第66話 新たなヒロイン候補


『サブクエスト:ツンデレな後輩』

『梨綾香の好感度をあげる −20/0』

『報酬:梨綾香がヒロイン候補に追加』


 報酬……ヒロイン候補に追加だと!?


(そんな報酬ありかよ!? てか、スキルくれねぇのか!?)


 俺は混乱する自分の心を抑えて、目の前の綾香を見据える。


「構えてください、先輩! 行きますよ!」


 どう見ても敵意MAXな綾香に、俺は戸惑った。


(案の定好感度はマイナスだったのか……でも、こんな敵愾心MAXな相手でもクエストはヒロイン候補に出来るって言うのか?)


 クラスメイトの飯塚さんであったり、他にも数人綾香以上に俺と接触してる女子はいるはずだ。


 だけど、その人達関連のクエストは出たことが無い。


(綾香は、なんで好感度クエストが出たんだ?)


「やぁっ!!」


『出鼻を使用します』


「くっ……!」


(考えられる理由は……)


 俺は好感度システムの対象相手を思い返した。


『滝川瑞樹 77/100 極難

 三田楓  42/100 難

 世津円凛 100/100 易

 兵藤詩織 100/100 易』


 楓……北部で噂になるくらい美人だ。

 凛は……楓と一緒に二大女神とか呼ばれてたな。

 詩織……も実は、テレビで千年に一度の美少女だとか日本一の美少女と言われる有名女優だ。まぁ滝川さんには勝てないけど。


 そして、言うまでもなく滝川さん。


(うーん……)


「やぁっ! せい!!」


『出鼻を使用します』

『出鼻を使用します』

『出鼻を使用します』


『返し胴を使用します』


「──胴!!」


「きゃっ!?」


 確かに、目の前の綾香もかなりの美人だ。


(けど、それで言ったら飯塚さんもかなり可愛いよな?)


 じゃあ流石に違う理由か。


(うーん……考えてもわからんことは仕方ない!)


 ──今はとにかく、綾香の好感度を上げることが先だな。


 クエストをクリアして困ることなんかないし。


『あ、そうだ。ヒロイン選択ってなんですか?』


『あ〜絶対聞いてくると思ったわ。そうね……まぁ、好感度をその時までにあげとけばそれぞれ個別のクエストが発生するのよ。それで、達成した相手の中から1人選んだ子が“ヒロイン”クエストの対象になるの』


 以前、神様から聞いた話だ。


 つまり、ヒロイン候補を増やしておけばクエストの数も増えて、報酬が増える……!


 ……まぁ好きでもないのに、口説くのはどうかなとは思うけど……


(俺だってモテたいし……いいよな?)


 多分、凛みたいにヤンデレになるタイプじゃないだろ。ないよな?


「ぐぬぬぬ……!! もう1回です! 次は勝ちます!!」


 まぁ、そんなことより問題はこの好感度マイナスな女子を陰キャ歴≒年齢の俺がどうやって口説くのかってところだけど……


『・毎日挨拶する

 ・抜き技の稽古を頼む

 ・お礼を渡す(綾香のみ)』


(好感度クエストってことは、これがあるってことだからな)


 俺はそのメッセージに口角を上げた。


(てか、それだけやってやっとプラマイ0なのかよ……)


 ただ滝川さんと仲良くなろうとしてるだけで、なんでそこまで嫌われなきゃいけないんだよ……


 恋愛的に狙ってるライバルな訳でもないのに……


(……そう言えば)


 俺は文化祭でのことを思い出した。


(滝川さんの隣にいた奴……佐野銀次さのぎんじ


 サッカー部のキャプテンで、校内随一のイケメン垂らし野郎。

 スポーツ推薦なだけあって、運動神経は万能で……成績まで1位2位を争う高スペック野郎だ。


 佐野は文化祭の時……滝川さんと一緒に、うちのクラスに来ていた。


 特に仲が良さそうには見えなかったけど……


 現状、最も油断ならない相手だ。


(あいつに勝つには……)


 まだまだ、スキルが必要だ。


「やっ!!」


「ぃでっ!」


「……!!」


 そんなことを考えていると、綾香の竹刀が俺の面を叩いた。


「や、やった!?」


(やべ、普通に油断してた)


 というか、見てなかった。


 【出鼻】の発動を忘れてたぜ。


「か、勝ちました! 私の勝ちです! 先輩!!」


「あぁいや、今……」


 俺ははしゃぐ綾香を見て、言いかけた言葉を引っ込めた。


(……まぁ、みなまで言うことないよな)


 普段のツンとした雰囲気をぶち壊すかのように喜ぶ綾香を見て、なんだかバカバカしくなってきた。


「や、なんでもない。負けたわ」


「ふんっ! これで私が1勝ですね!! 先輩!」


 面! と宣言もしてなかったし、残心もしてない。

 だけど、別にこんな喜んでるのに水を差す必要は無いだろう。


 俺が綾香を嫌ってる訳でもないし。


「あぁ……そうだ、抜き技教えて欲しいんだけど」


「はい? 抜き技?」


 俺はキョトンとする綾香に頷いた。


「ああ。この学校で抜き技が一番上手いのは綾香だろ? だから教えて欲しいんだよ」


「ふ、ふーん……ま、まぁ教えてあげないこともないですけど!」


『梨綾香 好感度:−18⤴︎︎︎(2up!)』


 あぁ……別に、好感度ミッション以外でもあがるんだな。


 そりゃそうか。

 普段はミッションなんてないけど好感度増減してるもんな。


「じゃあ頼む! お礼するからさ!」


「いいですよ……ま、まぁ私にしか出来ないですからね!」


 まぁ……これは少しずつ進めたらいいだろう。


 俺は、新たなメインクエストに目を向けた。


『メインクエスト:東区開戦』

『東区の領土を奪う 0/10』

『報酬:SSRスキル×2、SRスキル×2』



〜〜〜〜〜



「っし……行くぞ! お前ら!」


「「「おおおおお!!」」」


 東区の領土は、全部で50個弱もある。


 No.のついている幹部は40人以上いて、北区うちと違って配下のほぼ全員が全能力値C+以上を誇っている。


(まぁ、ちょっと偵察してきただけだから分からないけど……)


 少なくとも、直接【観察眼】で見た50人程の中で知能以外にDの入った奴はいなかった。


 まぁつまり……


「っしゃ! ぶっ壊すぞ!」


「うちは珀と行動すればいいわけ?」


三田みた かえで

『162cm』『60kg』

『力   A+

 俊敏  SS−

 知力  B

 耐久力 B+』


 いくらが一騎当千級とは言っても、無茶が過ぎるってことだ。


(3段階も強化したけど……いくら能力値が高かったって、大勢に囲まれては意味が無い)


 1人で10人倒せても、50人に襲いかかられては負けるのだ。


 現実の範疇にあるうちは、能力値が突出していても人数が重要だ。


「おう。とりあえず、珀と数人だけつけるから5箇所くらいぶっ潰してくれ。近いところ、弱いところからでいいから」


白井しらい はく

『181cm』『78kg』

『力   S

 俊敏  A−

 知力  C

 耐久力 S』


 だがそれも──一騎当千級が2人いれば変わる。


「おっけー! まぁ見てなよ仁、うちならあっという間に5箇所なんて終わらせれるっしょ!」


「ああ。任せろ」


 楓と珀は、数人の配下を連れて東区の配下達が固まっている拠点へと向かっていった。


Aチーム:楓、珀、太牧、赤瀬、etc……


「よし! 俺たちも行くぞ!!」


「「「おおおお!!」」」


 涼人は能力値がどうしても、楓や珀と比べると足りない。


 一騎当千級とは言えないから……その分、大量の配下をつけている。


Bチーム:涼人、田村、etc×50……


 物量作戦だ。


 それと、今回凛は防衛の為に伊達のクラブで待機してもらってる。



 現状の俺たちの実力だと、総力で攻撃しないと東区の領土を奪うことは難しい。

 俺たちが攻めてる間に反撃されたら一瞬で領土全部取られるからな。


 いちばん強い凛と50人程の配下を防衛に回して、俺たちが帰ってくるまでの時間を稼げるようにしている。


世津円よつまど りん

『才能開花!』

『155cm』『52kg』

『力   S

 俊敏  S−

 知力  A

 耐久力 A−』

『専用スキル:【狂愛ヤンデレ】』


(そして当然、最後のチームは──俺だ)


Cチーム:仁


「よし……じゃあ、攻略開始だ!」


 俺は単独で行動する。


 涼人、楓や珀にも止められたけど……


【廻天之力】

相手の人数が20人以上の場合、全能力値2段階上昇。


(新たに入手したSSRスキルもあるし、いけるはずだ)


 俺は【リカバリー】があるから、疲れたり囲まれて怪我を負っても回復して戦うことが出来る。


 ある程度の人数差はひっくり返せることが、以前の南部決戦で明らかになっているからな。


神楽かぐら じん

『175cm』『58kg』

『力   SS−

 俊敏  A+

 知力  E+

 耐久力 A−』


 待ってろ、東区……


(お前らをぶっ倒して、スキルを集めてやるからな!!)







──────────


新たなサブクエストと同時に、メインクエスト攻略に乗り出した仁。

東区の配下と戦いを始めた時、そこに現れたのは……!?


テスト終わりました! 応援してくださった方ありがとうございます!

ここからガンガン更新して行きますよ(`・ω・´)!


次回!『東区の王』


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