が襲ってくるので、蹴散らすだけッスよ。魔王様は世界を支配しようとか、考えているかもしれないッスけど、うちらは少数で、人族を支配するとかムリ! って思っているッス」

 なるほど、だからあのとき、魔王城まで抵抗もなくすすんだのか……。でも、人族が襲うから戦う? 何だか、きな臭くなってきた……。










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