第64話 育成計画


【シュート】

バスケの通常シュートを使用できる


【クイックリリース】

バスケのシュートの際、高速でシュートすることが出来る


【耐久力の目覚め】

仲間一人の耐久力を1段階上げる(使い切り)


「ふむ……」


 俺は獲得したスキルを見て、満足に頷いた。


(バスケのスキル結構集まってきたな……?)


 現状、俺が一番得意なスポーツはバスケってことか。


(来年の一学期はバスケだから、最高だな)


「ってああ!!」


「仁?」


 そこで、俺はある重大なききに気がついた。


(来年滝川さんと同じクラスか隣にクラスにならないと、見せる機会ねえじゃんか!!)


 俺達は文系だから、7クラスもある。

 中々シビアな確率だ。


(なんか、仲良いこと割と知ってる人いるらしいし……一緒にしてくれたりしないかな?)


 流石にないか。


『メインクエスト:東区開戦』

『東区の領土を奪う 0/10』

『報酬:SSRスキル×2、SRスキル×2』


 んで、新しいメインクエストがこれか。


「うーん……厳しいな」


「仁先輩? 急にどうしたんですか?」


「うぉっ!?」


 その声に顔を上げると、顔と顔がくっつくかという距離に凛がいた。


「り、凛!? 近──」


「そうだ! 邪魔の入らないように移動して遊びましょ? 仁先輩っ!」


「や、そのだな……」


「凛、落ち着いて」


 凛の迫力に押されていると、楓が助け舟を出してくれた。


「……楓ちゃん」


「時間もちょっとはやいけどいい感じだし、1回帰らない? 東区の奴らがどう動いてるか気になるし」


「……それはそうだね」


 楓の言葉には、凛のみならず涼人と珀も頷いた。


 ──俺が先日、中央区を支配すると言ってからというもの、北区の仲間達は今までより一層気合を入れて沸き立っている。


 それに、既に隣接している東区、西区、中央区のうち東区を最初に攻めることを既に伝えていた。


『中央区をいきなり攻めるのは無茶がすぎる』


『それはそうだ。だから、先に他の地区を支配して仲間を増やそう』


『中央区は1番広いと言っても、他の区と大差ない。なのに、強者が他区を圧倒するほど集まってるんだ。それが安牌だろう』


『西区は荒々しいって聞くし、三田や配下達はまだ骨折が治ってない。東区を先に攻撃しよう』


『うち治りかけだけどね!』


『ああ……まぁ、治ってから最後に参戦してくれ』


『えぇ!?』


 ざっと、これが会議の内容だ。


 伊達が主催してまとめてくれているからまだしも、まともな作戦と言えるようなものは無い。


(大抵の相手は、俺が戦えば勝てるだろうけど……問題は“数”)


 俺は自宅への帰り道、考えにふける。


 能力値Bくらいの相手が全員かは分からないが、東区の配下は推定約400人。


 それに対し、北区は200人程度。

 元南部の奴らは1人も仲間になってないし、俺の仲間は100人ちょっとしかいない。


 力と俊敏の平均能力値はD+程度だ。


 ──はっきり言って、勝ち目がない。


(しっかし、どうやって集めるかなぁ……)


 クエストはそんなにバンバンでてくるものじゃない。


 しかも、その報酬スキルが能力値増加スキルだなんて確率はかなり低い。


(能力値増加スキルは出やすいけど、それでも……)


 俺がそう唸った……その時。


『育成クエストが開始しました!』


「……え?」


 育成クエスト……?


『育成クエスト:決死の狂戦』

『1.神楽仁が能力値が互角以上の相手と戦い勝利する 0/1』

『2.水霧涼人が能力値が互角以上の相手と戦い勝利する 0/1』

『3.三田楓が能力値が互角以上の相手と戦い勝利する 0/1』

『4.世津円凛が能力値が互角以上の相手と戦い勝利する 0/1』

『5.白井珀が能力値が互角以上の相手と戦い勝利する 0/1』

『各報酬:【力の覚醒】【俊敏の覚醒】【耐久力の覚醒】』


 俺の悩みに答えるかのごとく、育成クエストが発生した。


「あれ、でも育成クエストって確か……」


 俺は、クエストウィンドウを開いて進行中のクエストを確認する。


『育成クエスト:才能開花への道』

『1.神楽仁が才能開花する 0/1』

『2.水霧涼人が才能開花する 1/1』

『3.三田楓が才能開花する 0/1』

『4.世津円凛が才能開花する 1/1』

『5.白井珀が才能開花する 0/1』

『各報酬:ランダム【〇〇の解放】スキル×2』


 これがもう出てるよな?


「あ〜……育成クエストってサブクエストタイプだったのか」


 なんか、勝手な思い込みで同時には出ないものだと思っていたけど、どうやら同時にも出現するらしいな。


(そういや育成クエストについては聞き忘れてたぜ……)


 俺はかつて、クエストを創造した神に会ったことがある。


 その時に、あらゆる質問に答えてもらったのだ。


 例えば……スキルのランクについてとか。


『そういや神様。LRスキルってもう現実超越しちゃってますけど、それより上のランクってあるんですか?』


『あるわよ』


『え!? どんなランクなんですか!?』


『それは、自分で確かめて見て?』


『え?』


(一応、確認のために前試したけど……)


『LRスキル【テレポート】と【ヴァンパイア】を合成することは出来ません!』


 【スキルファクトリー】では、まだ合成が出来ないらしい。

 ランクが【スキルファクトリー】より高いから無理なのかとも思ったが、神様がそれは否定してくれてたので恐らく条件があるのだろう。


「育成クエストのことも聞いときゃ良かったな……」


 俺は育成クエストを見返して、気になることを発見する。


「ん?」


 あれ? よく見れば……


「力の……覚醒?」


 覚醒って……なんだ?


 今までの能力値増加スキルは、【力の目覚め】とか、【力の解放】だった。


 目覚めがRで1段階アップ、解放がSRで2段階アップのスキル。


 じゃあ覚醒は……


(もしかして、SSRの消費スキルか!?)


 恐らく、それなら能力値が3段階上昇だろう。


「これは……是非欲しいな」


(しっかし、それならどうやってクエストをクリアするかだな……)


神楽かぐら じん

『175cm』『58kg』

『力   S−

 俊敏  B+

 知力  E+

 耐久力 B−』


 俺は能力値も上がってきて、敵の上位幹部でもない限りこの能力値の相手は居ない。


 凛に至ってはスキルが確定発動するから、それこそ東区ボスの月城とかじゃないと無理なんじゃないか?


(しかも、勝つのが条件……)


 能力値が同じくらいの相手に勝つのが条件とか、要はギリギリの戦いをしなきゃいけない。


 俺のクエストのために、仲間に突然大怪我のリスクもある戦いをしろなんて言えないし……


「何か丁度いい理由でもあればいいけどな……」


 能力値の調整でも出来れば……あっ!?


「……やべぇ」


 俺は、天啓が舞い降りたかの如き閃きを感じた。


【思考加速】

考えるスピードが倍になる。


「これ……出来んじゃね?」



〜〜〜〜〜



「皆、集まったか?」


 俺の前には、北区の幹部達……それと、能力値の高い元北部幹部だったりする配下たちが集まっていた。


「仁、今度はどったの? 急にこんな集めて……」


「……ボスの話を聞けば分かる」


 楓の疑問に、伊達が端的に答えた。


「ちぇっ、相変わらずそっけないの」


「……北区を統一して、やっと余裕が出来た! お前ら、今序列はどうなってる!?」


 俺は皆に向かって、壇上でそう言った。


「「「……!!」」」


「今から、見込みある強い奴らで序列を決めることにした! 体調悪い奴とかは延期するから言っとけよ!」


「「「……おおおおおお!!」」」


 俺の言葉に、配下たちが沸き立った。


(序列戦なら、仲間内で戦える……!)


 それに、引き分けのように持っていった後、今回は正直そっちの勝ちかな〜と言っておけば、もしかすると達成になるかもしれない。


「……仁、久しぶりに勝負さね!」


「ああ……勝負だ!」


 俺は楓達と共に、外へ向かった。






──────────


新たな育成クエストによって育成計画を立てた仁。

仁の作戦は上手くいくのか……!?


次回!『ツンデレな後輩』


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