2章 東区制圧編
第63話 新たな火種
キーンコーンカーンコーン!
「気をつけ、礼!」
「「「ありがとうございました」」」
終礼の鐘と共に、クラス中が騒がしくなる。
「
「ん? おう!」
親友の
それに、俺は答えて席を立った。
『メインクエストが開始しました!』
頭に響いたその声に、俺はそっと目を横に向ける。
『メインクエスト:東区との接触』
『北区にやってきた東区の配下を倒せ 0/2』
『報酬:Rスキル×3』
クエスト。
ある日突然俺の目の前に現れた、特別な力だ。
神が俺に与えた力で、俺はクエストを通じてスキルを獲得することが出来る。
「あ……」
「……!」
「あっ……この人……」
俺は教室から出たところで、1人の女の子と目が合った。
「……」
「ん……」
──
俺が中高一貫校のここで、中学三年生の時からずっと片思いしているクール系女子だ。
軽く会釈してくれた滝川さんに、俺も会釈を返した。
「瑞樹! 帰るよ〜!」
「あ……今行く」
滝川さんは友達に呼ばれたのか、廊下の人混みの中に飛び込んで行った。
「仁……いつの間にそんな仲良くなったんだ?」
「まぁな」
『滝川瑞樹 好感度:77』
この好感度システムも、クエストの力の一部だ。
一度振られたこともあるが、ここまで辿り着けたのはクエストのおかげだ。
(北区にやってきた東区の配下を倒せ……ってことは、南部に行けばいいのか?)
クエストはなんとかしてでも俺を平和な日常から喧嘩へと引きずり込もうとしてくる。
それでも俺がクエストを続けるのは、いつか滝川さんに釣り合うような人間になるためだ。
「涼人、今日は部活も休みだし、南部に遊びに行くぞ!」
「おっ! いいな!」
今日も俺は、クエストを達成しに行く。
〜〜〜〜〜
「うわ!! また負けた!!」
「仁、上手すぎじゃないか?」
「まぁ、これは昔から得意だからな!」
俺は、南部のゲームセンターに来ていた。
「俺はゲーム昔ちょっとやったくらいだからなぁ……こりゃむずいぞ?」
そう言ったのは
うちのNo.5で、柔道を使う正義感の強い男だ。
以前敵味方全員から目を背けられた所を助ける形で仲間にしたからか、1年上の3年生なのに凄く従順というか、犬みたいな印象を受ける。
体格はどちらかと言えば熊なんだがな……
「でも、なんで今日は急にうちら誘ったわけ? そりゃ全然歓迎なんだけどさ! 珍しいっしょ?」
「仁先輩らしくないですよね?」
そして、俺と涼人、珀の後ろで見物していた女子二人が疑問を呈した。
独特な方言を使っているのが
身長が高くかなりの美人で、テコンドーを使う不良だなんて誰も思わないだろう。
今日はうちのNo.3と言うこともあって連れてきたが、以前南部に折られた右腕を今療養中だ。
で、もう一人の美少女が
カリ・アーニス? とかいう何か海外の武器術を使うんだけど、俺はまだよく分かってない。
「仁先輩? 次は私とやりましょ?」
「え、お、おう」
……ちょっとヤンデレ気質を感じるNo.4だ。
「でも、しっかりみんな揃ったね〜」
「ああ。夏休みの旅行以来か?」
俺はクエストをするため、南部にはゲームセンターやらパチンコやらが多いから遊ぶにはもってこいだろ? と誘ったのだ。
(しっかし……いつ現れるんだ? 東区からの刺客って)
東区。
『東区はボス達のいるここ北区の10倍以上の土地を持つ、正真正銘の大物だ』
うちのNo.6、参謀を務める超天才、
『ボスは
どんなバケモンだよ。なんで不良なんかやってんだ。
だけど、西区も南区も似た感じらしい。
この県、全国中の不良が集まってるからな。
(全国一なら……一体、どんな能力値なんだろう?)
『
『175cm』『58kg』
『力 S−
俊敏 B+
知力 E+
耐久力 B−』
俺は、自分のステータスを見て考えた。
「……仁、あれって」
「ん……?」
そんな中、楓が俺に耳打ちする。
「わっ! やべ、ミスった! 負けちったじゃん、楓」
「や、今それどころじゃなくって……ほら、あれ」
いきなり耳打ちされてびっくりした勢いで対戦に負けてしまったが、楓の真剣な声に俺は指された場所を見る。
(あ……)
「あれ、東区のやつらじゃない?」
そこには、2人の男子組がいた。
『
『174cm』『66kg』
『力 B−
俊敏 B
知力 D+
耐久力 C+』
『
『168cm』『69kg』
『力 B+
俊敏 C
知力 B−
耐久力 B』
(へぇ……流石東区)
ただの雑兵なのに中々のステータスだ。
てか、1人ハーフ居ね?
『
『176cm』『70kg』
『力 B
俊敏 C+
知力 C+
耐久力 B−』
参考までに、これが清水のステータスだった。
清水は今は俺が統一した北区のボスを狙っていた中の1人で、楓や珀と元々同じ立場にいたようなやつだ。
北区の中では屈指の実力者と言える。
まぁ、清水はずっと運動してなくて能力値が下がってたっぽいが……それでも、こうして見れば実力差が歴然。
人数も凄まじいだろうに、俺たち北区が東区に勝てる未来が見えない。
(今は北区はちっさいし、いちいち征服する程じゃないと思われてるけど……東区を制圧したら西区なんかはちょっかい出してくるだろうな)
確かに、俺ならこいつら程度は楽勝だ。
でも、全面戦争となったら違う。
それを考えると、仲間の能力値も上げてかないとな……
「ねぇ仁、あいつらこっち見てるけどどうする?」
「こっちって言うか、楓と凛を見てるんだと思うけど……」
「ねぇ、お姉さん、今時間大丈夫ー?」
俺がそう言っていると、早速2人のうち1人……ハーフのジハン? が話しかけてきた。
「や、見てわかるっしょ? 今忙しいんだけど」
「えー? そんな陰キャほっといて俺たちと遊ぼうぜ〜?」
「ぷっ!」
ジハンの言葉に、楓は吹き出した。
「言われてるよ、仁。あはははは!!」
「おい笑うなよ……」
「あぁん?」
俺はため息をついて立ち上がる。
「東区の落ちこぼれだろ?」
「あぁっ!? んだとてめぇ!?」
ジハンはそう言って俺を突き飛ばす。
「てっ」
「え、仁?」
「くそ陰キャが! 調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
「おいおい、ビビって漏らしちまうぞ? そのくらいにしとけって」
尻もちを着いた俺に、ジハンと鴨野が嘲りの目を向ける。
(よし、これで準備は完了と)
ここはゲームセンターだ。
一般客の目や店員さんのオロオロしている姿が俺の視界に映る。
(これなら、十分だろう)
「これで、正当防衛だな?」
「あんた……性格悪っ」
楓は俺の魂胆に気づいたか、ジト目で見てくるが……
や、ちょっとそれは言い過ぎじゃね?
普通に真昼間から人殴る訳にはいかないだろ。それも人前で理由もなく。
「はぁ? 何言って……」
『三日月蹴りを使用します』
まだ俺の意図を理解出来ていないジハンに、俺はスキルを使用した。
「……グハッ!?」
『
『175cm』『58kg』
『力 S−
俊敏 B+
知力 E+
耐久力 B−』
『
『174cm』『66kg』
『力 B−
俊敏 B
知力 D+
耐久力 C+』
今までのクエストで、俺の能力値は上がっている。
(──この程度の相手、敵じゃない)
「ジハン!? てめっ……」
『フックを使用します』
鴨野が一撃で倒れたジハンを見て激昂し、俺に向き直った瞬間……
「ゲボァッ!?」
「!!」
鴨野が凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。
『フックがキャンセルされました!』
「仁先輩に向かってその態度……そんなに死にたいの?」
「……凛」
そう言って鉄パイプを担いだのは、凛だった。
『
『才能開花!』
『155cm』『52kg』
『力 SS(3up!)
俊敏 SS−(3up!)
知力 A
耐久力 S−(3up!)』
『専用スキル:【
『【
「仁先っ輩! かっこよかったですかぁ〜?」
「はは……」
相変わらず、イカれた能力値だ。
Sランクの才能を才能開花させただけはあるな。
『メインクエストをクリアしました!』
『メインクエスト:東区との接触』
『北区にやってきた東区の配下を倒せ 2/2』
『Rスキル【シュート】【クイックリリース】【耐久力の目覚め】を獲得しました!』
さて……始めるか。
「東部との戦争を……!」
『メインクエストが開始しました!』
新たな
──────────
ご愛読ありがとうございます!
本日より二章『東区制圧編』開始です!
東区との決戦、来たる更なる才能開花、そして運命のクリスマス……!?
仁は無事リア充になれるのか……!?
次回!『育成計画』
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